アキバタマビ21にて、特別展「BIOART.JP ー バイオメディア・アート展」が2月23日より開催される。

20世紀終盤からの遺伝子工学や分子生物学の進歩と普及によって、生命に関する今日的なテクノロジを援用した芸術表現が盛んになった。それらは一般にバイオ(ロジカル/テクノロジ)・アートと呼ばれ、前衛的なファイン・アートや現代美術のある種の延長として、あるいはアート&サイエンス、アート&テクノロジーの一形態として、メディア・アートとも密接な関係を持ちながら発展してきた。

生命を構成する細胞は、タンパク質を始めとする物質(アトム)でできているにもかかわらず、そこには遺伝子(DNA)というデジタル情報が含まれ、それが分裂、複製、交換することでリミックス、ミューテーションしていく。物質としてのハードウェアや情報というソフトウェアから、細胞や生物というウェットウェアへ、という大きなメディアの流れの中で、バイオメディアにも近年キッチン・ バイオと呼ばれるDIY化の波も訪れ始めた。
その状況は、急速にパーソナル化が進むことで技術と芸術が交錯したリベラルな文化を生み出した、1970~80年代のマイクロ・コンピュータやコンピュータアートの誕生時に、自然と重なり合ってくる。

こうした時代を背景に2010年、多摩美術大学の久保田晃弘と、早稲田大学の岩崎秀雄、高橋透らが提案する科研費基盤研究(C)『ポストゲノム時代のバイオメディア・アートの調査研究』が採択された。ヒトのゲノム情報が解読されたポストゲノム時代に、遺伝子組み換えや組織培養などに代表されるサイエンスやテクノロジーとしてのバイオのみならず、食や医療、社会や生活やの中に浸透し始めたメディアとしての生物や生命も広く取り上げるために、研究テーマを「バイオメディア」アートと命名。

2010年度には、バイオアートのポータルサイトであるBIOART.JPの立ち上げ、オーストラリアのパースにあるバイオアートのCOEである SymbioticA の見学や共同研究を行い、続く2011年度には、バイオアートの父、ジョー・デイヴィス氏の日本招聘とワークショップやレクチャーの開催などを行い、バイオメディア・アートが持つ可能性を探求してきた。

本展覧会は、3年間の期限の科研費研究の締め括りとして開催されるもの。多摩美術大学および早稲田大学と関連する若い作家を招き、身近な素材を出発点にしながら、今日のポスト・ゲノム時代における身体観や人間観の変容、生命とその時間に対する認識の変革、さらにはバイオメディアの活用と、その社会・生活への浸透に対する芸術の役割や可能性を提示することを目的としている。

秋山慶太〈Acoustic Botany〉


岩崎秀雄+オロン・カッツ〈”Biogenic Timestamp” Prototype2.0〉


石橋友也〈金魚解放運動〉


Information

アキバタマビ21特別展「BIOART.JP ー バイオメディア・アート展」
http://www.akibatamabi21.com/130223.htm

2013年2月23日(土)~3月24日(日)
12:00~19:00(金・土は20:00まで)火曜休

[出品作家]
秋山慶太、アリ・アルムタワ、石橋友也、伊藤達哉、岩崎秀雄+オロン・カッツ、齋藤帆奈、多摩美畑部、ホアン・カストロ、三原聡一郎、山本渉、高橋士郎(特別参加)

【イベント】
●オープニング・シンポジウム&レセプション「バイオメディアと芸術」
2月23日(土) 17:00~19:00
岩崎秀雄(早稲田大学)、高橋透(早稲田大学)、久保田晃弘(多摩美術大学)

●バイオアート・ワークショップ
3月2日(土)14:00~17:00
講師:BCL(Georg Tremmel+福原志保) http://bcl.biopresence.com