連載第二回目、随分と間が空いてしまいましたが今回は、twitterでも良く話題になっていたアート二次利用問題についてとりあげたいと思います。
YouTubeの出現以降、動画を観ながら打ち合わせをするということが多くなり、毎回デモを作っていた時代を考えると、便利になったとつくづく思います。新しいネタ集めもtwitterでちょこちょこっとフォローしておけば十分過ぎる程仕入れることが出来ます。後はtwitter - > YouTubeで仕入れたネタをプロジェクトごとにカスタマイズ。そのクオリティで"インスパイア"なのか"パクリ"なのかが評価されますが、パクリと評価されればあっという間に広まってさらし者になります。恐ろしい時代ですね。
しかし、類似プロジェクトがあるということ自体は非常に興味深いことなので、以下に私の知る範囲でピックアップしてみました。
#もしも、他にもあったら教えて頂けると嬉しいです。
※YouTube、Vimeoの動画はLightBox内で表示されます。

Kinetic sculpture

ART+COM : Website

Space chair

Space Chair Project(2009)
プロジェクションマッピング

G-SHOCK MAN(2009)
GPSドローイング

Urbanized Typeface : Shibuya08-09 (2009)
http://yang02.org/kml/shibuya/
「The world is my canvas」Nokia N82 バイラルサイト(2008)
コマ撮り

The PEN Story(2009)
大型プロジェクション

Night Lights (2009)
http://yesyesno.com/night-lights
Big Shadow(2006)
http://www.bigshadow.jp/
移動プロジェクション

nike(2009)
WildLife by Karolina Sobecka(2006)
http://www.flightphase.com/about.html
顔マスク

WE ARE AUTOBOTS - Transformers Augmented Reality(2009)
ミシン x twitter

NIKE TASUKI TWITTER test movie (2009)
顔(身体)電気

Cadbury Eyebrows(2009)
electric stimulus to face -test3 (2008)
The Varieties of Human Facial Expression. 12 bit version
Arthur Elsenaar and Remko Scha (1997)
Color Shadow

TRICERATOPS - GOING TO THE MOON (2009)
加速度センサー(ADXL202) x 迷路

コロリンパ(2008)
G-Display(1999)
(参考:コロコロカービィ開発秘話)
http://www.1101.com/nintendo/nin15/nin15_1.htm
(参考:Marble Maddness Atari (1984) )
http://www.youtube.com/watch?v=vMYibbzJlVs
ボール x 楽器

Pipe Music
ART+COMのKinetic SculptureやJeff + DanのAbsolutet Quartetを初め、制作者本人に連絡をして許可を取ったり、インスパイアされたオリジナルをクレジットしたり、プレゼンテーションで表明することが実際には多いと思います。ですが、中には手柄を独り占めしようとしてtwitterで炎上した後にクレジットを掲載することもありますね。
「単純に知らなかっただけ」という場合や、「誰もが考えるアイディアだった」ということも数多くあると思います。
「テクノロジーの使い道なんて、結局みんな同じことばかり考えるのだから、いかに早く、そして規模を大きく出来るかというのが問題なんだよねぇ」という某メディアアーティストの言葉を思い出します。
オリジナルサイド
制作者本人からすると、クレジットが無かったとしても「逆に宣伝になってよかった」という場合の方が多い様です。
私に関して言えば、顔の電気のプロジェクトはお菓子の広告で似た様なモノが出て来ましたが、全然違う使われ方をしていたので特に何とも思っていません。結果、海外の代理店からは質問メールがたくさん来ましたし、ブログ等でも取り上げてもらえたので、それはそれで良かったと思っています。VICEの様に攻撃的なコメントを書いて頂ける場合もあります。(笑)
http://www.viceland.com/jp/v5n9/htdocs/index.php
さらに私自身の例を挙げると、TRICERATOPSのPVは実際に制作に関わっています。一方で、Nikeのタスキプロジェクトは私と石橋素氏は関わっていませんが、ライゾマティクスのwebチームが制作に関わっていたりします。今後は同じ人がアート版も広告版も手がけている、というものが出てくるかもしれませんね。まずはtwitter上で「あのプロジェクトはパクリだ!」と炎上させ、広めておいてから実態を明かす。そんな方法もありそうです。
現状
そして私自身の現状で言えば、「自腹を切って(会社研究費で)アートプロジェクトで制作をした後、それを広告に使う」ということが理想的な展開。YouTubeにアップされているプロジェクトを何かで使いたい、というのは大歓迎です。自分で考えたアイディアを独占したい!という人もいるでしょうが、私としては、他の人のアイディアや技術が加わることで、それらにまた違った可能性や展開が見えてくると考えています。誰かに「インスパイアされた」と言って頂ける様な作品を作ることができたら、それはもう最高です。
最後に
(ニュー)メディアアートや、テクノロジーを面白く使った目新しい映像は、広告においては特別な威力を発揮するのでインスパイアされるケースが多いのは当然なのですが、本来アートの面白いところは「映像作品やらキャンペーンイベントのネタやらを提供する」ということではなく、新しいプラットフォームやコミュニケーションの可能性を提示出来る点だと思います。実際に未来を予測し、社会生活に落とし込まれたニューメディアアート作品も数多くありますが、その辺のことはGolan Levin氏のエッセイが素晴らしくまとまっているので是非チェックしてみてください。
Flong Blog + News ≫ Blog Archive ≫
New Media Artworks: Prequels to Everyday Life
http://www.flong.com/blog/archives/334
また、メディアアート作品を制作しながら、広告のプロジェクトも90年代後半から数多くこなしている盟友石橋素氏のコメントを最後に貼っておきます。
「実は、僕自身、同じようなことをやっている作品を見たり誰かが似たようなことをやっているのを見ることは、実は嫌いではないです。自分の考えていたことが間違ってなかったと証明してもらったような気分になるから。
G-Displayの時も、やっぱり面白いと思うよねそうだよね、という感覚の方が強かったのです。アートとしてきっかけを与えられた新しい技術や哲学、テクノロジーとのかかわり方が、製品やプロダクトなど、よりコンシューマー向けのものに落とし込まれていく場合、作品を一発作るパワーとはまた全然違ったパワーが必要になります。
アート制作が短距離走なら、プロダクトはマラソンでしょうか。普段短距離ばかり走っている自分としては、マラソンを走る選手は尊敬に値します。広告とアートが微妙な立場になりがちなのは、お互いに短距離走者だからかもしれません。アートが短距離というのはおかしい、アートは本来100年残るものであるべきだ、という意見もあると思います。でも、広告でも、本当に素晴らしいものは、いつまでも残っています。広告でもアートでも、そういうものを作りたいと、日々思います。」
- 石橋素
http://www.motoi.ws/