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変わり続ける今の「本」について考えるブックフェア
TRANS BOOKS レポート

December 25, 2017(Mon)|

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2017年11月4日(土)、5日(日)の二日間、神保町にあるコワーキングスペース TAM COWORKING TOKYOにてブックフェア「TRANS BOOKS」が開催された。

ブックフェアと言っても、ここでは、一般の書店では売っていないような本が並ぶ。
インスタレーション形式の本や、データで売られている本、メールマガジン、書き込み満載のクセの強い古本、作家独自の解釈によるとんがった内容の本などなど。メディアを問わず本という形式を取っていれば、どんな書籍でも販売できるというブックフェアだ。

という事で、第1回目の今回はどんな様子だったのか、写真とともに振り返りたい。
会場で配布されたハンドアウトはこちらにアップされているので、当日行けなかった方は是非チェックして欲しい。

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会場の様子

総勢24組のアーティスト、デザイナー、編集者など様々な肩書きの作り手たちが参加し、それぞれの解釈で制作された「本」が並んだ。

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会場は開店から、絶えずお客さんが出入りし、終始賑わいを見せていた。1日目から完売になってしまった商品も。

という事で、ここからは、今回のイベントの主旨に対して面白い試みをしていると感じた作品をいくつか紹介する。

出展作品


飯沢未央・畑ユリエ 『somebody’s room』

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様々な年代、職業の人々から提供されたiPhoneのホーム画面のスクリーンショットを集めた本。
いつも自分のホーム画面しか見ていないので、こんなにも人によって違うのかと驚かされる。アイコンの色で分けていたり、膨大な数のメールがメールアプリに溜まっている人がいたり、自分が使ったことのないアプリを発見したり、これだけたくさんの量があると、様々な発見がある。
「日々変化し消えてしまうその存在を、本という静的な形ですくいとり、保存しました。」
と作品説明にあるように、デバイスやアプリの変化が早い時代だからこそ、意味のある作品であるように思う。

現在、こちらにてサイトで販売中。

田中良治『Everything But The Internet』

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メールマガジンと同時販売されていたTシャツ
画像出典元

田中良治さん(セミトランスペアレント・デザイン)による基本、対面販売のメールマガジン。メールは月に1回のペースで発行され、内容は「SNSに流せば良いような個人的に素晴らしいと思える発見や出会い」が綴られている。基本的には、こちらのサイトに上がっている図版に関するテキストが送られてくる。
SNSでなんでも発信できる時代に、敢えて対面で、しかもメールマガジンを売るという粋な作品だ。

ちなみに、サイトに上がっているTシャツはメールマガジンと一緒に購入できたもので、メールマガジンによると、「Tシャツを作りたくてメールマガジンを立ち上げたところもあります。」とのことらしい。


浦川 通 『「意識の辞書」プロジェクト』

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「意識の辞書」は、ある特定の集団や個人が持つ” 意識の流れ”が表された辞書。
通常の辞書は、言葉が50音順に並ぶが、この辞書はニューラルネットワークを使った機械学習により「その人の意識の中で意味の近い順に」並んでいる。例えば、夏目漱石編の場合、「我輩」「恐縮」「先日」「妻君」「令嬢」「爺さん」…といった感じ。
辞書を眺めていると、夏目漱石の脳内データベースを覗いているような気がしてくる。

会場では、書籍版の「夏目漱石編」、電子書籍版(夏目漱石編・宮沢賢治編)の他にも、来場者の好きな文章でオリジ ナルの「意識の辞書」を生成するサービスも販売していた。
プロジェクトに関する詳細はこちら

余白書店 『クセのついた本「くせほん」』

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普通、古本は書き込みや汚れなどがあると、その価値が下がってしまうが、余白書店は、その逆で、「クセのある本」をパーソナライズされた一点ものとしての価値のある本として捉え、査定して販売している。 会場では、付箋が大量に貼られた本や、破れた部分がテープで止められたボロボロかに見える本など、かなり味わい深い本の数々が販売されていた。

余白書店の商品はamazonでも購入可能なのでぜひチェックしてみてほしい。

BCCKS 『QR BCCKS』

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電子書籍作成・販売サービス「BCCKS」で出版された書籍約5000冊の「QRコード」をポスターサイズの紙に並べて出品した様子。
ブックフェアでこんなに大量の本を売った人が未だかつていただろうか…!?データだからこそできる売り方。

コ本や × 小宮花店 『環七舟』

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9月に上演された「環七舟」の再演をVRという形で再現し、演劇を体験できる作品。

片道分の上演を追体験するとシナリオを購入できる。王子駅近くにある「コ本や」と野方駅が最寄りの「小宮花店」は環状七号線でつながっている。その間をバスに乗りながら作家それぞれの声に導かれ、環状七号線の空間と時間のレイヤーを旅する体験ができるという上演内容になっている。

会場では本公演でチケットとして、また鑑賞者が音を聞くための端末として配布していた牡蠣の貝殻と種も販売。こちらは再演を体験しなくても購入できる。VRから貝殻、種と幅広くメディアを活用し、新しい読書の体験を提供してくれた作品であった。

谷口暁彦・谷口千絵 『nothing happens』

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2017年に発表された、谷口暁彦さんによる「何も起きない」という映像インスタレーション作品を、ポスター、写真集、アプリケーションへと形を変えて展開させた作品。

作品内では、あらかじめプログラムされたアルゴリズムによって、今この時をシミュレーションされた結果として生まれた風景が広がっている。
この風景は、私たちの世界と並行して存在していて、キャラクターたちは朝目覚めて、夜は休むという二度とは繰り返されが、しかしプログラムに書かれた可能性以外のことは何も起きない日常を過ごしている。

インスタレーションとはまた違う角度から「何も起きない」この風景を眺める事ができるセットとして販売されていた。

荒牧 悠 『SEAL BOOK』

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タイトル通り、この作品は、紙にシールを張って楽しむ本だ。

作者は、本を「あるテーマによって束ねられているもの」で、「読者や鑑賞者の解釈の上に成り立つ」ものと解釈し、その結果、工夫を加えることができ、やりとりのできる不完全な本として、このシールブック制作に思い至った。

線が一本あるだけで、壁と床か、もしくは地平線のようにも見える。穴は影か、もしかしたら落とし穴かもしれない。マイクがあると、たちまちそこがステージっぽく見えてくる。人の配置によっても意味合いが色々変わってくる。

単純な要素で成り立っているが、だからこそ想像力を掻き立て、遊びがいのある一品になっている。

『SEAL BOOK』はこちらから販売可能

トークイベント
「未来の書物の歴史 New Series–– モダンタイポグラフィの起源について」

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1日目に行われた、古賀稔章さん(タイポグラフィ研究者)と永原康史さん(グラフィックデザイナー)によるトークイベント「未来の書物の歴史 New Series」。

本イベントは古賀さんによる DOTPLACE での連載 「未来の書物の歴史」の番外編という位置付けで行われた。
まずは、古賀さんより、17世紀後半につくられた世界初の印刷マニュアル「メカニックエクササイズ」を著したジョウゼフ・モクソンをキーパーソンに、本作りの歴史に関するレクチャーが行われた。

その後、ゲストの永原さんとの対談形式で、タイポグラフィの歴史と印刷技術の関係性などについて語られた。

いま私たちにとって 「AI」 や「深層学習」がそうであるように、モクソンの生きていた当時、「本を作る方法」は一般には知られていない、いわば秘密の魔術的な技術であった。

しかし考えてみれば、技術には共有可能な部分と、共有不可能な (作家性のような) 部分が存在する。モクソンはこの共有可能な部分を、積極的にオープンにし世に広めようとした人物で、当時にしてみれば革新的な人物であったといえる。

イベントでは「本」と「技術」の関係について、ドラマチックなトークが展開された。


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という事で、本の概念やありようが「今」に即してトランスした本が並んだ、ユニークなブックフェア TRANS BOOKS。
時代とともに変化するテクノロジーや、情報伝達の方法をどう解釈して「本」にするか、そんな作家独自の視点が反映された作品が集結した、今までにないブックフェアだったように思う。
本ってそもそもどんなメディアだったっけ?と本の定義から考えたくなるような体験ができた。

運営チームは、第二回の開催も考えているようなので、今後の動向にもぜひご注目頂きたい。
ちなみに、現在、今回のブックフェアに出展された作品をまとめたアーカイブページの制作や、第一回目のTRANS BOOKSを振り返るべく運営メンバーでの座談会とその様子をまとめた記事ページの公開も企画されているので、今後も乞うご期待!!!

会場風景写真:市岡 祐次郎
作品写真:土田 祐介


Information

TRANS BOOKS
http://transbooks.center/


日程:2017年11月4日(土)、5日(日)
オープン:11:00〜18:30
イベント:19:00〜
会場:TAM COWORKING TOKYO (神保町)
https://www.tam-tam.co.jp/coworking/
住所:〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-28-9 三東ビル1F
最寄駅
・都営新宿線「小川町」駅(徒歩3分)
・丸ノ内線「淡路町」駅(徒歩3分)
・JR中央・総武線「御茶ノ水」駅(徒歩5分)
・都営三田線・半蔵門線「神保町」駅(徒歩9分)
・千代田線「新御茶ノ水」駅(徒歩3分)

◎出展作家一覧(敬称略)
荒牧悠(アーティスト)
飯沢未央(アーティスト)
浦川通(アーティスト)
大林寛(ÉKRITS編集長 / ディレクター)
古賀稔章(編集者・タイポグラフィ研究)
コ本や(書店) ✕ 小宮花店(花屋)
齋藤あきこ(ライター)
ARTISTS’ BOOK EXHIBITION SENDAI⇄TOKYO(アーティストブックサテライト展示)
菅俊一(研究者 / 映像作家 / 多摩美術大学専任講師)
鈴木哲生(グラフィックデザイナー)
study tables(tadahi・関真奈美)(自由研究制作ユニット)
田中良治(ウェブデザイナー)
谷口暁彦・谷口千絵(アーティスト)
出宰漱太郎(字書き)
てらおか現象(マンガ家)
永原康史(グラフィックデザイナー)
西岡真知子(コールセンター勤務)
畑ユリエ(グラフィックデザイナー)
Hyunho Choi(グラフィックデザイナー)
BCCKS(電子出版プラットフォーム)
松本弦人(グラフィックデザイナー)
室谷かおり(グラフィックデザイナー)
山本悠(イラストレーター)
やんツー(アーティスト)
余白書店(書店)
ワーグナー・クルー

主催:TRANS BOOKS 運営委員会 (飯沢未央 / 畑 ユリエ / 萩原俊矢 / 齋藤あきこ)

協力:株式会社TAM、CBCNET
twitter : @transbookstrans
Facebook:https://www.facebook.com/transbookstrans


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