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アートのもつクリエイティビティを社会の中でどう活かしていくかアルスエレクトロニカフェスティバル 2015 小川秀明氏インタビュー
October 2, 2015(Fri)|
2015年9月3日から5日間の日程で開催された、2015年のアルスエレクトロニカフェスティバルが閉幕しました。
ここ数年、アートのもつクリエイティビティを社会の中でどう活かしていくか、という方向へ大きく変化してきたアルスエレクトロニカのステートメントが、はっきりと輪郭を得た年になったように感じます。
今年もフューチャーラボのアーティストである小川秀明さんへのインタビューを中心に、前編後編の2回に分けて、その流れをたどってみたいと思います。
前編では2011年から4回目となった最新インタビューをご覧下さい。
Article by Haruma Kikuchi (UNIBA INC.)
Images from Ars Electronica
アルスエレクトロニカ 小川秀明氏インタビュー
菊地:よろしくお願いします。まず、今年のアルスエレクトロニカ・フェスティバルのトピックとしてどんなものがあるか、伺えますか。
小川:今年は3つの大きなハイライトがありました。ここポストシティ(郵便局集配所跡地)、アルスエレクトロニカ・センター、OKセンターの3つの場所で、それぞれアートとインダストリーの関係、アートとサイエンスの関係、アート自体が今なにを模索しているのか、その大きな3つのテーマが会場ごとにあったかなと思います。共通しているのはもちろん「社会性」です。
さらに飛躍させて言うと、アート×ガバメントといった事象まで含んでいるのかなと思います。今回すごくタイムリーだったのが難民問題です。いま1万2千人ほどのシリアからの難民が、オーストリアを通過してどんどんドイツに入っています。ここリンツもまさにその課題に直面しています。実は、我々が2010年に再生したリンツのタバコ工場が500人ほど収容できる難民キャンプになっていたり、ここPost Cityも正式に受け入れ先になることが決まりました。
社会がダイナミックに動いているなかで、このフェスティバルがただのフェスティバルではなく一種の社会実験として何ができるのかということを、全体としては体現したのではないかなと思います。
菊地:ポストシティ展の中で、シリア難民だけでなく、ネパールの地震の話など社会問題がクローズアップされていますね。
小川:今回のサブタイトル「Habitats for the 21st Century」は「21世紀、人はどこで生きるか」という問いです。いま、予測できない課題や局面に対してどうやって「レジリエンス(弾力性、回復力、抵抗力)」をもつかがすごく問われている時代で、地球上で起こっている問題に触れています。この街=ポストシティは、世界中の街をコンパクトに凝縮させたエキシビションとして、あたかも街を歩き回るかのように体験できるというのをコンセプトにしています。ぼくらはこれをポップアップシティと呼んでいます。街がポップアップして、今日(フェスティバル最終日)で消えて無くなってしまう。そういう実験的な街なんです。
去年のフェスティバルは既存の街にアイディアをインストールしていくという手法でしたが、今年は今ぼくたちを取り囲む問いに基づいて、街自体を作っていきました。さまざまな社会課題に対するクリエイターたちの活動を通して、これからの街「ポストシティ」を考える大きなフレームになったんじゃないかなと思います。
菊地:ポストシティ展では、メルセデスとの取り組みも紹介されています。将来、自動運転車が街に入ってきたときにどういう新しいルールとやマナーが必要なのか、という現実的な問題に、フューチャーラボが共同で取り組んでいます。
The F 015 Luxury in Motion Future City.
小川:我々フューチャーラボが持っている技術は、コミュニケーションの技術です。メルセデスの興味のポイントも、これから考えなきゃいけないのは車だけのことではないというところです。どう車と人がインタラクションするのかとか、車と環境が全体としてどう機能すべきなのかというのが、大きな研究課題でした。
我々の持っているコミュニケーション・リサーチに興味を持ってもらって、共同研究を進めています。
菊地:コミュニケーションの例として、車の前面に光の横断歩道を出して、歩行者に対して「通っていい」というサインを出すものがありました。
車の外側にいる人やモノとの関係や、車と乗っている人の関係の中に、どうやって新しい言語をつくるかという課題があるときに、過去のロボットへの取り組みやスペクセルズを持っているアルスエレクトロニカとやるからこそ、メルセデスとしても研究を深められる部分があるのでしょうね。
小川:そうだと思いますね。すごく光栄だったのは、このコンセプトカーのヨーロッパ初お披露目がアルスエレクトロニカ・フェスティバルだったことです。フランクフルトモーターショーが2週間後にあるのですが、従来メルセデスの最新の、最先端のヴィジョンは、そちらで発表していたはずです。社会を形づくっていくために必要なヴィジョンをそれに適したパートナーと一緒に一般市民も含めて展開してゆく。そんな企業側のポジティブな兆しをこちらも感じました。
菊地:お互いに必要としている、いい関係に見えますね。
小川:そうですね。
もうひとつ重要だったことは、メルセデスのF015だけではなくて、いろんなモビリティを一緒にフューチャー・モビリティとして紹介したことです。多様性の中に自動運転車があるからこそ、その価値やポジショニングがわかってくる。これがメルセデスのコンセプトカー、トヨタのコンセプトカー、って感じで未来の車だけが並んでいたら、たぶん怖いと思うんですよね(笑)。
そうではなくて、フューチャー・モビリティの中に木のセグウェイがあったり、アーティスティックな視点と混ざった状態で提示していく。そこは意図的にキュレーション、デザインしたつもりです。
ポストシティ展のキュレーションとして、ポストシティ・キットというコンセプトをFUTURE CATALYSTSとして開発しました。キットというのは「a collection」のことで、ある目的のためにコレクションされたものを言います。例えばメディカルキットは、医療のためのキット。ポストシティ・キットは「これからの街」のためのキットで、アイディア、ストラテジー、プロトタイプ、ツールなどがひとつに詰まったコレクションです。この展示空間には、ツールボックス=ポストシティ・キットのいろんな要素が入っています。(詳細は http://www.aec.at/postcity/en/postcitykit/ )
菊地:話はすこし変わりますが、大阪のナレッジキャピタルがポストシティ展に加わっています。
小川:今回見てもらいたかったのが、街の多様性です。世界で起こっている街づくりのヒントを集めたいと思いました。
そういう意味で、大阪のナレッジキャピタルも、いま世界中で行われているクリエイティブセンターの先駆的な事例、ストラテジーだと思います。
去年から、ナレッジキャピタルと共同で、我々アルスエレクトロニカのいろんなフレーバーを大阪に持ち込んでいくというArs Electronica in the Knowledge Capitalというプログラムを続けてきました。今回はその逆の流れで、ナレッジキャピタルがどんなクリエイティブセンターを志向しているのか、どんな研究をしているのかを紹介しています。
日本ではなかなか出会えないヨーロッパの一般市民との交流やアルスエレクトロニカの市民参加の枠組みを体感することで、ナレッジキャピタルの持っている可能性やこれからのステップが確認できたというフィードバックをいただきました。
菊地:会場内の通路に、「大阪へのショートカット」というサインがありました。
小川:そうなんです。会場内には実際の街のようにサインがあって、スパイラルフォールズとか、カンファレンススクエアとか、イーストアベニュー、ウェストアベニューとか。ファッションディストリクトとかですね。ネーミングは今回ぼくを中心に決めました(笑)。
最初ドイツ語で名前をつけようという話もしていたんですけど、外国人にはわかりづらいので。外国人にもわかる単語を街の中に配置して、何かしら想起できるように名付けました。
菊地:足もとに出てきたときに、興味を引かれるものがありました。
看板も、心なしか大阪のエリアは日本ぽいですか?
小川:ナレッジキャピタルさん自身がサイネージをつくってますからね。それも面白いなと思っていて、大阪のところだけ独特のサイネージコミュニケーションがある。外国人からすると見たことないサイネージで。でもそれも多様性のひとつかなと思っています。
菊地:会場全体が、ドイツ語圏のネーミングマナーで統一されていたら、もっと入りづらかったかも知れません。
小川:そうですね。もちろんサインをぜんぶ統一するとかもできたんですけど。ニューヨークに行ったらチャイナタウンなど様々な地域があるわけだし、今のグローバルな都市というのはエリアとかディストリクトに固有のフレーバーがあって、そこに住んでいる人たちの文化の集合が空気感としてあります。そこに表出するがリアリティだし「この空白エリアはなんだろう?」と思ったら、たぶん政治的になんかあったのが理由かも知れないし(笑)。
それも含めて、ポップアップシティが浮き上がっているわけです。
菊地:フューチャーイノベーターズサミットについても聞かせて下さい。
去年に続いて、2回目がありました。今年はどうだったでしょうか。
小川:去年は、「変わるために必要なこと」という抽象的なテーマだったのに対して、今年は「ポストシティ・キットを開発しよう」というテーマでした。
どちらかというとゴールがクリアで、わかりやすかったと思います。
3つのサブテーマ「インフォームド・トラスト – 自律型マシンの世界で」「フューチャー・シチズン – これからの街で生きて行くときにいかにスマートになるべきか?」「フューチャー・レジリエンス – どんなレジリエンスを私たちは創造すべきか?」のポストシティ・キットを開発しました。
フューチャーイノベーターズサミットは、アルスエレクトロニカと博報堂との共同事業「FUTURE CATALYSTS」として昨年立ち上げた新しい取り組みです。アルスエレクトロニカの環境を最大限に活かすために二つの考えがあって、ひとつ目は、会議室ではない、ご覧いただいた通り「森の中」でディスカッションするように、場所性を生かすこと。どうやって彼らを通常のモードから緊張をほぐして、違うモードにしていくかというのが重要なポイントです。
小川:ふたつ目はアーティストや、特定のトピックだけに興味を持っている人たちだけではない人たちが混ざり合うことで生まれる、クリエイティブなコリジョン=衝突を志向している、ということですね。
いままでの融合モデルは、こういうモデル(ふたつの円が一部重なり合っている集合部分:図)が多かった。それだと、重なっている部分だけで話をしがちなんですよね。周辺にあるものが全部なくなってしまって、クロスするところしか見ていない。だけど衝突すると、ぶつかり合って粉々に散らばった領域を観ることができる、という意味で、そういったやり方であえてディスカッションするようにしています。全体のプログラムは、博報堂と共同開発しています。当日のファシリテーションも博報堂のメンバーが担当しています。
融合モデル(コラボレーションとクリエイティブ・コリジョン)
そのあたりが上手く機能するようにしつつ、アルスエレクトロニカがただのショーケースとか、インスピレーションをもらえる場所ではなくて、そこから何か生み出される場所になる、という意味で2年目やって、文化になりつつあると思います。
文化になるというのは、去年フューチャーイノベーターズサミットに参加した5名ほどのイノベーター達が自主的に戻ってきて、コミュニティになってきている。フューチャーイノベーターズサミットというスクールを通して、新しいムーブメントが生まれそうな気がしています。
また来年もやる予定ですし、東京やアジア圏での展開も構想しています。フューチャーイノベーターズサミットが未来をプロトタイプする場として育ってくれるといいなと思っています。
菊地:フューチャーイノベーターズサミットは、去年とかなり形式が変化していますね。6チームが3チームになっていたりとか、会場のバリエーションも去年と比べると少ないですね。
小川:そうですね。基本的なレシピはずらさないようにして、それ以外に関しては、去年の反省を活かしています。去年は6チームがパラレルに動いてファシリテーターがすごく大変だった。実質的に快適にできる3チームにするのと、会場もころころ変えないで、イノベーターたちも疲れないようにしてます。
菊地:来年以降も楽しみですね。
フェスティバル全体としてはいかがでしょう。
小川:今年はおかげさまで、好評でしたね。雰囲気がいいというか。会場とか、全体としてのステートメントがすごくいい感じにまとまっていて。ここ(ポストシティ)に来れば今年のヴィジョンが一望できるので、アルスエレクトロニカがなにをしたいのか分かりやすかったのではと思います。
菊地:そうですね、いち来場者としても同じ印象を持ちました。
会場で言うと、リンツのオーケストラがコンサートホールではなくポストシティの地下(旧鉄道ターミナルホール)で演奏していました。場所が違うということで、例年とエネルギーの発散の仕方も違ったのかなという印象でした。
小川:そうですね、やっぱりそのフレーミングはとても重要だなと思っています。毎回同じことを言っているかも知れませんが、アーティストの表現力は疑いないので、そのクリエイティビティを社会の中にフレーミングしていくスキルが必要です。
そこは日本ではまだあまりやられていない部分かなという気がしますね。日本にはいいアーティストやキュレーターがたくさんいますけど、展示の展開先としてはどうしてもホワイトボックスが多い。今回見てもらうとわかるんですけど、アートをどうやって社会にフレーミングしていくのか、というのは、人間の創造性を俯瞰的な視点をもって社会にどう展開させていくのかということです。
そういった視点がもっと広がると、社会の中のアートがもっとクリアになってくると思います。そこに参加する市民のひとたちも、サービスとかプロダクトだけではないモードが世の中にあるんだ、というマインドセットになってくれるといいなと思いますね。
菊地:初めてポストシティ会場に来たときに、郵便局の黄色いマークの下にフェスティバルのポスターが掲げてあるのが目に入ってきました。あれは日本で言うと赤いT字のポストのマークの下にフェスティバルのポスターがあるっていうことですよね。
小川:そうですね。
菊地:「ポストシティ」のインストール先として、みんなが郵便局だと思っているところをあえて選ぶ、ということですね。日本の状況に置き換えて考えると、すごいことだなと感じます。
小川:郵便局の巨大配送センターの中に、これからの街のシミュレーションがある、というイメージですよね。これはいろんな意味で面白くて、ポストセンターはいわゆるコミュニケーションの集積地でもあったわけです。歴史的に。
この場所も1.5年前までは2000人の従業員が働いていました。今は郊外の新しいセンターに移動しています。なぜかというと、かつては郵便が貨物で運ばれていたので、ロケーション的に駅に近いここが集積地として作られたんですが、いまは車で配送するのがメインになってきた。それから、インターネットでものを買うことが増えていて、この施設では追いつかなくなったというのがある。
最初、手紙を使わなくなったから物量も減ったのかなと思ったんですけど、逆なんですよね。デジタル革命が、人と人の繫がりかたとか、人とモノの繫がりかたをすごく変容させています。そういう意味でポスト(郵便)という一時代を支えた通信の象徴的なところで、これからの市民がつながり合うフレームワークとしての街、現在進行形の実験としての街、というのを見せることができたのは、すごく面白い作業なんじゃないかなと思います。
菊地:一時代を終えた施設で、「次の」街を描くという意味でもポストですし。だじゃれなんですよね(笑)?
小川:そう、だじゃれが連鎖するようになっていて(笑)。
もう一個あそこにポストあって、実はポストカード送れるんです。ポストシティ・キット・スタンプラリーというもので、ロゴマークを自分で作れるんです。各会場でスタンプが転がっていて、それを使ってカードをデコレートすると自分だけのポストシティ・キット・ロゴマークを作れる。それをそこのポストから送れる、ということになっていて。
参加者ができるのは、自らの手で散らばっている情報を編集して、自分だけのキットを作って、そのポストシティ・キット・カードを、ポストシティから、ポストサービスで送れるっていう。それもだじゃれなんですけど(笑)。
菊地:郵便システムは、道路を通すことと同じように、インフラとして整備されたものですが、だじゃれによってその歴史にも繋がっているわけですね。
小川:そうですね。さっきの話に戻ると、やっぱりアートとインダストリーという意味でもここ(郵便局集配所跡地)を選んだのは良かったと思います。
僕らが去年からアート×インダストリーの中でアートシンキングの重要性を言っている訳は、やっぱり「誰が社会をシェイプしているのか」ということだと思うんです。ぼくらは自分たちが主役となって、市民として社会を変化させているんだと信じたいけど、それはリアリティじゃなかったりする。政治家も自分は世界を変える!といって立候補するんだけど、何を変えているのかな、と疑われていたり。結局、社会に本当につながって、責任と影響力を持って形づくっているのは企業だったりします。
さっき道路の話がありましたけど、例えば、車が道路を作っているんです。そう考えると企業というのは、世の中のデマンドのミラーだと思うんですね。ニーズがなければその企業は存在しないということです。
いま企業が描く未来のヴィジョンが、人と社会にとって本当に重要なのかということを、常に問いかけつづける触媒としてアートがすごく重要だと思っています。
近年、サステナビリティという20年間くらい言われていたバズワードが変容しようとしていて、まさにFISのテーマにもなった「レジリエンス」のように、どうやって危機を機会ととらえてクリエイティビティに変換できるか、抵抗力をもつことができるか、という時代に変化していると感じます。
サステナビリティってすごくロマンティックというか、あるといいなと思うんですが、リアリティは違っている。状況が刻々と変化している中では、持続可能って、実は理想にすぎない。「レジリエンス」というのはそうじゃないモードで、いわゆる360度、空も地面も含めて、ちゃんと見とかなきゃいけないということです。そのときにアートシンキングというのは、やっぱりパワフルで、「レジリエンス」を議論するときにとても重要な視点なんじゃないかなと思います。このポストシティの郵便局という環境に、これからのモビリティやロボティクスなどいろいろなイノベーティブな技術が集まっていますが、それを見たときに、あらためてアートシンキングの可能性を感じることができました。
菊地:今年の小川さん個人の作品や、仕事についても紹介していただけますか。
小川:
今回のメインの仕事は、このPost Cityを生み出すこと。一個だけ新しいものとしてはFOCUSというプロジェクトです。
菊地:大阪でも展示されていた作品ですね。
小川:そう。小さなツールですけど、この会場で発見した皆さんのフォーカスがバッチになるというものです。
フェスティバルを訪れる人の視点ってそれぞれ違うんですよね、さきほどのポストシティ・キットが人それぞれであるように。そう考えたときに、どうやってオーディエンスがプロデューサーになっていけるか、というコミュニケーションデザインがすごく重要です。
そう考えると、この会場にはぼくが制作した3つ触媒的プロジェクトがあります。Shadowgram、FOCUS、そして先ほどのポストシティ・キット・スタンプラリー。この3つは、来場者が自分の目線で、自分の力で、ここで感じた自分の物語を編集するための、触発のツールです。
菊地:マイニングツールですね。
それが目抜き通りにいきなり3つ置いてある、という。
小川:おっしゃる通りですね。ポストシティについて考えるためのカタリスト。その触発のツールが公共空間に置いてあるということですね。
菊地:最後に、今後の予定を聞かせて下さい。
小川:このポストシティを日本に持って行く、というのがこれから半年間ぼくがやることかなと思っています。
いま日本も、東京と地方の問題をはじめ、自分たちが住む場所に対してすごく意識が高まっている。先ほどの「レジリエンス」の重要性は、まさに日本が3.11のときに体感した部分だと思うんです。
ポストシティは、アーバンデザインの視点での試みではありません。ポストシティ「キット」という視点を持てば自分自身がアクターとして何ができるかというマインドセットを触発できるのではと思っています。それをポストシティ東京という枠組みのように、ポストシティ(都市名)として様々な場所に展開していきたい。そこでしかできないキットをディスカッションするのが面白いと思うし、ローカルな課題を共有するとともに、世界共通の課題を議論できるかも知れない。そういった場づくりをこの半年間、今回の成果をもとに、日本に展開したいなと思っています。
菊地:それはFUTURE CATALYSTSとしてですか?
小川:そうですね、FUTURE CATALYSTSとしてですね。
仕掛けていきたいなと思っています。
菊地:去年、一昨年くらいに伺っていたお話の通りに、どんどん社会に関わりを、アートシンキングをもって広がっていっているなと感じました。
小川:1年に1回の連載みたいになっていますけど、言っていることは以前からほとんど変わっていないと思います。実践を進めてどんどん形になってきていて、ついには街までつくっちゃった、という感じで(笑)。
菊地:数年をかけたアップデート版という感じもしました。
今年プレゼンでおっしゃっていた、Inspired in Linzというのはすごくわかりやすいと思います。インスピレーションの深さをどんどん追求していると。
小川:Inspired in Linzというのは、Made in Japanと違っていて、そこへの愛着とか、エモーショナルな部分があって。僕はそれはすごく重要だなと思っています。ポイントはInspired in Japan(国)じゃないということ。Inspired in(街)ということです。その地域ユニットと人の関係がやっぱり、重要になっている。街自体が、クリエイターとかイノベーターとかを受け入れる、抱擁する装置としてますます重要性を持っていると思いますね。
菊地:ありがとうございました。
(2015年9月4日 ポストシティ会場にて)
Profile
小川秀明 (おがわ・ひであき)アルスエレクトロニカ フューチャーラボ・クリエイティブカタリスト
Futurelab : http://www.aec.at/futurelab/en/
h.o (エイチドットオー) : http://www.howeb.org/
ogalog : http://ogalog.blog.so-net.ne.jp/
UNIBA INC.
ユニバ株式会社は、”さわれるインターネット(Embodied Virtuality)”の会社です。
インターネットとコンピュータを、道具ではなく、見て、触れて、遊びたおすためのメディアととらえています。
メディアアートとオープンテクノロジに根ざすプロダクションとして、その楽しさを追求しながら、ブランディング、キャンペーン、プロモーションの制作をしています。
http://uniba.jp/