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FITC Tokyo 2013 開催直前特集!その1: oFコミュニティの牽引者たち

January 8, 2013(Tue)|



2011年に引き続き、デジタルクリエイターに大いなる刺激を与えるインターナショナルなクリエイティビティのカンファレンス「FITC Tokyo 2013」が開催される。今回の会場は東京都目黒区の「Claska」。CBCNETでは、このイベントの魅力的な出演者を3回に分けてご紹介。是非会場に会いに来てほしい!

Flashだけじゃない!FITC


“FITC”というと、Flashのイベントというイメージをお持ちの方も多いかもしれない。しかし、近年ではFlashのみならず、革新的なデザインとテクノロジーがテーマになっており、HTML5から3DCG、unityなどのゲーム開発環境、さらにprocessing、openFrameworks(oF)などのオープンソースの開発環境まで、あらゆるデジタルテクノロジーのスピーカーが登場している。

oFコミュニティのスターが勢揃い


今回の「FITC Tokyo 2013」には、世界中で盛り上がるoFコミュニティのスターたちが集結する。全3回の告知記事の第1回は、彼らの活動を紹介しよう。必ず彼らの生のトークを聞きたくなってしまうはずだ。また登壇者がどんな人物か、日本のoFコミュニティの中心人物である真鍋大度、田所淳比嘉了にコメントをもらった。



1. 真鍋大度
http://daito.ws/

日本におけるoFコミュニティのスターと言えば真鍋氏。Perfumeの”Global Site Project”ディレクションや第63回 NHK紅白歌合戦などの演出で大きな話題を呼んだのも記憶に新しい。やくしまるえつこの3Dスキャンミュージックビデオ「ヴィーナスとジーザス」、2011年に発表し、世界中で巡回されているインスタレーション「particles」など数々のプロジェクトでoFを使っている。oF開発者とのコラボレーション・ワークも多く、ザッカリー・リバーマンらYesYesNoによる「Lights on」、「Night Lights」、Kyle Mcdonaldの「Janus Machine」制作に参加。さらにoFの開発者会議にも参加するなど、コミュニティの中心的人物の一人として世界中の開発者に支持される存在である。

今回のテーマは「インタラクションを超えて Beyond Interaction」。自身のプロジェクトにおいては、既製のプラットフォームやインターフェースを利用するだけでなく、オリジナルのツールからプログラムで作ってしまう氏のやり方を事例とともに紹介する。

<比嘉了からのコメント>
前から真鍋さんの作品は色々と知っていて、クールな印象を持っていたのですが実際に会ってみるとものすごいフランクな人でびっくりしたのを覚えています。仕事を一緒にやってみて、技術力の高さはもちろんですが、一番圧倒されたのはやはり「なんでこんな事まで知ってるんだろう…」と思ってしまうほどの知識量ですね。世界中にいるギーク仲間との交流から得られたおもしろトピックだったり、新旧さまざまなテクノロジーやそれら使った作品のことなどめちゃくちゃ詳しくて、なにげなく世間話をしているだけでも刺激になります。あとは常にやりたいことのストックが膨大にある所も凄いです。面白そうな事を思い付くとすぐに実験してストックしておいて、「前こういう実験をしたんだけど」と提案し、いつのまにかプロジェクトになっているということが多いですね。






2. ザッカリー・リバーマン
http://thesystemis.com/

oFの開発者として世界的な知名度を誇るザッカリー・リバーマン。NYブルックリンを拠点に活動し、”ザック”の愛称で愛されるニューメディア・アーティスト/リサーチャー/ハッカーだ。アーティストとして活動しつつ、NYのパーソンズ大学やITP(NY大学)で教育者として教鞭を揮い、世界中のoFワークショップやカンファレンスにてクリエイターを啓蒙しながら、クリエイティブカンパニーYesYesNoにおいてNIKEなどのコマーシャルワークをも手掛けている。もともとoFが生まれたきっかけは、彼の生徒たちに、彼やゴラン・レヴィンがどのように作品を作っているのか分かりやすく教えるコードのセットを作ったこと。美大でc++を教えることは以前は難しかったが、oFを作ることで理系でない美術系の生徒たちも画像解析などを用いた作品を作りやすい環境ができたのだ。

ザックのテーマは「ドローイングマジックムーブメント」。もともと絵を描いていた彼のクリエイティブの根幹にある「ドローイング、マジック、ムーブメント」を結びつけたプロジェクトを中心にセッションする。もちろんoFの現状についても話してくれる予定だ。

<真鍋大度からのコメント>
プログラマはコードを書く楽しみを優先してしまいがちですが、作品を作って人に観てもらうのであれば表現に時間をかけたほうがいい。ザックはそもそもプログラムを書くスピードもすごく早いんですが、そういう「何を大事にするか」というところを熟知しているアーティストでありクリエイターですね。
ザックを始めとしたoFコミュニティの人々、Golan、Kyle、Damian、Joel、Theoと一緒に作業していて楽しいし勉強になったのは映像データを音に変換していく作業。Lights on、Night Lights、JanusMachineではその辺を追求する良い機会でした。ofxDaitoというaddonを通じてデータを送ってもらって、僕はそれを音に変換する作業をしてました。例えばJanusMachineでは数十万個のポイントクラウドの情報を以下の様な感じで送ってもらいgranular synthesisのパラメーターに割り振ってました。

ofxDaito::bang("quaternionChangeAmount",connexionCamera.quaternionChangeAmount);
ofxDaito::bang("zoomChangeAmount",connexionCamera.zoomChangeAmount);
ofxDaito::bang("avgPosition",PS.avgPosition);
ofxDaito::bang("stdDevPosition",PS.stdDevPosition);
ofxDaito::bang("stdDevPositionLength",PS.stdDevPosition.length());
ofxDaito::bang("avgVelocity",PS.avgVelocity);
ofxDaito::bang("stdDevVelocity",PS.stdDevVelocity);
ofxDaito::bang("avgVelocityLength",PS.avgVelocity.length());
ofxDaito::bang("stdDevVelocityLength",PS.stdDevVelocity.length());
ofxDaito::bang("cameraRotation", ofRadToDeg(connexionCamera.amount), connexionCamera.angle.x, connexionCamera.angle.y, connexionCamera.angle.z);

思い出深いのは初めて一緒に手がけた「Lights On」というプロジェクト。(オーストリアのアルスセンターのファサードのLEDパネルをサウンドと同期して光らせるプロジェクト)。ザックが全体のディレクションを、僕が音のインタラクション部分を担当しました。共同制作期間は三日だけ。事前に送られてきていたのはファサードの制御のプロトコルのみでした。楽曲制作は母親や澤井妙治くんにも手伝ってもらって。限られた時間の中でしたが彼らはビールを飲みながらリラックスして開発していたのが印象的です。僕は良く「そんなに集中し過ぎなくても大丈夫だ。無理をしちゃだめだよ。」って言われてましたね(笑)


YesYesNo Video Reel from yesyesno on Vimeo.


lights on from zach lieberman on Vimeo.



3. カイル・マクドナルド
http://kylemcdonald.net/

1985年生まれという若手ながら、いまやoFの中心人物の一人として世界的に注目されるNYブルックリン在住のメディアアーティスト。コンピュータ・サイエンスと哲学をバックグラウンドに持つ彼は、高いプログラミングスキルと豊かなアイデア、的確なコンセプトを用いてインタラクション、ビジュアリゼーションのための3Dセンシングのツール設計からコンセプチュアルなインスタレーション、パフォーマンスまで幅広いジャンルのプロジェクトを手がけている。徹底的にオープンソースであろうとするのもその特徴だ。彼が開発した様々なツールの中でも特に人気なのは、2011年に開発した「Face Substitution Research」。人の顔をトラッキングして、バーチャルなマスクを付けるoFのアドオン「ofxFaceTracker」。また、YCAMで開発したキャリブレーション容易に実現するためのソフトウェア「ProCamToolKit(プロジェクタカメラ・ツールキット)」も重宝されている。これらのプロジェクトを全てオープンソースで公開しているのが彼のやり方だ。


そんなカイルのセッションのテーマは、ズバリ「あらゆるものを公開する方法」。コードやアイデアを共有し、協力して作品を創り上げていくことについて語る。2011年の作品「People Staring at Computers」では、NYのアップルストアに置いてあるコンピュータにプログラムを仕込み、コンピュータを覗く人の画像をアップするなどラディカルな活動をする彼がいったいどんなことを話してくれるのだろうか?

<田所淳からのコメント>
Kyleさんのすごい所は、圧倒的なプログラムのスキルと最新の技術的な動向への嗅覚、さらにアートへの深い知見が高いレベルで同居している点だと思います。プロジェクションマッピングやフェイストラッキング、グリッチ、コンピュータビジョンといった様々なテクノロジーを自由に使いこなして、単なる「技術デモ」ではなく、そこから思考や哲学を反映したアートへと昇華させていく手腕がすごいです。作品の印象から気難しい内向的な人物ではと思っていたら、実際に会うと正反対のとても明るくお茶目なキャラクターで、そのギャップがまた面白いです。最近では、openFrameworksのコミュニティーの運営に深く関わっていて、コミュニティーがスムーズに運営されているのは彼のコミュニケーション力に負う部分が多大です。


Face Substitution from Kyle McDonald on Vimeo.




4. メモ・アクテン
http://msavisuals.com/

ロンドンのビジュアルアーティスト、ミュージシャン、エンジニア。プログラマのステレオタイプから遠く離れたワイルドなイケメンである。oFを使ったプロジェクトでは、ザ・ウォンバッツのミュージックビデオ「TECHNO FAN」を制作。バンドのレーベルが使用拒否したライブ動画をグラフィカルなフッテージに画像処理するoFのカスタムアプリを創り上げ、ロトスコープのような映像をつくりだした。また2011年にはクリエイティブ・スタジオ「Marshmallow Laser Feast」をRobin McNicholas、Barney Steelとともに立ち上げ、16個ものLEDスポットライトと飛ぶロボットが音楽に合わせて空中でパフォーマンスするショー「Simple Harmonic Motion」を創り上げた。

そんな彼のプレゼンテーションは、その名も「クライアントなんて眼中に置かない Fuck Clients.」!個人の自発的なプロジェクトから、コマーシャルワークに至る道程を話してくれる。「クライアントのためでなく、自分自身の喜びのために働いてください。ブランドではなく、経験を積み重ねてください。顧客や消費者ではなく、人々を魅了してください。」というメッセージが染みる。

<真鍋大度からのコメント>
Carnegie Mellon Universityで行われたoFのdevelopers meetingで一緒になって、イケメンでびっくりしました。プロジェクトをバリバリと仕切っていく、兄貴肌という印象です。MSAという彼が作ったライブラリにはお世話になってますね。非常に簡単に使えて、しかもリッチな映像が作れるので色んなところで使われているのを良く目にします。Memo君はコプターのパフォーマンスもそうですが、やりたいなと思っているネタをいつも一歩早く、そしてクオリティも高く実現している印象があります。良くメールでも話す仲ですが、プログラミングの持つ可能性を常に追求して新たな表現を伴う作品を作ってるので気になる存在です。





次回は清水幹太(PARTY http://prty.jp/)らがFITCの魅力を語るインタビュー記事を公開する。乞うご期待!

Text: Akiko Saito

Information

FITC Tokyo 2013
http://fitc.ca/event/tokyo/

開催日:2013年1月26日(土)-27日(日)13:00~18:35
会場:CLASKA (http://www.claska.com/)
東京都目黒区中央町1丁目3−18

チケット販売価格:
一般早期割引 (2013年1月13日まで)
2 day Ticket ¥13,000
1 Day Ticket ¥7,000

学生早期割引
2 day Ticket ¥11,000
1 Day Ticket ¥6,000

スピーカー:
ブランドン・エドワーズ
真鍋 大度
DELTRO INC.
グラント・スキナー
中村 洋基
清水 幹太
カイル・マクドナルド
メモ・アクテン
ポール・トラニー
シャンテル・マーティン
ザッカリー・リバーマン
ボブ・ヒューベル


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