Khoi Vinh氏は、ウェブサイト版ニューヨーク・タイムズのデザインディレクター。デザインニュースサイト「A Brief Message」の共同設立者だ。
見ていただければわかるが、他のニュースサイトと異なっているのは、 すべてのエントリーが簡潔に「アートディレクション」されているところ。CSSとHTMLのテクニックで、明確なグリッドシステム上にたくみな組み合わせでバランスをとれる流動性のあるレイアウト。デザインの大事な要素としてのイラストと文章を結びつけて、その週のトピックによってレイアウトを変えている。
2005年まで、Vinh氏はさまざまな賞に輝いたNYのウェブデザイン会社「Behavior」の共同設立者だった。「Behavior」が担当したサイト「The Onion」のリニューアルは、しっかりとしたタイポグラフィーと精密なグリッドシステム、明確な階層構造といったグラフィックデザインの基本で、最新のスタイルと高いユーザビリティを打ち出せることを立証したいい例だ。彼のサイトは、時にいくつかの色とフォントのみを使用して、複雑な情報構造とレイアウトに変化を与えてることを可能にしている。
「A Brief Message」に対する一般の反応は賞賛するものがほとんど。内容の簡潔さと先鋭的であるというだけではなく、レイアウトとレイアウトの物語性に考えを向けたという発想にある。ユーザビリティ、ウェブスタンダード、アクセシビリティのための論争に勝った今、これは確かにウェブの発展への次のステップだといえるだろう。
Interveiw & Text by Chris Palmieri
自身のサイト「Subtraction」で、「A Brief Message」の理念を拝見しました。「飾られたデータベースを超えて、アートディレクションをウェブに持ち込もう」。このアイデアのインスピレーションは何でしたか?
「A Brief Message」 はグラフィックデザインの価値観をウェブに持ち込む実験です。雑誌のようにイラストレーターとコラボレーションしながら1ページ1ページのデザインを内容を反射したビジュアルにすること。でも、ウェブの仕組みは雑誌と違うので、できないこともありますね。可能でも不可能でも、ウェブという媒体の進化に影響を及ぼすならば、やってみる価直はあると思いました。
それで、実際にグラフィックデザイン技術をウェブに当てはめようとしたとき、「ウェブの仕組み」のどこが合わないと感じましたか?
「A Brief Message」では、こういったイラストやレイアウトを活かした物語性を含むビジュアルに価値があると宣伝しているのだけれど、頑固に強要しているわけではない。全ての記事がRSS(Atom)で全文を読めるし、ビジュアルはCSSや邪魔にならないHTMLで、セマンティック的にコーディングを書いている。
結局は内容が一番なので、「A Brief Message」で良いイラストを使うことに投資してはいるけれど、もしも視聴者が「内容にしか興味ない」と言われても、それが失敗だとは思わない。そう言われないといいけど、でも内容が視聴者の心に響けば嬉しいです。
「A Brief Message」では、短めの記事とゆっくりとした更新ペースなので、ひとつに時間をかけられると思いますが、それは「NYTimes.com」のワーキングスタイルとは正反対なことですね。「NYTimes.com」ほどの巨大サイトでのデザイン活動のどこが特別なところですか。
Vinh:要するに、全てが大きい。コンテンツも多くて、バリエーションがもっと必要で、関係者も多い。仕事をうまく進めるために人と良い関係を築くことが大切になる。大勢と効率的に仕事するにはそれがデザインプロセスの最も大事なことだと思います。
「NYTimes.com」の仕事を始めた頃に、Vinhさんの得意分野と「NYTimes.com」のデザインチャレンジの共通なところは、「大量のテキストをできるだけ飾りを使わず上品にデザインすること」と説明されました。最近行ったプロジェクトで、そのようなプロジェクトは何かありましたか。
将来に目を向けて、「A Brief Message」のようにアートディレクション性の高いサイトがもっと日常的につくられるようなテクノロジーや展開を何かご存知ですか。
Vinh:技術的な障害だけが問題だと考えがちな人が多いですね。InDesignのようにウェブを自由にレイアウトできるWYSIWYGソフト待ちだとか。まだ兆しは見えてないけど、もしできたらウェブをアートディレクション的にアプローチするには必須になるだろうと思います。
しかし、テクノロジーよりもっと重要なのは経済的継続性だと考えています。現在はオンラインでアートディレクションに力を入れる経済的な効果がない。企業は、すべてを素早くしなくてはならないから、公開する前にアートディレクション段階を挟む余地がない。オンラインメディアは経済的にもまだ初期段階だからね。でも、オンライン系の企業が従業員にもうすこしゆとりを与えられれば、アートディレクションの需要が上がると思います。
将来に、このアートディレクションの流れで何か新しいプロジェクトありますか。
Vinh:もちろんあるんだけど、まだ秘密です!
Thanks Khoi!