Home > Dots & Lines > 岡部 修三

"まち"のこと #01 PS1 summer party

August 27, 2007
Shuzo Okabe
upsetters architectsの岡部修三によるコラム。第一回目はニューヨークのクイーンズにある、P.S.1で毎年夏に行われている、サマーパーティについて。

Colum #1- Okabe Shuzo ( upsetters architects )
はじめまして。upsetters architectsの岡部です。普段、"建築家"と名乗って活動しています。
私は、"都市における様々な活動"を、デザインの対象としているため、建築家=建物を建てると言うこととは異なる活動に多く関わっています。単純に、技術者として、デザイナーとしての建築家には、個人的なこだわりは当然あるとしても、それほど重要な意味があるとは思っていません。ただ、コンピューターが発達してその意味自体が変化したとしても、"ひと"と"まち"とを繋げているものは建築である事実は変わらないのではないかと考えています。
そういう意味で、多岐にわたる活動に対して、"ひと"と"まち"の関係についてデザインすると言う立ち位置を明確にするため、建築家と名乗っているのです。

ここでは、出来る限り、単純に情報としても面白い、タイムリーな事例をもとに、自分たちが生活している"まち"について考えると言う視点に、建築の分野以外のひとにもふれてもらえればと思っています。なぜなら、CBCNETを取り巻く環境は、これからの"まち"を考える、新しいパワーを秘めているように感じるからです。


"まち"のこと #01 PS1 summer party

第一回目は、ニューヨークのクイーンズにある、P.S.1で毎年夏に行われている、サマーパーティについて書いてみたいと思う。
P.S.1は、2000年からMOMAと提携したコンテンポラリーアートの美術館で、小学校の建物をリノベーションして使っていることでも有名な場所であり、訪れたことのある人も結構いるのではないかと思う。そのP.S.1の中庭で、毎年夏になるとパーティが行われ、盛り上がっていると言う話はちらほら聞いていたが、実際その情報について、日本にいながら伺い知ることの出来るメディアはほとんど無かった。


shuzo_column_01_02.jpg
スプリンクラーで放水が行われる

昨年PS1を訪れたときには日程が合わず、泣く泣くフライヤーだけを持って帰ったのだが、覚えているだけでも、Danny Krivit、Derrick May、Francois Kevorkian、Rub N Tug、Carl Craig、IDJUT BOYS、と言った豪華と言うだけではなく、本当の意味でその時代を的確に捉えたラインナップにイメージばかりが膨らむのであった。

それだけではない。このプロジェクトは、毎年若手の建築家を対象としたコンペによって空間デザインが行われていて、その内容をチェックするのも毎年の楽しみであった。過去には、SHoP Architects PC (http://www.shoparc.com/)、OBRA Architect (http://www.obraarchitects.com/)など、その後更なる活躍を続けている事務所が名前を並べている。

今年のデザインはball-nogues (http://www.ball-nogues.com/)によるLIQUID SKY。僕たちが行った日のDJはDENNIS FERRER(http://www.myspace.com/dennisferrer)とTHE MARTINEZ BROTHERS(http://www.myspace.com/themartinezbros)。

15~21時の時間帯で行われているこのイベント、遅い時間になると、会場を一周するほどの行列ができると聞いていた僕たちは、15時丁度に会場入りした。

shuzo_column_01_03.jpg

ball-noguesによる会場のデザインは日よけと、ハンモックの構成。晴天に映える半透明のピンクの日よけに、時折スプリンクラーによる放水が行われていた。一時間もすると、フロアは程よくあたたまり、5時に差し掛かる頃には、DENNIS FERRERがフロアを覆い尽くしたオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んでいた。キャパは6500人だと言う。

ここでとても、興味深いのが、遊びにきている多くの人が、DJが誰であるかをほとんど気にしていないし、誰が空間をデザインしたのかも知らないようであった。あくまでも主役はその瞬間の、その場所そのものである。

フロアと隣り合わせのハンモックでは、持ち込んだスケッチブックに絵を書いていたり、奥の方では子供づれの家族が水遊びをしていたりする。ここでは音楽も空間デザインも、あくまでもおもてなしの一つであり、P.S.1によってセレクトされたそれぞれの要素を背景に、それぞれが気ままに時間を過ごしている。まさにこのパーティは開かれた"まち"の一部になっていた。
ここには、専門的なウンチクでも、"カッコイイ"や"美しい"と言うことでもない、別の重要なベクトルが確実にあるようだった。そう、"まち"をデザインすると言うことは、何も大手ディペロッパーだけの領域ではないのだ。

(つづく)


shuzo_column_01_01.jpg
ball-noguesによる日よけとハンモックのデザイン

http://www.wps1.org/のサイトにて、アートフェアのレポートやインタビュー、DJミックスがポッドキャストで聞けます。

Links




PAGETOP