先週末11/14~16の3日間、MIRAというオーディオビジュアルフェスティバルに行ってきたので、どんな様子だったか簡単に紹介します。

http://www.mirafestival.com/

MIRA – Music & Visual Arts

MIRAはスペイン、バルセロナでこの時期に開催される、オーディオビジュアルをテーマにしたフェスティバル。バルセロナといえば6月に毎年開催される、Sónarが世界的に有名ですが、バルセロナでこの手のフェスティバルとなると、「SónarかMIRAか」というぐらい、Sónarに次いで認知されてるとのこと。(といっても今年で3年目ぐらい。)会場はFABRA I COATSという、アーティストのスタジオやギャラリー、イベントスペースを兼ね備えた巨大なアート施設。


Baths x Liam Roberts

今年の目玉はPanda Bear (US), μ-ziq (UK), The Field (DE), The Haxan Cloak (UK), Baths (US) などなど、豪華ラインナップ。
映像を担当するVJたちは正直なところ、日本ではあまり名前が知られてないようなアーティストで、地元スペイン出身の映像作家が多い印象だったが、日本では絶対見ないようなテイストの映像もいくつかあり、どれも見応えがあった。


Panda Bear x Refraction Labs
Refraction LabsのあからさまにWindowsのディスクトップイメージを連想させる映像。

MIRA – Installation

メインフロアの向かいの別棟ではオーディオビジュアルをテーマにしたインスタレーション作品を展開。
早速、出展者が当日のインスタレーション展示の様子をvimeoにアップしていたのでどうぞ。

MIRA festival installations area from Slidemedia Lab. on Vimeo.

しかし驚いたことに、実に全体の7割ほどがプロジェクションマッピングの手法を用いた作品だった。ヨーロッパのこういった界隈では、音と映像を用いたインスタレーション=プロジェクションマッピングというのがデファクトスタンダートになっているように思えた。はたまた、このフェスティバルのディレクターの趣向だろうか。

ILUMINA from LUIS SANZ on Vimeo.

もちろん、どのプロジェクションマッピング作品もスタンダードなものではなく、遊べるインタラクションものだったり、それぞれどれも一工夫してあったのだけど、その中で個人的に一番目を引いたのがLUIS SANZによるILUMINAという作品。鉛筆で描かれた3Dグラフィティ調のA4サイズぐらいの小さいドローイングが、プロジェクション映像によってリアルに浮かび上がって見えてくる。

2日目はあいにくの雨だったにも関わらず、かなりの人出で盛り上がりを見せていた。



MIRA Lab – Workshop, Sreening, Talk



そして今年から夜のオーディオビジュアルパフォーマンス+インスタレーション展示に加えて、新たに”MIRA Lab”というワークショップ、スクリーニング、カンファレンスを行う昼の部を新設。会場はバルセロナ現代美術館(MACBA)のとなりのカルチャーセンターCCCB

http://www.mirafestival.com/lab-concept-en?lang=en

3日間連続の開催で、Space – Projection, Creative Programming, Interaction と1日ごとにそれぞれテーマが設定され、全体のプログラムが進行していく。
朝10時から14時までがワークショップタイムで、4時間1回切りで終わるワークショップが1日同時に3つ開かれ、参加者は自分の興味があるトピックのものに参加。そして14時以降はその日のテーマに合わせたプレゼンテーション、パネルディスカッションと続く。

一日目のテーマはSpace – Projectionで、朝若干出遅れ気味で到着すると、全ワークショップスペイン語ではじめられており参加できず。。Milluminという高機能なマッピングソフトのワークショップでは、実際にスチレンボードを用いて簡単な立体を作り、参加者は実践的なプロジェクションマッピングを体験していた。

2日目のテーマはCreative Programming。個人的にWebGLに興味があったので、Generative and reactive geometry with JavaScript and WebGLという講座を選択。入門とはいえ、基本的なウェブの知識がないと全くついていけない内容で、且つ、時間が限られてるので大変ざっくりとした解説で、すごいスピードで進行していったのだが、オーディオとのインタラクションの基本的な部分や、シェーダーまで、WebGLを用いたグラフィカルな表現のおいしい部分は網羅した内容だった。

ちなみに当日のサンプルコードは以下からダウンロードできるので興味のある方はどうぞ。
https://github.com/spite/mira-lab-2013

3日目のテーマはインタラクション。openFramworksの開発者の一人であるArturo Castro氏によるoF x Kinect講座を選択。こちらの講座はサンプルコードの配布はないものの、oFの新規プロジェクトを立ち上げるとこから始まり、一からコードを書いてくスタイルで、コードの各行ごとのアルゴリズムの解説や、重要なメソッドの説明など丁寧に進められていた印象。


Santi Vilanova氏による、ベーシックなインタラクティブ作品の構造を示すダイアグラム

午後4時以降は連日テーマに沿ったトークが展開されていたのだが、一番印象に残ったのは最終日の最後、イベントのトリを飾るパネルディスカッション。New interfaces for human-computer というテーマで、Alex Posada氏やSanti Vilanova氏など、地元バルセロナ発で世界的に活躍しているメディアアーティスト/インタラクションデザイナーが登壇しており、Santi氏がArs electronicaのインタラクティブ部門でHonorary Mentionsを受賞した際に、作品にはインタラクションがないのになぜこの部門で賞が獲れたのかという疑問を自身の考えで分析し、そこから展開される議論が興味深かった。

13時からはメガデモ作品やArduinoのドキュメンタリーの上映もあり、3日間本当に盛りだくさんで、全体を通してみるとかなりのボリュームであった。ただ、今年からはじめた試みであったためか、集客のほうはいまいち芳しくない感じで、内容が少しある方向に偏り過ぎている感は否めなかった。
来年以降も継続的に続き、より大きなフェスティバルに進化していくことに期待したい。