東京・京橋のギャラリー「ASK? Art Space Kimura」にて、アニメーション作家、水尻自子の個展「わからないでもない感触」が開催中。新作アニメーション「幕」を含む作品の上映と販売を行っている。

水尻自子は1984年、青森県十和田市生まれの作家。女子美術大学在学中に描きためたドローイングを、伊藤ガビン氏の勧めでアニメーションにしたことがきっかけで映像作家になった。2013年の作品「かまくら」は「ファントーシュ国際アニメーション映画祭」での受賞や「ベルリン国際映画祭」では短編コンペティション部門に正式出品されるなど、国際的な評価も高い。

本展覧会で上映されているのは、水尻がここ数年取り組んできた「感触とそれによる連鎖」を軸にした「布団」(2012年)、「かまくら」(2013年)、「幕」(2014年)の三部作。ショートケーキの上のイチゴ、滴る水滴、カウンターの上のお寿司など、たわいのないモチーフがゆっくりとつながっていく。布団に入ったときや、靴下を脱いだとき。誰もが感じたことがある、生理的な気持ちよさを丁寧に、じっくりと描いたアニメーション作品だ。

今回公開された新作アニメーション「幕」は、3部作を締めくくる作品。

「このテーマの締めくくりとなる新作は、狂言の舞台・眼科の診察室・寿司屋という三つの空間のそれぞれの動きが微妙に絡み合い、繋がっていく作品です。向かい合う二人が目の前にいる相手に感じる感触を、やさしく、柔らかく、表現します。」(水尻自子)

狂言の舞台・眼科の診察室・寿司屋は水尻にとって関わりが深い場所。ふとこの3箇所を繋げてみたいと思いついたことが、この作品の着想。そこから、ひたすら「感覚的な気持ちよさ」を追求し、アニメーションを作っていった。

新作においては、なにげない日常の所作というモチーフ前作までと変わらないが、現実では繋がっていない場所をつなげること、また二者のコミュニケーションというテーマなど、これまでにないアプローチが見られる意欲作である。
音楽は蓮沼執太。狂言のモチーフに合わせて邦楽の要素も取り入れたかのような、ただの効果音でも、BGMでもない、作品に寄り添う音像になっている。

「水尻さんの新作は新しいことにチャレンジしようとしてる姿勢が伺えました。アニメーションから伺える抽象と具象を行き来するニュアンスを音楽的にトレースしました。」
(蓮沼執太)

水尻は作品ごとに音楽家を自らオファーし、完成した作品を渡して彼らにすべて委ねるというスタイルを取っているそうだ。これまでの「布団」では福原まり&戸田誠司が、「かまくら」ではトクサシケンゴが音楽を担当。それぞれの音楽家とアニメーションの関係性を見比べるのも面白い。

会場では、アニメーションの上映に加え、「布団」と「幕」の原画販売、書き下ろし1点ものショートアニメをデジタルフォトフレームに入れての販売も行っている。ぜひ訪れて、体験してほしい展示だ。

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via http://imoredy.tumblr.com/

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Information

水尻自子「わからないでもない感触」展
http://www2.kb2-unet.ocn.ne.jp/ask/2014/mizushiri_yoriko.html

2014年8月25日(月) ~ 9月6日(土)
open : 11:30~19:00 (最終日は17:00まで)
会場 : art space kimura ASK?(2F)
http://www2.kb2-unet.ocn.ne.jp/ask/2014/mizushiri_yoriko.html