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photo: Daniel Karl Fidelis Fuchs

京都を舞台に世界各地から先鋭的な舞台作品を紹介する、国際舞台芸術フェスティバル「KYOTO EXPERIMENT(キョウト エクスペリメント)」にて、池田亮司の待望の新作パフォーマンス『superposition』が日本初演を迎える。

池田はパリを拠点に世界的に活躍する、電子音楽家でヴィジュアル・アーティスト。昨年のKYOTO EXPERIMENT でも、オーディオヴィジュアル・コンサート『datamatics [ver.2.0]』を発表。昨年11月にパリ・ポンピドゥーセンターで初演された「superposition」の新シリーズは、量子力学や量子情報理論を作品化しようとする野心的なプロジェクト。そのパフォーマンス版となる本作では、池田の作品では初の試みとなる生身の身体(2 名のパフォーマー)がステージに登場。合計22 面のスクリーンが奥行きをもって配置され、ステージ上のすべての構成要素―サウンド、ヴィジュアル、物理現象、数学的概念、人間の行為そして無作為性― は、重ね合わせ(superposition)の状態となっていく。その崇高かつ圧倒的な空間体験は、池田流の〈世界〉への触れ方に違いない。

公演は10月25日、26日の合計3公演となる。ぜひこの機会に体験したいパフォーマンスとなるだろう。

また、KYOTO EXPERIMENT 2013の公式プログラムとなる10作品の詳細も公開となったので、こちらも合わせてチェックしてほしい。

KYOTO EXPERIMENT 2013 作品・チケット情報公開
http://kyoto-ex.jp/info/7998/

※リリースより抜粋
アーティストステートメント:

新プロジェクト「superposition」は、情報の新たな概念「量子情報」に関する芸術的探求である。

古典情報の言語は「BIT(Binary Digits)/ビット」、それは「0 または1」であり(二進法)、われわれの判断や論理的思考を成す、最も根本的な構成要素である。
量子情報の言語は「QUBIT(Quantum Binary Digits)/キュービット(量子ビット)」、それは「0 と1 が同時に重ね合っている状態」であり、光子や電子の振舞いといった原子より小さな(素粒子の)極小スケールにおいて、われわれ人間が自然の本当の姿を捉えるための新たな方法論である。

われわれが原子より小さな粒子を観察しようとするとき、その位置と速度を同時に知ることは不可能である。位置を知ろうとすると、その位置の情報は知り得るものの、速度に関する情報は失ってしまうからである。位置を特定される前の粒子は、実際にすべての可能な位置に同時に偏在していたのであり、これを「量子重ね合わせ状態」と呼ぶ。つまり、われわれの観測という働きかけそれ自体が、その位置を固定してしまうのである。この考えは、驚くほどに反直感的で、人間の知性と理解の範囲を超えている。われわれは、自然の本質的な姿を知ることはできない。原子より小さな極小スケールにおいては、自然が呈する無限の様相のうち、一つのパラメータの一つの値しか知り得ないのである。

BIT はデジタル。QUBIT はアナログ ー 自然への類似(analogous)という意味において。
BIT は離散的。QUBIT は連続的 ー 連続体。
量子コンピューティングとは、量子ビットの言語を用いていかに素粒子が振舞うかを読み取ることである。つまり、自然は演算し、人間はそれを解読する。

自然は常に偏在している。われわれは、科学的な見識と態度をもって、何とか自然の本質を脱神秘化し、努めて客観的に理解しようとするが、しかし、われわれ人間も自然の一部であり、一つの原子から宇宙まで、自然そのものは想像を絶するほど広大である。難解なコードは依然として解かれないままであろうし、そもそもそれは人間の理解を永遠に超えたものかもしれない。

「superposition」は、こうした考えにインスパイアされ、無謀にも、まるでドン・キホーテのごとく、アートを通じてこの新しい情報のあり方を探求する試みである。
池田亮司


レビュー:

平川紀道・徳山知永・大西義人らによるスマートなヴィジュアルのプログラミングは、池田亮司のグリッチなサウンドといいコントラストを成している。池田亮司のグリッチなサウンドといいコントラストを成している。そのサウンドにも驚くべきディテールがほどこされていて、低い周波数から始まり、徐々に人の耳で聞こえる「音」へと変化していく。
超低音波を用いるのは、人々の動揺を掻き立てるためだろうか。ここに、池田のテクノロジーと人間の関係に対するメッセージが込められている。実際、本作では池田の作品では初めて、生身の人間が登場する。ステファン・ギャランとアメリ・グルウが、舞台上に置かれた長い机の両端からモールス信号でスクリーンにメッセージを送ったり、音叉を用いて音波をスクリーン上に視覚化したりする。イメージとサウンドの速度が一緒になって加速する中、人間の存在が尺度のバロメーターになっている。スクリーン上に無数の閃光がうごめく渦中にあって、2人のパフォーマーは地に足がついているとみるか、情報の波に押し流されているとみるかは、みる人次第だろう。
―ルイーズ・グレイ 『The Arts Desk』 バービカン公演レビューより抜粋・編集




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photo: Daniel Karl Fidelis Fuchs

Infomation

KYOTO EXPERIMENT 2013
http://kyoto-ex.jp/

公演名: 『superposition』

プレスリリース:
http://kyoto-ex.jp/wp-content/blogs.dir/1/files/kex2013_ryojiikeda_press-release_0711.pdf

日 時:10 月25 日(金) 19:30-
     10 月26 日(土) 14:30-◎, 19:30-  

会 場:
京都芸術劇場 春秋座
京都市左京区北白川瓜生山2-116 京都造形芸術大学内 京都芸術劇場  
※地下鉄烏丸線「北大路駅」(北大路バスターミナル)より、
市バス204 系統「高野・銀閣寺」ゆき「上終町京都造形芸大前」下車すぐ

上演時間:70 分

チケット料金:
[指定席]
一般      前売 ¥3,500 /当日 ¥4,000
ユース・学生  前売 ¥3,000 /当日 ¥3,500
シニア     前売 ¥3,000 /当日 ¥3,500
高校生以下   前売 ¥1,000 /当日 ¥1,000 
※ユースは25 歳以下、シニアは65 歳以上
年齢制限など:未就学児入場不可。本作品は強いストロボと重低音・高周波を使用いたしておりますので、 心臓の弱い方やペースメーカーをご使用の方などはご遠慮下さい。

2013 年8 月2 日(金) 11:00 より前売開始
・KYOTO EXPERIMENT チケットセンター(11:00-20:00 、8/4-9/22 は日曜休)
 窓口|京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2 京都芸術センター2F
 Tel |075-213-0820 
 オンライン(要事前登録)| http://kyoto-ex.jp( PC)  http://kyoto-ex.jp/m( Mobile)
・京都芸術センター(10:00-20:00) 窓口販売のみ
・チケットぴあ Tel|0570-02-9999 Web|http://t.pia.jp [P コード:430-480]

<先行予約>
受付期間:2013/7/18(木)12:00~13/7/22(月)18:00 プレオーダー受付
受付URL:
http://eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002104122P0050001P006001P0030001

「“量子の新世紀” のアート&サイエンス」
日時:10 月 27 日( 日) 17:00-
会場:京都芸術劇場 春秋座
出演:池田亮司、佐藤文隆(甲南大学/京都大学名誉教授)、丸山善宏(オックスフォード大学)、
浅田彰(京都造形芸術大学) 
料金:無料(申込不要)
主催:京都造形芸術大学大学院学術研究センター
共催:京都造形芸術大学舞台芸術研究センター、KYOTO EXPERIMENT


コンセプト、ディレクション、ミュージック:池田亮司
出演:ステファン・ギャラン、アメリ・グルウ
プログラミング、グラフィック、コンピューターシステム:徳山知永、平川紀道、大西義人
オプティカル・デバイス:平川紀道
ステージ・マネージャー :サイモン・マッコール
テクニカル・マネージャー:徳山知永
プロダクションアシスタント:関根大輔
製作: Ryoji Ikeda Studio(クリエイティブ・ディレクター:エマニュエル・ドゥ・モン
ガゾン、アドミニストレーション:桧垣優子)、 Quaternaire(プロデューサー、マネー
ジャー:サラ・フォード、アソシエート・プロデューサー:ローリー・アップリチャー
ド、アドミニストレーション:キャスリーン・アレトン、コーディネーター、マーケティ
ング:ジョアンナ・リウセック)、Forma(アーティスティックディレクション:デヴィッ
ド・メトカーフ)
世界初演: 2012 年11 月14-16 日 ポンピドゥーセンター[フェスティバル・ドートンヌ]
プレ上演: 2012 年8 月5 日 ZKM(カールスルーエ)にて
委嘱:フェスティバル・ドートンヌ(音楽部門)
クリエーションサポート: Parc de La Villette(パリ)、山口情報芸術センター(山口)、
ZKM(カールスルーエ)
共同製作:フェスティバル・ドートンヌ、Les Spectacles Vivants – Centre Pompidou (パ
リ)、バービカン・センター( ロンドン)、Concertgebouw Brugge(ブルージュ)、
Festival de Marseille _ danse et arts multiples(マルセイユ)、KYOTO EXPERIMENT、
Parc de La Villette(パリ)、STRP アート・アンド・テクノロジーフェスティバル(ア
イントホーフェン)、ZKM(カールスルーエ)
助成:DICRéAM-CNC(フランス)
主催:KYOTO EXPERIMENT