ちょっと前に話題になったサイトで、90年代のGUI表現で現在のウェブサービスを再現したOnce Uponというサイトがあって、アイデアもデザインもすごく洒落ていてすばらしいのだけど、個人的に一番面白いなあと思ったのは、実はこのサイト、サーバ側で転送量をわざと絞って、当時のファイル転送スピード(8kb/s)を忠実に再現していたことで・・・そこで考えたことを少し書こうと思う。



僕がインターネットで遊び始めた頃は、ちょうどNTTがテレホーダイっていうダイアルアップの通話料が深夜帯だけ定額になるサービスを始めた頃で・・・その頃インターネットやってた人たちはみんなテレホーダイタイムにネットにつなぐもんだから夜11時になるとプロバイダにダイアルアップしにくくなるっていうような事が当たり前にあったんですよね。でも、そのつながりにくさから「ほかの人もいまインターネットにつなごうとしてるんだな」っていう事がわわかって、今みたいな「オンラインの人のアイコンがずらっと並ぶ」みたいな見た目の表現ではない形で、インターネットの「にぎわい」を感じることができる面白い現象だった気がする。(あと、当時のモデムのデータ通信速度は28.8kbpsとかだったから、もう回線からして遅いこともあって、画像ひとつ読むのにすごく時間がかかった。サイト上のあらゆる画像が断片的に読み込まれていく感じが、ある意味トランジション効果みたいになっててそれはそれで格好よかった。)

で、当時から、読み込みが遅いサイトを指して「重い」っていう言葉があって、そもそも形の無いデジタルデータなのに、重いとか軽いっていう感覚があるのってすごく不思議だなと思ってた。ゲームで打っても打ってもなかなか倒せないキャラを「固い」っていう感覚も同じ。

形の無いデジタルデータに手触りや重力を感じるのってすごく面白い現象だと思う。「固い」とか「重い」って映像だとあんまり感じたことなくて、インタラクティブメディアならではの感覚なんだと思う。こういう感覚をいかにユーザに想起させるようにあらゆるものを設計していくかっていうところがインタラクティブなモノを演出する上でかなり重要な要素なんだなーとOnce Uponを見て思ったのでした。

※なんかダラダラ書いちゃったけど、要するに、ものすごく重量感のある商品があったとして、その重厚さとか手触りを表現するのにあえてじわじわとローディングに時間がかかっているかのように表現するのもアリだし、ざらざらしたマットな質感が売りだったらjpgじゃなくてgifで見せたいとか、「早い!」っていう商品特性を自慢したいんだったらサイト自体を超軽量に超サクサクうごくようにつくるってのも大切な「演出」ですよね、という感じの話でした。