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領域を “TRANS”=超えて、アートの本質に迫る
「3331 TRANS ARTS展」レポート

October 24, 2012(Wed)| Article by Konishi Nanae



千代田区にあるアートスペース、3331 Arts Chiyodaにて開催中の展覧会『3331 TRANS ARTS展』が2012年10月21日(日)オープンした。本展は“TRANS=超える”をテーマに、アーティストのみならずクリエイターのグループ、研究者、建築家など、まさに領域を超えて活動する人々が顔を揃える。

“個”を超えてつながるアーティストたち




エントランス部分には、参加型表現集団「wah document」のこれまでの活動が紹介されている。一般募集した参加者とアイデアを出し合い、「家を持ち上げる」や「校庭に風呂をつくる」といった突飛に思えるものを本当に実現してしまうのが彼らの特徴。最初は誰かの頭の中にしかなかったアイデアが、様々なプロセスを共有していくことで“作品”になっていく。アイデアが誰のものかなどの問題ではなく、アイデアがかたちになるときのゾクゾクする感覚こそが、「アーティスト」「参加者」という枠組みを超えてプロジェクトに関わる人たちをつないでいくのだ。

ハジメテン『ハジメテンのハジメテン』

飯川雄大、梅佳代、金氏撤平、川島小鳥、小橋陽介、西光祐輔、パトリック・ツァイの写真家、美術家、画家などによるアーティストグループ「ハジメテン」は、“7人ではじめてする”をかたちにしていく。本展では、2010年那須動物王国で行われた「スペクタクル・イン・ザ・ファーム」のインスタレーションを再構築したものに加え、3331 Arts Chiyoda内を探検して見つけたものや、梅佳代が子どもたちと会話したり、7人ではじめて鰻を捌く映像も展示されている。


領域を超えて生まれる新しい価値


本展には領域や業界のルールを横断・拡張しながら、新しいコンテンツや価値を創造するクリエイターたちも参加している。

展示を覗き込んでいるのは本展に参加している面白法人カヤック、どくろ興業のおふたり

伊藤直樹、原野守弘、清水幹太、中村洋基、川村真司によって設立された「PARTY」は、“新しい創造は、新しいプロセスから生まれる”をモットーにユニークなクリエイティブプロセスを実践している。本展で展示されているのは3Dスキャナーによって撮影されたポートレートをフィギュア化する『OMOTE3D SHASHINKAN』。「こんなものつくる必要ないのかもしれないが、こんなものがあったらどうか? という提案をしていきたい。その上でこれまでのシステムやプロセスを変えることに挑戦し続けたい」と伊藤氏は語る。


JKD Collective『Synchronized Drops』

音と映像を高次元で融合させ、アートと商業の垣根を超えるコンテンツを生み出す「JKD Collective」はインタラクティブ・インスタレーションを展示。これはスペースシャワーTVのステーションIDからのスピンオフ・インスタレーションとなっている。

スペースシャワーTVのステーションID動画


メイキング動画


展示会場のスピーカーからは人間の耳には聞こえない低周波が流れており、その周波数と同一のフレームレートにセッティングされたカメラで流れる水を撮影すると、水が止まったり逆流したりして見える。鑑賞者はその水に触れ、周波数を変えて水の表情をコントロールすることができ、新感覚の“ウォーターDJ”を体験することができる。


研究から生まれる“TRANS”の種




これまで学会や有識者など一部の人々にしか触れる機会のなかった専門的な研究分野。それを10万人が中継視聴する開かれたコンテンツにまで押し上げたのが「ニコニコ学会β」だ。ニコファーレを再現した本展のインスタレーションでは、ユーザーが投稿したコメントに埋もれる独特な感覚を追体験できる。


BCL(福原志保+Georg Tremmel)『Common Flowers/White Out』

科学と芸術の両方から“生命とは何か?”という問いに向き合うのは、バイオアート制作研究グループ「BIOART.JP」だ。デジタルメディアとしての植物をハックするユニットBCLは、遺伝子組み換えによって誕生した青紫色カーネーションを用い、人間の手によって書き加えられた遺伝子情報を削除し、本来の白色カーネーションに戻そうと試みる。


『3331 TRANS ARTS展』に潜む、現代のコード


私たちの前に立ちはだかる問題ひとつを取っても、複雑な要因が絡み合い、多角的な解決策が求められる。つまり、目の前の壁は“TRANS”しなければ乗り越えることができないのだ。既存のシステムや枠組みを自在に超えて活動する彼らの姿や作品からは、今の時代を象徴するコードが潜んでいるように思える。そのコードをその目でぜひとも読み取ってもらいたい。

会期は12月02日(日)まで。
会期中、参加者らによるトークなどの関連イベントも予定されているので合わせて参加したい。

Article by Konishi Nanae

Information

3331 TRANS ARTS 展
http://ta.3331.jp/

3331 Arts Chiyoda 1Fメインギャラリー
東京都千代田区外神田6丁目11-14

日程:2012年10月21日(日)〜2012年12月02日(日)
時間:12:00-19:00
休み:火曜日
料金:大人800円/学生500円/中学生以下無料

<参加団体>
PARTY/ハジメテン/BIOART.JP/contact Gonzo/ニコニコ学会β/Liverty/JKD Collective/ドリフターズ・インターナショナル/assistant/どくろ興業/面白法人カヤック/wah document/greenz.jp(トークイベント参加)

<関連イベント>
■ ドリフターズ大運動会
2012年11月18日(日)11:00開場 11:30開会(18:00終了予定)
http://drifters-intl.org/

■ 3331 TRANS ARTS 展+クラフト|エネルギーの学校 展 ジョイントトーク
2012年11月10日(土)17:00-19:00
“TRANS ARTS”とは何か Part.2 「Transするaction」
参加費:一般 2,000円 学生 1,000円(入場料込み)
パネリスト:リズ(ウーバーモルゲン)/江渡浩一郎(ニコニコ学会β)/金森 香(NPO法人ドリフターズ・インターナショナル)
モデレーター:四方幸子(『クラフト|エネルギーの学校』展キュレーター)

■ “TRANS ARTS”とは何か Part.3 「逸脱し、越境するTRANS ARTS」
2012年11月24日(土)17:00-19:00
参加費:一般 2,000円 学生 1,000円(入場料込み)
パネリスト:家入一真(Liverty)/久保田晃弘(BIOART.JP)/野崎錬太郎(面白法人カヤック企画部・演出部 CREATOR)
モデレーター:久木元 拓(3331 Arts Chiyoda 本展ディレクター)

■ “TRANS ARTS”とは何か Part.4 「TRANSする空間感覚と快楽」
2012年12月02日(日)15:00-17:00
参加費:一般 2,000円 学生 1,000円(入場料込み)
パネリスト:江渡浩一郎(ニコニコ学会β)/有山 宙(assistant)/南川憲二(wah document)/関根光才(JKD Collective)
モデレーター:久木元 拓(3331 Arts Chiyoda 本展ディレクター)


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