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建築・インテリアデザイン・リサーチの活動体 noiz architects が内装デザインや常設インスタレーションを手がけた 国立台北教育大学美術館(MoNTUE)

December 21, 2012(Fri)|



東京と台北を拠点に、建築・インテリアデザインやリサーチ活動を行う noiz architects(パートナー:豊田啓介・蔡佳萱。以下ノイズ)がギャラリー、エントランス、イベントスペース、ミュージアム・ショップ、カフェを含む内装デザイン及び、美術館内外の常設インスタレーションを手掛けた、国立台北教育大学美術館(MoNTUE)が竣工した。

正式なオープニングは2013年春に予定されており、現在ノイズではこのオープニング展の展示計画が進められている。それまでの間、ノイズで展示計画やインフォグラフィックスを担当したプレ・オープニング展「序曲展」が開催されている。

台北のコンテンポラリーアートの中心となっていくであろうMoNTUEには、現在世界的にも特に活発な台北の芸術文化コミュニティーにおける重要なプラットフォームとして、街へ、世界へ向けた文化発信機関としての役割が期待されている。

今回、ノイズが担当した展示計画を写真と共にご紹介したい。

パブリックアート : Brooklyn Wall

美術館東側には台北教育大学の正門があり、街路樹がここで途切れることから美術館の東側壁面は通りからの視認性がもっとも高い。煉瓦仕様で統一された大学の建物群からなる景観に、既存の構成に収まらない大胆なグラフィックを用いることで、ここに現代美術館があるというサイン性が強まるように計画。あえてペンキのグラフィックとすることで、煉瓦タイル貼りの真新しい美術館建物に、ブルックリンの倉庫を改造した美術館やギャラリーが持つような歴史の質感と現代的シャープさが共存する質を付加した。このペイントと壁が徐々に汚れていくことで、より時間と街とになじんだ現代美術館らしさが醸造される。

パブリックアート : メトロポリタン美術館の石膏像コレクション

ニューヨークのメトロポリタン美術館が収蔵していた19世紀フランスの美術工房の製作による、世界の著名な彫刻の複製石膏像コレクションの一部がMoNTUEに寄付された。それ自体美術品と言っていい高い質を持つそれらの石膏像群を、保存状態の良いものから常設展示していく計画が当初から想定されており、ノイズでは常設展示する作品の選定と展示方法、デザインを担当。2世紀近くを経た美術品の質感を生かしながら、現代美術館としての雰囲気づくりとフレキシブルな企画、展示に対応できるニュートラルな質とがうまくバランスをとれるように、錆色鋼板のボックスを様々なプロポーションで構成し、場所や作品に応じた展示とした。場所はできるだけ展示空間よりも日常生活の場(エントランス、階段、カフェなど)を選んだ。

パブリックアート : ワイヤフレーム家具

エントランスロビーの家具は全て、コンピュータースクリーン上のワイヤフレームそのままの状態で、立体感を欠く不思議な実体として構成。デジタルな世界と即物的な世界との境界をあえて曖昧にし、日常から非日常を体験する美術館として意識のリフレッシュを促す場であること、メトロポリタン美術館の石膏像やキャンパスの古い煉瓦造建物が醸造する歴史的な雰囲気に、デジタル環境が突然入り込んだような現代性をコントラストとして付加することを意図している。また、南から北へと抜ける視線を遮らないような軽い構成とすることで、通りとキャンパスとの一体感を損ねないということも考慮されている。

パブリックアート : Magnetic Field


カフェの家具とカウンターをデザインするにあたり、常設で展示されるいくつかの石膏像に焦点を当てつつ、同時に透明感や軽さ、カジュアルな雰囲気とのグラデーションを考えて、カフェ全体に仮想的な磁場を想定。カフェの空間は石膏像を磁場の中心としてゆがめられつつ連続するベクトル場を視覚化する黒い破線で覆われ、家具はそれを視覚化するエージェントとして物体化される。砂鉄が磁場を視覚化するように、石膏像によってゆがめられる空間の流れの感覚や一体感を、床の破線や家具の要素が演出している。破線による磁場の表現をイベントスペースまで連続し、カフェとの一体的な利用を積極的に促す意思表示とした。




MoNTUE プレ・オープニング展 「序曲展」 展示計画


2013年春の正式なオープニングまでの間、教育大学美術学部の歴史、台湾近代美術の歴史、日本と台湾との歴史などを紹介するプレ・オープニング展が現在開催されており、ノイズで展示計画を担当。

展示計画にあたっては、本美術館最大の特徴である2、3階の吹き抜けギャラリーの空間性を最大限活かすことを前提に、美術の教育的見地、感じることの価値をどう展示として提示していくかという事に重点がおかれた。



本展示計画では、美術に付随する情報と作品そのものとを明確に分離し、情報は情報で、作品は全く情報を剥ぎ取った作品そのものとして展示するという試みを行っている。作品の情報(タイトル、作家、製作年代、時代背 景、解説、それらの関係性など)は全てデジタル多次元モデルによるInfographics化し、展示場内のディスプレイおよびウェブサイト上で必要な情報や関係性を自由に引き出せるようにした(http://montue.ntue.edu.tw/works.html)。その上で主要な関係性を三次元モデル上に再構成したダイアグラムをそのまま物質化してアトリウム空間に吊り込み、来場者がその空間内を自由に歩き回って情報空間を「体感する」ことができるようになっている。

一方全ての情報を多次元ダイアグラムに集約することで、作品は付随する解説パネル等が全く無い状態で展示している。そのため情報を読めない来場者は、必然的に作品そのものと対峙することが求められる。便利な美術館の構成に慣れてしまった現代人には多少の不安を感じる展示構成だが、徐々にその意図を理解し、自分なりに作品を見て感じ理解しようと試みるようになる。つまり、美術鑑賞は本来正誤の問題ではないはずで、自分で知識の補助なしに感じようとする行為こそ、現代の美術館に必要な問題提起だ、という意図が込められている。







地下のギャラリーでは本展示中で唯一、テーマ性を持った作品の編集が行われた。東京藝術大学油画科の卒業生は自画像を描くことが恒例で、当時の台湾からの留学生も例外ではない。それらの自画像だけを集めた展示を地下ギャラリーで行った。地下ギャラリーでは自画像の展示と平行して、台湾出身の世界的な映画監督である蔡明亮氏が、展示作家の自画像をテーマにした 短編映画「化生」を本展のために製作し展示している。蔡明亮氏の音と質感にこだわった官能的な映像が微妙に展示空間に滲み出るように、映写室は床からも天井からも分離した浮き壁でつくり、壁も周囲の直行グリッドから10度だけずらしてこの展示の特異性と現代性とを示すようにした。





プレ・オープニング展 「序曲展」の会期は2013年1月13日まで。

今世界的に注目を集める台北アートシーンの中でも、中心的な施設になるであろうMoNTUE。
ぜひ、台北に赴いた際には、足を運んでみてほしい。

Photographer : Yu Hong Shiang

Information

国立台北教育大学美術館MoNTUE
http://montue.ntue.edu.tw/

MoNTUE facebook
https://www.facebook.com/MoNTUE2011

MoNTUE プレ・オープニング展 「序曲展」
会期:2012年9月25日-2013年1月13日

noiz architects
http://www.noizarchitects.com/

所在地: 台北市台湾
施主: 国立台北教育大学美術館
設計期間: 2011年3月‒2011年9月
施工期間: 2012年4月‒2012年7月
用途: 美術館、カフェ、常設インスタレーション
延床面積: 3,200㎡


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