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音を鳴らして遊べるサウンド・アート・カフェ
台北 Noise Kitchen リポート

October 2, 2012(Tue)|



台北でデジタルアートを専門に扱うアートセンターDigital Art Centre Taipeiの中に、今年の5月、カフェがオープンした。そのカフェにはインタラクティブな作品がインテリアとして設置してあり、訪れた人が自由に遊べるという。そのカフェの名前はNoise Kitchen。(中国語で『噪咖』)プロデュースを担当した台北在住アーティスト王仲堃(WANG Chung-Kun)さんに、実際にカフェ内の作品を見せてもらいながら、どういった経緯でこのカフェが誕生したのかを聞いてきた。

Noise Kitchenが誕生した背景 ー 立地の悪いアートセンターに来場者を増やすには?



Digital Art Centre Taipei外観
台北市中心部から地下鉄で約20分、芝山駅から歩いて5分の距離にあるDigital Art Centre Taipei(以下、DAC)は、海外からもアーティストや作品を招き、展示・イベントなどを精力的に行なっている。だが、市の中心部から少し離れている事が原因で、来場者を増やすことに苦労していたという。

「ここにカフェを併設するというのは、もうずいぶん前からあったアイディアなんです。私のガールフレンドはDACで働いていて、私も自分の活動に縁深い場所です。ここにいろんな人を呼んで、たくさんの人にデジタルアートを楽しんでもらうためにはカフェを作ればいいんじゃないかと、2人で話していました。昨年11月に私の兵役期間が終わって、DACの執行長(トップ)である黃文浩(Wen-Hao Huang)さんにこのアイディアを正式に提案しました。賛同してもらえて、黃さんがすぐにスポンサー探しや資金集めに動いて下さり、今年の3月から着工、インテリアとなる作品の製作が始まりました。」と、王さんは話す。


Noise Kitchenのプロデューサー、王仲堃(Wang Chung Kun)
さん。
日本ではそんなに簡単に資金が集まるのか?と思い、どうしてそんなにうまくいったんですか?と聞く。

「今までのDACの状態では、来場者は展示を見るという目的でしか来ることができません。展示を見て、その後くつろぐ場所もないのですぐに帰る。そして場所も、台北の市内中心部ではなく、この芝山という少し離れた場所にあります。展示に人を呼ぶことも苦労する場所です。そして、DACは主に台北市政府の援助で成り立っています。市政府や市議員は、『先月何人の来場があった?』と常にチェックしてきます。台湾では、人が来ない場所のことを“蚊の館”と言うんですよ。蚊の館になりつつありました(笑)。なので、カフェを作ってくつろげる場所を提供することは、現状を打破できる一つの方法だとDACに関わる全員が思いました。反論を受ける要素はなかったと思います。そして、そこまで立ち上げに膨大な金額はかかりませんでした。だいたい200万元(約550万円)ぐらいでしたね。」


DACの左脇通路を奥に進めば、Noise Kitchenの入り口。
実際に、オープンしてから台湾国内の様々なメディアがNoise Kitchenを取り上げ、来場者数は増えているらしい。取材日にも、子供たちとお母さんが宿題を一緒にやっていたり、学生らしいグループの打ち合わせが行なわれていたり、カップルがゆっくりお茶を飲んでいたり、いろんなタイプの客層がゆっくりと過ごしていた。

また、王さんは兵役中に経験したアーティストならではの体験についても話してくれた。

「兵役期間中、アートというものが世間一般の人からどれ程遠いのかを思い知りました。軍の仲間に「普段何やっているんですか?」と聞かれ、『サウンド・アート』と答えても、『え?』って聞かれます。そんなものはみんな聞いたことない言葉で、ざっくりと“アート”と言っても、一般の人には馴染みがないものです。サウンド・アートというものについて、頑張って説明しましたが、説明すればするほど、みんな困惑していきます(笑)。私はこう考えます。このDACという場所と人を結ぶのがアートです。そして、そこに人が滞留するカフェが出来たことで、よりアートを身近に感じてもらう、というのがNoise Kitchenの役割ですね。私が作る作品は、ノイズを発生させるものがほとんどです。ですが、ここはあくまでもこういった体験を楽しんでもらう場所ですから、音階を付けて、子供にも誰にでも触れ合ってもらいやすくしています。サウンド・アートやメディア・アートを非日常なものとして囲ってしまうのではなく、人の日常生活に溶け込ませていきたいと思っています。」


Noise Kitchenで月1回行なわれているサウンド・アートのパ
フォーマンスイベント『失聲祭(Lacking Sound Festival)』
でのアーティストトークの様子。
現在は設置されている作品は常設の5点。王さんは今後の展示やイベント企画も計画中。また、王さんの盟友であり、王さんと同じく台湾を代表するサウンドアーティスト姚仲涵(Yao Chung-Han)がキュレーションするイベント『失聲祭(Lacking Sound Festival)』は月1回、Noise Kitchenにて開催されている。

今後もこのカフェを長く続けられそうですか?という質問に、王さんはこう答える。

「DACは、市政府の助成と基金から5年間の運営は約束されています。その5年間が終了する2013年、実はどうなっているかわかりません。きっと継続できると思っていますが、その時になってみないとわかりませんから。ですが、Noise Kitchenは、実は、中身のインテリアとしての楽器・装置が肝ですから、DACで運営できなくなったとしても違う場所に引っ越すことはできます。」

台湾で勢いづくメディア・アートの背景には、自分たちの環境は自分たちで作ろうと奔走してきた王さんや王さんの友人であるアーティスト、キュレーターたちの姿がある。彼らはいつも「アートは特定の人だけのものではない。」と言い、アートという言葉にこびりついた高貴なイメージを取り払おうと試行錯誤を続けている。

Noise Kitchenは、カフェとしても居心地が良く、カウンターテーブルには電源が備え付けてあり、無料Wi-Fiにも接続できる。コーヒーも美味しく、お菓子も手作りで美味しい。お菓子とコーヒーのセットで100元(約270円)ほど。ピザやベーグルの軽食メニューもある。

作品紹介 ー Noise Kitchenの遊び方


では、Noise Kitchenに設置された作品を紹介する。Noise Kitchenに設置されている作品は現在5点。すべて王さんがデザイン・製作したものだ。



1. Melodicabinet
現在、台湾の手工芸コンペに出展中のキャビネット。アコーディオンの原理を利用しており、引き出しを引いたり押したりすれば音が鳴る。下記の動画の4分10秒あたりで王さんがMelodicabinetを実演する。





2. Voice Line
パイプに向かって話した小さな声が遠くのパイプの先に届くという、ごく一般的な装置。王さんは近々、組み立て式のパイプの中に、ボコーダーやリバーブ、フィルターなどのエフェクトを組み込むことを計画中。



以下、3~5の作品に関しては今回の取材時に撮影した動画も合わせてご覧頂きたい。

noise_kitchen_interview2012aug from Kanako Yamamoto on Vimeo.




3. another Soundscape v.2
柱の金属板の装置。譜面(オルゴールのような仕組み)の役目をしており、テーブルの上の木琴(4. KeyNoteTable)・天井からぶら下がるパイプ(5. Kong・Qi)を操ることができる。



4. KeyNoteTable
5台のテーブルにそれぞれ3個ずつ木琴(マリンバ)の鍵盤が埋め込まれている。another Soundscape v.2またはQRコードからアクセスできるURLにより自動演奏することができる。テーブルにはマレット(木琴を叩くバチ)も置いてあるので、人間が一緒に合奏することも可能。



5. Kong・Qi
イカのようなパイプ型の物体が天井にぶら下がる。another Soundscape v.2から操作できる。空気の圧力でぱたぱたと動きパーカッションのような役割をしている。

実は人気の観光スポット士林夜市からも近いNoise Kitchen並びにDAC。台北観光の合間にここで休憩し、台湾発メディア・アートに触れて遊んでみてはいかがだろうか?

text by Kanako Yamamoto(Offshore

Information


Noise Kitchen
http://www.facebook.com/noisekitchen.tw

台北市士林區福華路180號
tel. 0277360708
月曜定休
営業時間(※イベント開催時はチケット入場制になることがあります。)
火~木・日:10:00~18:00
金・土:10:00~21:00

Digital Art Centre Taipei
http://www.dac.tw/

Profile


王仲堃 WANG Chung-Kun
1982年生まれ、台湾高雄市出身。台北在住。音、彫刻、ビデオ、キネティック・アート、サウンドインスタレーションの領域をめぐる作品を製作。昨今の台湾メディア・アート界を代表する一人であり、一貫して、美しく特殊な様態をもつ装置を製作する。体験者のアプローチによって、装置は自ら動いたり、音を発したり、オン・オフが切り替わったり、空気を放出したり、回ったり、光る。まるでその装置たちは生きていて、それぞれの生命のリズムを表しているようでもある。
http://wang.iolab.tw/


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