クリエイティブスペース「amu」(所在地:渋谷区恵比寿)にて、2011年10月5日(水)~10月9日 (日)の5日間、ユーザー起点のイノベーションであるインクルーシブデザインを伝える『共感するイノベーションインクルーシブデザインー10年の歩み』展が開催される。

インクルーシブデザインとは、年齢、ジェンダー、障がいに関係なく、すべての人々を含むデザインのプロセスで、かつビジネスとして成り立つデザインを目指す考え方。

本展示は「トレーディング・プレーシズ(交流の場)」の名で、2010年5月から6月にかけてロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館で、12月にボストンの人間中心デザイン研究所で開催された企画展示で、日本では初めての紹介となる。

その内容はヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン(Helen Hamlyn Centre for Design)の上席特別研究員、ジュリア・カセム氏が企画し、第一線のデザイナーの団体である英国デザインビジネス協会(DBA: Design Business Association)と毎年共同で開催して来た、「DBAデザインチャレンジ」の10年の歩みをまとめたもの。

2000年にスタートした「DBAデザインチャレンジ」は、デザイナー、デザインパートナーとしての障がい者らの多様な人々がいっしょになってイノベーティブかつインクルーシブな商品やサービス、コミュニケーションデザインや環境デザインの提案を行ってきた。

その目的は特別なデザインではなく、われわれ全員にとって有益なデザインの開発。同じ考え方に基づいた48時間や24時間デザインチャレンジは、これまでボストン、香港、ダブリン、エルサレムをはじめとする世界12都市で開催された。
デザインチャレンジのユニークな特徴は、デザインパートナーの発見に満ちた日常生活と、1000人を超えるこれまで参加したデザイナーのイノベーティブな発想のマッチングにある。これらのデザインチャレンジ・ ワークショップは、デザインと障がい者の両方の世界に大きな影響を与た。

日本では国際ユニヴァーサルデザイン会議などでデザインマラソンが行われているが、その源流となるのがジュリア・カセム氏によるこのような活動だ。本展示ではその全貌を展示し、デザイナーを始め、企業や教育機関、一般の方々へ、インクルーシブデザインとは何か、どのような考え方に基づくか、広く知ってもらうことを目的としている。東京での展示では、それに加えボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエボ、クロアチアのザグレブでの2つの革新的なワークショップの特別展示も行われる。

また会期中、同会場にて、講演会やギャラリートーク、ワークショップなど関連プログラムも開催予定。


左:《クッション「モー」》デザイン:マター(デザイン事務所)
右:《ミルクマン》デザイン:ファクトリーデザイン(デザイン事務所)

Information

◆『共感するイノベーション インクルーシブデザインー10年の歩み』展
http://www.a-m-u.jp/event/2011/10/inclusive-design.html

【開催日時】2011 年10 月5 日(水)~10 月9 日(日) 11:00 – 20:00
【会場】クリエイティブスペース「amu」(渋谷区恵比寿西1-17-2)

【主催】インクルーシブデザイン研究所
【共催】九州大学 / ヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザイン / ブリティッシュ・カウンシル /
株式会社AZホールディングス
【後援】Design Business Association / Kulturanti / University of Zagreb

【関連プログラム】
◎セミナー(ジュリア・カセム氏他講演、ディスカッション)
10/ 7(金) 15 : 00 – 18 : 00
セミナー終了後18 : 30 – 20 : 00まで、レセプションパーティーを行います。
◎ジュリア・カセム氏によるギャラリートーク
10/ 9(日) 13 : 00 – / 15 : 00 – / 18 : 00 –
◎オープンテーブル(スタッフとインクルーシブデザインについて話すテーブルです)
10/ 5(水)、10/ 6(木)、 10/ 8(土) 13 : 00 – 14 : 00 / 19 : 00 – 20 : 00
※レセプションパーティーのみ有料1,500円
※すべてamuウェブサイトより事前お申し込み制

【インクルーシブデザインとは】

これまでデザインのメインターゲットから除外(エクスクルード: exclude)されてきた人々を、積極的にデザインプロセスの上流工程へ包含(インクルード: include)し、かつ、ビジネスとして成り立つデザインを目指す考え方。ユニバーサルデザインが、障害者や高齢者に標準をあわせながら、全ての人にとって利用可能な、製品や環境を想定しているのに対し、インクルーシブデザインは、年齢、ジェンダー、障がいに関係なく、すべての人々を含むデザインのプロセスとして区別される。

【メインスピーカー】

◆ジュリア・カセム(Julia Cassim)
英国王立芸術大学院(RCA)ヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザインのシニアリサーチフェロー。文筆家、デザイナー、研究者として、当初は感覚障害や学習障害を持つ人々が認知的また身体的に鑑賞できる美術工芸品の美術館コレクション作りを中心にキャリアを展開。1971年から1998年まで日本で過ごし、視覚障害を持つ人々のために、美術館所蔵の美術工芸品を鑑賞する方法を研究する非営利団体、アクセス・ビジョンを設立。 また視覚障害や学習障害を持つ人々のための展覧会を手がけ、数々の賞を受賞。
1998年に英国へ戻り、ヘレン・ハムリン・センター・フォー・デザインに入る。2000年以降は、イノベーションや包括的思考(インクルーシブシンキング)を刺激するものとしてのデザインプロセスに障害を持つ人々を参加させることや、インクルーシブデザインの方法論に関する知識をデザイン界や実業界に移転させることを中心に、研究を展開している。
日本での著書「光の中へーー視覚障害者の美術館・博物館アクセス」(1998年、小学館刊)

【ファシリテーター】

◆平井康之 (Yasuyuki Hirai)
九州大学大学院 芸術工学研究院 デザインストラテジー部門 准教授。 専門はインクルーシブデザインとワークプレイスを中心としたスペースデザイン、空間プロダクト。具体的なものづくりから戦略的空間プランニングまでのデザインプロジェクトや、ユーザーを中心とした企画段階からのユーザー参加型デザインプロセスを研究、 実践する。
1992年英国王立芸術大学院(RCA)修士課程修了。コクヨ(株)設計部、オフィス家具開発部、商品戦略グループ、アイデオ・プロダクト・ディベロプメント(米国)シニアデザイナーを経て2000年九州芸術工科大学助教授、2006年九州大学准教授、現在に至る。著書に「インクルーシブデザイン・ハンドブック」(全体監修・共著、2006年、たんぽぽの家)がある。