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地上17階・地下2階の全フロアに16のジャンル、約300名のクリエイターが集結 『TRANS ARTS TOKYO』レポート

November 2, 2012(Fri)|



 東京の真ん中で、近年稀に見る規模のイベントが行われている。会場となるのは神田にある旧東京電機大学の校舎1棟。地下2階+地上17階の各フロアではアーティスト、デザイナー、パフォーマー、建築家などが展示やイベントを行っている。神田界隈は今、大規模な再開発が行われており、東京電機大学は千住キャンパスを開設して移転。『TRANS ARTS TOKYO』が終了すれば、この校舎も取り壊される。そのため、壁・床・窓にペイントして独自の世界を生み出す参加者もいれば、もともとこの場所で使用されていた什器を用いて展示を行う参加者もおり、1フロアごとにまったく異なる世界を味わうことができる。

 今回のイベントは、ここに2017年にコミュニティ・アートセンターを設立するための第一歩。この構想に携わるアーティストであり、3331 Arts Chiyoda統括ディレクターでもある中村政人氏はこう語る。
「東京は広く、いつも何かしらの動きがどこかで生まれています。しかし、なかなかいろんなジャンルの人たちと話す機会がありません。いつの間にかジャンルや領域の“住み分け”がなされているような気がします。そこを超えて、東京の真ん中で議論したり、想いをぶつけたりすることが必要なんじゃないかと考えています。“アートセンター”と言葉で言うのは簡単ですが、実はそうではありません。オルタナティブな意識から地元の人たちとどう関わっていけばいいのか? これから生まれるアートセンターがそのひとつの初動になればと思います」
 約300名ものクリエイターたちが参加する『TRANS ARTS TOKYO』の魅力は、その圧倒的な密度にある。ここではその一部を紹介する。


各フロアにひしめく表現の渦




2F/(上)写真家・池田晶紀(ゆかい)が撮影した“神田っ子”の写真/(下)木下栄三による「皇居と江戸城重ね絵図」

まず、2Fには神田をテーマにしたプロジェクトが展開されている。『神田っ子インタビュープロジェクト』は神田で生まれ・育ち・働く“神田っ子”の姿を写真家・池田晶紀(ゆかい)が撮影。さらに、彼らのインタビュー映像や、神田で撮影された昔の写真なども展示されており、この土地に息づく“神田への想い”が浮かび上がる。
興味深いのは建築家/画家の木下栄三が描いた「皇居と江戸城重ね絵図」。これは4年以上かけてフィールドワークを行い、江戸時代の御城図に平成の皇居東御苑図を重ねたもの。細かく現在の様子が描かれているため、“いま”と“昔”が何気ない日常の中で結ばれていることを実感できる。

3F/O JUN(上)福田美蘭(下)の展示風景

3Fには岩田草平(Prominority)、大木裕之、O JUN、佐々木耕成、椿昇、福田美蘭、村山修二郎、和田昌宏がコミッションワーク・アーティストとして招かれ、作品展示を行っている。

3F/岩田草平の展示風景

インドに暮らし、少数部族であるサンタル族とさまざまなプロジェクトを行ってきた岩田草平(Prominority)は、少数部族の生活様式にインスパイアされ“村”を制作。部屋の中に突如、村の一部が出現した風景はこの場所の雰囲気とも相まってなんとも不思議な存在感を放つ。11月17日(土)&18日(日)と毎週水曜には、参加者と“村づくり”を行うワークショップも開催予定。



4F/「Art Affair Tokyo Lab#001」が展開する空間

4Fでは東京電機大学で使用されていた什器を使用した美しい展示が見られる。「Art Affair Tokyo Lab#001」は、工芸品から現代アートまでさまざまなジャンルの作品が展示・販売され、日本最大の規模を誇る「アートフェア東京」の実験的プロジェクト。クラフトやジュエリーなどの展示を中心に、アートを軸とした新しい産業の可能性とマーケットの構築を試みる。



5F/(上)「どくろ興業」の“興業”が行われているフロア(下左)取材時に出会った「どくろオールスターズ」の一員

エレベーターが開いた瞬間に、別世界へと引き込まれるのは5F「どくろ興業」。「現在を生きる表現者は、自由の意味や状況を伝える伝導師であるべき」という思考のもと、様々な表現者たちの活動を支えるために誕生した「どくろ興業」は、表現活動が社会に対して現実的に機能するべく「興業(=産業を盛んにする)」を試みる。このフロアも彼らの「興業」のひとつであり、各部屋では映像上映やパフォーマンスなど、文字通り“多種多様”な表現が折り込まれている。運が良ければ、廊下を往来する「どくろオールスターズ(どくろ興業に参画する表現者たち)」にも出会えるかもしれない。

9F/(左)KASICOによるペインティング(右)Breadboard Band展示室の入口(下)乙幡啓子による展示

9Fで開催されているのは『トランス・その他・ら・エクスプレス』。その名の通り、ひとつのジャンルや見せ方にまとめようのない作品を集めたフロア。アパレルブランドgalaxxxyでグラフィックデザイナーをつとめるKASICOが壁にペインティングしていたり、電子回路を自由に組み立てられるブレッドボードを用いて演奏するBreadboard Bandが緑色に光る室内で電子音を奏でていたり、妄想工作所の代表をつとめる乙幡啓子が針金ハンガーで『ハンガーの巣』を展示していたり……。

9F/いしいこうたたちの作品


中でもぜひ体験してもらいたいのが、いしいこうたたちの作品。ロッカーや引き出しにカーソルを合わせ、手前にあるマウスでクリックすると勢い良く引き出しが飛び出す。体験後に隣の部屋でシステムの全貌が明らかになるのだが、この仕掛けはまさに“その他”にしか分類できない。(展示は土日13:00~17:00/この制限された公開時間も仕掛けを知れば納得するはず)。ぜひ自分の手でクリックし、その目でシステムを確認してほしい。



11F/『「ゆかい」大展覧会』の一部

11Fで行われているのは、写真家・池田晶紀が主宰する「ゆかい」がプロデュースする展覧会。「ゆかい」メンバーの池田晶紀、ただ、川瀬一絵、後藤武浩、磯田和宏をはじめ、桑沢デザイン研究所選抜15名が“日常のユーモア”をテーマに写真展を行っている。展示空間のつくり方も作家ごとに異なるため、一部屋一部屋足を踏み入れるのも楽しい。

12F/ASYL・佐藤直樹はこの部屋を「ASYL Alternative Design Office」として公開中。

12Fでひと際目を引くのはASYL・佐藤直樹の“もうひとつのオフィス”。『TRANS ARTS TOKYO』期間中、パソコンも電話もないこのオフィスで佐藤氏は仕事をしているそうだ。壁に描かれた「KEIDANREN」は、部屋の窓から外を眺めたときに目に飛び込んで来た看板の文字を原寸にしたもの。佐藤氏が不在のときは、ここで綴ったダイアリーが読めるようになっている。



16F/(上)『GRAPHIC PASSPORT 2012』会場風景(下)Daisy Balloonのカラフルなバルーンドレス

16Fでは『TOKYO GRAPHIC PASSPORT 2012』が開催されている。真っ白に塗られた壁に、国内外のファッションブランド広告などで活躍するOHGUSHIや、バルーンアーティストの細川理枝とアートディレクターの河田孝志からなるユニットDaisy Balloonのバルーンドレスが目を引く。フロア内にはラウンジも用意されており、洗練された空間となっている。

14F/「天才ハイスクール!!!!」のフロア。エレベーターを降りるとなぜか花壇が……。

他にも、14FではChim↑Pom・卯城竜太率いる現代美術道場「天才ハイスクール!!!!」のエネルギーが炸裂、B1Fで展示されている五木田智央が音響を担当したマジック・コバヤシの『DRUNK TOWER 2012』、11号館を飛び出して旧東京電機大学の工事現場を覆う仮囲いに大規模な壁画を描く大塩博子など、会場には東京に渦巻くありとあらゆる創造性が集結している。

B1F/ マジック・コバヤシ&五木田智央による『DRUNK TOWER 2012』。「DRUNK TOWER」とは、泥酔しながらその場にあるものを使って即興でつくりあげるインプロビゼーション・スカルプチュア(即興彫刻作品)。

屋外/ 解体が進む工事現場を囲む大塩博子による『壁画プロジェクト』。


つくるエネルギーを蓄える、新しい拠点


 『TRANS ARTS TOKYO』は期間限定のイベントだが、これが継続的に存在したらどうだろうか? 多くの表現者やクリエイターが出入りし、制作・発表・議論できる場を持ち、訪れる度に変化する場所。領域横断的なアイデアや方法論、ビジネスが誕生する可能性はもちろん、おそらく東京の新しい名所にもなる。
「つくるエネルギーを蓄える場所、それが東京の魅力でもあると思うんです。東京という場所にエネルギーを落とすためのクリエイティブなプロセスをどう起こすことができるかを試みています」と中村氏は語る。5年後、この街で新たな物語を刻み始めるコミュニティ・アートセンター。その序章となる『TRANS ARTS TOKYO』は、今後の東京のクリエイティブシーンを語る上で見逃すことのできない展示だ。

 会期は10月21日(日)~11月25日(日)まで。500円の参加料を支払えば、会期中何度も入場できるパスポート制なのも嬉しい。週末は多くのイベントが開催される他、最上階の17Fでは東京の街を一望できるEAT TOKYO CAFE(週末のみOPEN)でフードやドリンクも楽しむことができる。

Article by Konishi Nanae


Information

神田コミュニティアートセンタープロジェクト
『TRANS ARTS TOKYO』

http://www.kanda-tat.com/

旧東京電機大学校舎11号館(東京都千代田区神田錦町2-2)
日程:2012年10月21日(日)~2012年11月25日(日)
時間:12:00-19:00
休み:火曜日
料金:500円(期間中何度も使えるパスポート制)

<関連イベント(一部)>
■TAT Performing Arts Vol.1
2012年11月14日 16:30開場 17:00開演
参加費=1500円(全席自由)
Abe “M”ARIA、core of bells, 危口統之(悪魔のしるし)が出演。元地下実験室の空間と対峙して生まれるサイトスペシフィックなパフォーマンスを行う。

■ライブ編みワークショップ
2012年11月10日(土) 14:00-16:00
参加費=1000円(材料費込み、ニット生地持込可〈返却不可〉、メイン会場入場料込)
天才編み師・203gowとライブ編みを行うワークショップを開催。館内の手すりやドア、棚に椅子、机等々、校舎を縦横無尽に行き来しながら編み包み、終了後はそのまま作品として展覧会期間中展示される。(*要申込)

■ゲスト・レクチャー やなぎみわ(現代美術作家・京都造形大学教授)
2012年11月18日(日) 17:30-19:00
参加費=無料
東京藝術大学 絵画科 油画専攻 “OPEN LAB”(15F)の関連イベント。美術から演劇まで幅広く展開するやなぎみわ氏の活動をレクチャー。(*事前申込不要)

■TAT Performing Arts Vol.2
2012年11月25日(日) 15:30開場 16:00開演
参加費=2000円(全席自由)
KENTARO!!、白井剛×スカンク、くたばれ!ネンネンズ、flep funce!×小田晃生、捩子ぴじん×豪華シークレットゲストが出演。展覧会最終日を飾る豪華ラインナップ。

*各イベント申込に関しては、『TRANS ARTS TOKYO』サイト(http://www.kanda-tat.com/event/)をご確認ください。


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