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紙も電子もメディア問わず販売するリアル書店イベント『TRANS BOOKS』主催者インタビュー

November 12, 2018(Mon)|



昨年11月4日と5日の二日間、東京・神保町のTAM COWORKING TOKYOで開催されたブックフェア『TRANS BOOKS』が今年も開催される。

会場は同じく神保町のTAM COWORKING TOKYO。期間は2018年11月24日(土)、25日(日)の二日間にわたり、昨年とは参加メンバーを一新。都築響一 ROADSIDERS、飯田竜太、パーフェクトロン、福永信+仲村健太郎、新津保建秀ほかジャンルを超えた編集者/アーティスト/デザイナーらが集結し、それぞれが「本」と「読書」の可能性を実験的に考える作品を販売する。

『TRANS BOOKS』とは、「メディア何でも書店」をコンセプトに、本と本を取り巻く体験の多様性、可能性や面白さを、もっと楽しんでもらう、考えてもらう場を目指すブックフェアである。『いま、どんな形式の「本」や読書体験があり得るか』ーーこのテーマに意欲的に取り組んでもらえる作家に本作りを依頼して制作された新刊や、既に発行されている既刊本などをセレクトして会場で販売する。昨年は24組のアーティスト、デザイナーらが出展。作家らによるZINEなどのほか、ゲームエンジンで作られた写真集やVR体験など、まさにメディアに捉われない本が多数出展された。今回は主催者である飯沢未央、畑ユリエ、萩原俊矢にイベントのきっかけや出展作品、今後の展望について話を聞いた。



2017年開催時の会場

昨年のグラフィック


―― まず最初に、開催のきっかけを教えてください。

畑:開催のきっかけは、飯沢さんとiPhoneのホーム画面を集める本「somebody’s room」(https://somebodysroom.tumblr.com/)を2016年に3331 Arts Chiyodaで開催されたインターネットヤミ市で販売したのですが、周りから反響があり、これからはどうやってこの本を売っていくか考えたときに、「インターネットヤミ市でも、面白い本をいくつか見つけたし、それらを含めて自分たちで売るイベントを開催すればいいのでは?」と飯沢さんに提案したことがきっかけとなっています。


somebody’s room

飯沢:萩原くんにも入ってもらいたくて、声をかけました。萩原くんは、インターネット ヤミ市の運営メンバーをずっと続けているので、イベント運営の経験が豊富というのと、彼自身、本が好きというのを前から知っていて。例えば、「蒲田処女小説文藝大賞」という小説を書いたことがない人がはじめてかいた小説を即売するイベントを開催したり、本人も読書家であることを前から知っていたので、「ぜひ参加して欲しい!」と思い、声をかけました。

畑:そうして3人での運営体制になった後、イベントを作っていく上で、一番時間がかかったのはコンセプトを決めるところでしたね。

飯沢:最初は“紙でも電子書籍でもない、「非電子書籍」を販売するイベントにしてはどうか”という畑さんの提案からコンセプトを考え始めました。

畑:電子書籍というメディアついては、2010年くらいに電子書籍元年と呼ばれた時がありましたが、そこから7〜8年経った今ならではの書籍と読者の関係があると思っています。このイベントも、はじめは「電子書籍だけを」とか「紙の本だけを」とか話していたのですが、電子とか紙とかで区切るのではなく、その垣根が曖昧になっているものを販売できる本屋さんはどうか、となって。

飯沢:結局、本というメディアそのものを問いかけるコンセプトになりました。いまはアナログ回帰的な風潮もあるし、紙を捨てて電子メディアにいくと思いきやそうでもない、という宙ぶらりんな状況にあるので。

萩原:文芸評論家の前田塁さんが2009年に『紙の本が亡びるとき?』という本を書いていらっしゃいましたが、いまのところ紙の本は減ったかもしれませんが、すたれていないですね。電子書籍は確実に広がってきていて、noteやツイッターが紙とは「別の読み物」として確立しているけど、いまも「紙の本を出しました!」と聞くとすごいことのように感じる。面白い時期ですね。

畑:時間とともに、本とメディアの関係性もゆるやかに変わっていくんだろうと思います。

飯沢:現状、電子も紙のメディアもそれぞれの良さによって選ばれている、ということが今は自然になっていますしね。紙も電子もメディア問わずに販売しているリアル書店があれば面白いかなと。

萩原:このイベントは、自然にやりたかったんです。わざとらしく、「問題提起だ!」みたいな感じにはしたくなかった。


出展者の選び方




―― 出展者の皆さんは、どういう基準で選んでいったのでしょうか?

萩原:僕たちのやりたいことが「あいまいなこと」だったので、そんなお題を投げても形にしてくれる人たちを選びました。自分たちが面白いと思っている状況を、わかってくれる人に出てほしかった。

飯沢:この手のイベントは出展者が身内ばかりになってしまいがちだから、内輪の良さも出しつつ、ちょっと外側にも広げる、という塩梅で人選しました。

萩原:メディアアーティストやデザイナーの比率が大きくなっていますが、意識的に、漫画家、雑誌編集者、グラフィックデザイナー、古書店など、本にまつわる人にお声がけしました。

飯沢:大御所から若い人まで、世代も揃えられたのが良かったと思います。(松本)弦人さんとか、永原(康史)さんのような経験値の高い人も入ってくれて、厚みが出たなと。永原さんは、TRANS BOOKSの告知を出したときに、ずっと作ってきたE-paperの作品を出したいとご連絡を頂き、急遽出展が決まったんです(笑)。皆さん、お題には真摯に対応してくれました。一番最初に声をかけたのは、菅(俊一)さんと荒牧(悠)さんで、すぐに「やります」と言ってもらえたのは嬉しかった。

飯沢:彼女はこの提案をしたときに、「私、シールブックやりたいんですよね」と話していて、そのプランを崩さずに展示まで持ってきてくれました。そうやって、皆さんほとんどこのイベントのために新作を作ってくれたんです。



永原康史「When reading」


荒牧悠「SEAL BOOK」


菅俊一「正しくは、想像するしかない」



販売した本について

畑:コ本やさんは「環七舟」というバスの中で上映された物語をVRで再現していて、その体験を販売していました。会場では本公演でチケットとして、また鑑賞者が音を聞くための端末として配布していたという、牡蠣の貝殻と種も販売していましたね。


コ本や × 小宮花店 「環七舟」


萩原:紙で綴じている、という体裁でないものは、田中(良治)さんのようにメルマガ方式というものもありましたね。メルマガではなく、図版はWebサイトにアップされていて、パブリックに見られる。けれど、その裏側の言葉とか本文は全部プライベートなメールで届くものになっている。メルマガをアップデートしている感じがありました。



田中良治「Everything But The Internet」

飯沢:てらおか現象さんの本はファンが来場して、早々と売り切れましたね。

畑:元々、声をかけたのは、彼がWebで発表している漫画は、コマ割りの漫画なんだけどgifアニで動く部分があるなど、映像的な面白い表現があったことが気になっていました。

飯沢:展示はインスタレーションになっているし、ファブリケーションの要素も入っていて、本を通じて色々な要素が入っているのが面白かったですね。実際にものをつくる過程や、出来たものも面白いし。

萩原:あのズラしも意図的なんだろうなと。

畑:鈴木哲生さんは、文字のように見えるものを描いて、それを束ねると本になるのか、という実験的な作品だったんですが、本を本たらしめているもの・文字が文字たらしめているものは何なのかということに新鮮な発見がありました。本に乗るコンテンツがあって本となるのではなく、本というコンテナから考え、何が乗っていたら乗り物になるのかという、逆方向の矢印が、TRANS BOOKS的だなと感じました。


てらおか現象「公式なしで歯車を作る雑な技術書」


鈴木哲生 『        』

飯沢:(松本)弦人さんの作品は、古本で購入した写真集を自分で半分に断裁して、小口や表紙をペイントしただけで、別の違うものとして仕立て上げていて、本当にすごいセンスだなと思いました。

畑:大胆なようで、すごく細かくコントロールして作っているんですよね。

飯沢:一昔前のグラビアの写真集本を切って、それがよりかっこよくなって、値段も跳ね上がるとか、そこに何かが起こっているじゃないですか。風景写真ではなく、あえて、グラビア写真集を選んでをバサッと切って。本から別の本に変わるという行為が面白い。


松本弦人 「断裁本」

萩原:そういった「メディア性」を直接表現してくれた人もいれば、谷口(暁彦)くん、千絵さんの作品は、 3DCGで作られたバーチャルの世界の中に置かれている写真集を実際にプリントアウトしたもので、バーチャルなのかリアルなのか、自分がどこにいるのかがわからなくなるんですよね。その状況を本という形態に落とし込んだのは面白かったですね。

畑:塚田(哲也、大日本タイポ組合)さんも新作で。ワーグナー・プロジェクトという高山明さんのプロジェクトのメモ帳集を出版されていました。塚田さんご本人がメディア横断系の人なので面白かった。

萩原:アーティスツブックエキシビジョンは、新津保(建秀)さんにお声がけしたことがきっかけで、参加してくださいました。 TRANS BOOKS と同じようなテーマの企画があるというのは同時代的で興味深いです。


谷口暁彦・谷口千絵「nothing happens」


ワーグナー・クルー「WAGNER CREW NOTEBOOK」



買う体験の強さ



畑:今回のイベントでは、作家本人が売るというスタイルではなく、レジで販売するというスタイルにしたんですが、皆さん喜んでくれて。買いやすいという意見は頂きました。みんな実は対面が苦手だったんだ、っていう。

飯沢:「レジに持っていって買う」という体験としての強さってありますよね。ものを買ったという高揚感というか。

萩原:対面のブースだと、気軽に立ち読みできないし、本をそっと戻すときにリアクションしなきゃいけない、と気を使ってしまいますよね (笑)。

飯沢:コンセプトから「書店」という言葉を入れていたので、自然と展示とレジを設ける形態になりました。

萩原:だから、僕たちは書店員として会場を回りました。来てくれている人に説明するタイミングが難しかった。今回は入場料もなければ出展作家から出展料も取らないし、手数料もないという形態にしましたが、商売にしちゃうと、結局、アウトプットが縮こまっちゃうというか、商売っぽくなっていっちゃうのが心配だったんです。そのために、会場を無料でお借りしたり、CBCNETさんに協賛してもらったり、いろいろ支えられて成り立っているイベントでしたね。

飯沢:イベントを続けていくんだったら、ビジネスのことは考えなくちゃいけないですね。

畑:儲けたいと思っているわけではないですが、でもあまりにも予算がないと運営が疲弊してしまうから、お互いが気持ちよくなれる形を次回はもっと考えたいですね。


——次回11月に行われる『TRANS BOOKS』の構想は?

畑:前回お呼びできなかったような方に幅広くお声がけする予定です。規模を大きくするというよりも、参加していただく方の幅を広げられると、より面白いかなと思っています。ご期待下さい!


昨年のレポートはCBCNETで公開中(http://www.cbc-net.com/topic/2017/12/trans-books-report/)。今年さらにアップデートされた『TRANS BOOKS』は必見!



text & interviewer: Akiko Saito
会場風景写真: 市岡 祐次郎
作品写真: 土田 祐介

Profile

飯沢未央
アーティスト/会社員。時間と生命についての、哲学・科学・美学的リサーチと考察を背景として、電子デバイス、映像作品、空間インスタレーションなど、多彩な作品を制作してきた。 が、最近は本の制作に興味が移行。最新作は市販のチキンからDNAを取得し、元の鶏の性別を判定し、アーカイブした「the Male or Female」を発表。現在は生命の個体差、個性に着目し、次回作に向けてリサーチ中。TRANS BOOKSでは出展者とのコミュニケーションなど、イベント運営に伴い発生する諸々な業務を担当。
http://iimio.com/

畑ユリエ
グラフィックデザイナー。美術関連の展覧会/教育普及/作品集などのアートディレクション・デザインを行う。TRANS BOOKSにおいても、グラフィックデザイン全般を担当。アートディレクション側からコンセプトを考え、毎年違うクリエイティブの提案を行う。
http://www.hatayurie.com/

萩原俊矢
プログラムとデザインの領域を横断的に活動しているウェブデザイナー/プログラマ。ウェブデザインやネットアートの分野を中心に企画・設計・ディレクション・実装・デザイン・運用など、制作にかかわる仕事を包括的におこなう。2015 年より多摩美術大学統合デザイン学科非常勤講師。 Cooked 、 flapper3 、 cbc-net 、 IDPW などいくつかの団体にも所属。TRANS BOOKSのウェブサイトの制作も担当。斬新なレスポンシブサイトが毎回話題を呼んでいる。
http://shunyahagiwara.com/


開催情報

「TRANS BOOKS」
https://transbooks.center/2018/
日程:2018年11月24日(土)、25日(日)
入場料:無料
オープン:11:00〜18:30
トークイベント:24日(土) 18:30〜(予定)
※トークイベントは有料になります

会場:TAM COWORKING TOKYO (神保町)
https://www.tam-tam.co.jp/coworking/
住所:〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3-28-9三東ビル1F

◎出展作家一覧(敬称略)
・阿児つばさ、雨宮庸介、飯沢未央、梅田哲也、九鬼みずほ、さわひらき、辰巳量平、西光祐輔、hyslom、船川翔司、松井美耶子、山本麻紀子、柳本牧紀(船先案内人)
・飯田竜太 (彫刻家・美術家)
・伊東友子+時里充(制作・執筆+アーティスト)
・UMISHIBAURA(パブリッシャー)
・edition.nord consultancy + poncotan w&g (本作りの相談業務+レーザープリント印刷・製本工房)
・olo(架空紙幣作家)
・齋藤祐平(古書店員)
・mmm(サンマロ)(解釈者)
・鹿(会社員)
・新津保建秀(写真家)
・stone(テキストエディタ)
・TADA+STUDIO PT.(Photographer+Design Studio)
・永田康祐(アーティスト)
・Hand Saw Press(リソグラフ印刷スタジオ)
・パーフェクトロン(アートユニット)
・hitode909(プログラマー)
・福永信+仲村健太郎(小説家+グラフィックデザイナー・ブックデザイナー)
・PROTOROOM(MetaMedia Collective)
・山中澪+池亜佐美(アニメーション作家)
・ROADSIDERS 都築響一(有料メールマガジン発行 / 編集者・写真家)
・youpy(プログラマ)
・渡邉朋也(美術家 / タレント)


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