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あの音楽は、誰がどんな風に作ったのか? 日本のゲーム音楽の歴史と、その魅力を探訪するドキュメンタリー・シリーズ『ディギン・イン・ザ・カーツ』

October 3, 2014(Fri)| Article by Akiko Saito

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エピソード1:テレビゲームミュージックの到来

ヒップホップやテクノなどのストリート・ミュージックを日本人がやるのは「猿真似」だと揶揄されることがある。日本にはホンモノのシーンがなかった、外国文化の輸入に過ぎないと。だがその認識は大間違いだということを、この映画は教えてくれる。

日本から生まれ、世界に多大な影響を与えたホンモノのストリート・ミュージック。それはテレビゲーム音楽だ。80年代に日本が生んだ家庭用テレビゲーム機は世界に輸出されて爆発的な人気となり、以降のユース・カルチャーにすさまじい影響力を与えた。なかでもゲーム中で使われている、日本のコンポーザーたちによるオリジナル音楽が、海外のミュージシャンに多大な影響を与えているのである。

この知られざる事実を描いたのが、ドキュメンタリー映画「ディギン・イン・ザ・カーツ」。レッドブルが主催する「レッドブル・ミュージック・アカデミー」による、日本のテレビゲーム音楽の歴史を探る作品だ。意外にも、日本のゲーム音楽と現代の音楽シーンを対比的に捉えたドキュメンタリーが作られるのは世界初。

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ニック・デュワイヤー(プロデューサー)

本作のプロデューサーはニュージーランド出身のニック・デュワイヤー。もともと彼が初めて日本のゲームに触れたのは10歳の頃。兄が日本で買ってきたスーパーファミコンに夢中になり、ゲームと日本語を勉強するようになった。本企画は昨年、監督が個人的に日本を観光で訪れていた時に、ゲーム音楽を聴きながら渋谷の街を眺めているときに思いついたもの。レッドブル・ミュージック・アカデミーに相談し、「世界初の企画」ということで支援を得、このたびの完成にこぎつけた。

映画に登場するのは二種類の人々だ。いっぽうは、80年代から90年代に伝説のゲーム・ミュージックを生み出した音楽家。もういっぽうは、ゲーム・ミュージックに多大な影響を受けた、現在の音楽シーンを代表する海外の気鋭音楽家たち。

前者には、任天堂で「メトロイド」や「テトリス」などのクラシックを生み出した田中宏和や、「ファイナルファンタジー」シリーズの植松伸夫、ナムコで「ドルアーガの塔」を手がけた小沢純子、カプコンで「ストリートファイター」の世界各国出身のキャラクターにワールド・ミュージックのテーマを作った下村陽子、8ビットサウンドを代表する作品「ギミック!」を手がけた影山雅司、SEGAの「アウトラン」を手がけるHiro、「アクトレイザー」の古代祐三ら。みなテレビゲーム・ミュージックを手がけたパイオニアたち。その影響の大きさに比べ、これまで裏方としてスポットライトを浴びなかった人も多い。

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植松伸夫

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影山雅司

いままで語られることが少なかったゲーム音楽制作の裏側。当時は現在ほど家庭用ゲーム機がハイテクでなかった時代だ。音楽を作るにも、厳しいテクノロジーの制約があった。楽器で演奏した曲を採譜して、プログラムできるように音を数字に置き換えて打ち込んでいく。また、出せる音色もファミリーコンピューターは3音、スーパーファミコンでも8音というミニマルぶり。だが、そんな制約のなかで、彼らは知恵を絞り、妥協というものをしなかった。ゴシック・ロックやファンク、ラテン・ジャズ、さらにはTR808やTR909をサンプリングしてデトロイト・テクノなど先端の音楽を取り入れ、豊かな音楽世界を創りあげていった。

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フライング・ロータス

そんな日本のゲーム音楽に大きく影響を受けたと語る豪華アーティストたち。アメリカのフライング・ロータスやサンダー・キャット、ジャスト・ブレイズ、J Rocc、ファティマ・アル・カディリ、アナマナグチ。そしてUKのKODE9、レディ・ホーク、ディジー・ラスカル、アイコニカ。

フライング・ロータスはしっぽマリオのTシャツを着て、真剣な表情で「魂斗羅がヤバイ」と言う。ファティマ・アル・カディリは「悪魔城ドラキュラ」シリーズが「究極の絶望と喜びが存在するゲーム音楽の殿堂」と主張し、KODE9は日本のゲーム音楽がヒップホップ、ダブステップ、フットワークにまで影響すると語る。サンダー・キャットの携帯メール着信音は「昇竜拳!」だ。


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ファティマ・アル・カディリ

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KODE9

彼らにとってゲーム音楽は魔法のようだった。「ストリートファイターII」の音楽に、サンダー・キャットは「まるで自分がチャンピオンのような気分にさせてくれた。下手くそでも、死んだ時には偉大な死であったかのように思えた。死んでもあいつは諦めなかった、そんな気分にさせてくれる音楽はどうやって出来るのだろう?」と当時の感動を語る。厳しい容量の制限の中に日本の作曲家たちが詰め込んだ、アルペジオがあり、ビートがあり、リズミカルで、シンコペーションがあるゲーム音楽。それはループすることを想定された強度のある音楽に彼らが触れた源流の一つであり、ビートメイカーたちに多大な影響を与えているのだ。

本作には、素晴らしい音楽の文化をつくりあげた作り手と現代のビートメーカーたちに加え、日本の美しい風景も大きくフィーチャーされる。既に海外でも大きな反響を呼んでいるそうだ。当時ゲーム音楽に影響を受けた大人も、当時を知らない若いファンにも見てもらいたい、日本のクラフトマンシップを巡るドキュメンタリー映画の名作である。

「ディギン・イン・ザ・カーツ」は全6回のエピソードとなっており、レッドブル・ミュージック・アカデミーの特設Webサイトにて公開中。サイトにはディジー・ラスカルらの話を深く掘り下げたパーソナル・ストーリー・クリップや、ジャスト・ブレイズやJ-Roccらによるゲーム音楽だけのDJミックスなど、ボーナス・コンテンツの隠しステージが満載。ぜひチェックを。

また、11月13日(木)には本作の制作記念イベント「Red Bull Music Academy presents 1UP: Cart Diggers Live」を渋谷「WOMB」で開催。Rustieがゲーム『ベア・ナックル』の作曲家である古代祐三の音楽を中心にライブセットを披露するほか、Oneohtrix Point Neverはシューティング・ゲームへのトリビュート演奏を披露。Fatima Al Qadiriも登場する。こちらも是非!

Article by Akiko Saito

Information

RED BULL MUSIC ACADEMY PRESENTS
DIGGIN’ IN THE CARTS

http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/digging-in-the-carts

20141002_diggin-in-the-carts05ディギン・イン・ザ・カーツ 制作記念イベント
Red Bull Music Academy presents 1UP: Cart Diggers Live

http://www.redbullmusicacademy.com/events/tokyo-2014-1up-cart-diggers
会場 : Womb
会場住所 : 東京都渋谷区円山町2-16 1F
開催日/公演日 : 2014/11/13 (木)
開演時間 : 19:00 ~ 22:00
入場料 : 1000円
予約はこちらから

出演者
ROOM 1:
Rustie vs Yuzo Koshiro
Oneohtrix Point Never: Bullet Hell Abstraction IV
Fatima Al Qadiri: Forgotten World
CHIP TANAKA
DUB-Russell & (*L_*) & 初音ミク
HALLY

ROOM 2:
QUARTA 330
大久保博
井上拓
佐野電磁
杉山圭一
ローリング内沢 CURATING THE ROOM
日野太郎 (VJ)
+Classic Arcade machines


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