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実存しない彫刻が爆砕 ー 世界最高峰のVR劇場でのオーディオビジュアルイベント『VRDG+H』レポート

April 1, 2016(Fri)|

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目の前には存在するように見えるが、実際には存在しない。すべてはデータが作り上げた幻影である。VR(ヴァーチャルリアリティ)は、日本語では「人工現実感」あるいは「仮想現実」といわれる。今年はVR用の機材が数多く発売され、VR元年といわれて騒がしい。そんな中、VR専門の劇場で新気鋭のアーティストたちによって、音楽と合わせた映像表現に挑むイベント『VRDG+H』が開催された。

こちらの動画はその模様のショートドキュメントだ。



常設ホログラフィック劇場「DMM VR THEATER」


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会場は横浜駅にある「DMM VR THEATER」。会場名に耳慣れない人も多いと思うが、ここはオープンして間もない世界初の常設ホログラフィック劇場。ペッパーズゴースト型ホログラム投影装置が常設され、3DCGで制作された映像が立体的に、しかも高解像度で投影される。まさにここでしか鑑賞できない視覚体験が楽しめる。

この規模のVRイベントは初の試みで、出演アーティストは数カ月前から会場に通い詰め、綿密に準備が行われた。そのリハーサルでの動画が、Twitterで5000RT以上されて話題となり、チケットは売り切れで当日は満席。観客、演者ともに熱気を感じる場となった。VRと音楽のコラボレーションという希少な場を、出演アーティスト順にレポートする。


文:髙岡謙太郎(@takaoka)
写真:Satoru Fueki

Keijiro Takahashi x DUB-Russell


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ステージに立つDUB-Russellが鳴らす、けたたましいキックの音が響くたびに、前方に女神のギリシャ彫刻が二体浮かび上がる。楽曲のグリッチ音に合わせて、CGエフェクトが出現して女神像を過剰にまとわりつく。女神像はドット絵に変化するなどゲーム的なエフェクトが多く加えられ、暴力的な音と多様な映像エフェクトによって、女神像を過剰に傷めつけるが、CGゆえに瞬時に再生される。彫刻という壊れないものを壊す、現実感のあるCGを歪ませる快感に身震いさせられた。

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本作の製作期間中、自宅で作業する際は簡易リグを作りテストを行って映像の調整していたという。もちろん会場の方が映像を投影するクオリティが高いが、作品の精度を上げるために事前の創意工夫がなされている。それとGithubにデータが上がっているので、見て欲しい。
https://github.com/keijiro/Mirage

会場の「DMM VR THEATER」は、映画館を元に作られ、着席して鑑賞するスタイル。ライブイベントやダンスミュージックの枠組みではなく、映画のように映像鑑賞に集中できる。初のVR体験を目の当たりにしたオーディエンス。ライヴ中、会場は静まり返り、終演とともに拍手が自然と湧き上がった。転換の合間に、VR映像を間近で見ようとしてステージ前には人集りができていた。

Akihiko Taniguchi


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Akihiko Taniguchi本人がステージ上に登壇すると、3Dスキャンされた本人のアバターが投影され、客席から笑いが立ち込める。バーチャル3D空間を歩くアバターを操作しながら、自作の詩の朗読が行われた。内容は「鑑賞に対する考察」。本人曰く「紙芝居的な」パフォーマンスとのことで、ぼそぼそとマイクで喋る朗読音声には、会場の9.1chサラウンドの音響設備が活用された。

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アバターの大きさに比べて、3D空間の構成要素が不自然でシュール。ゲームのオブジェクトのように見えない部分が剥ぎ取られた3Dスキャンされた建物の一部や、洗濯物の山、巨大なノートPCなど、高解像度でリアリティが高いオブジェクトが点在する空間。スキャンされた日用品が降り注ぐシーンや、酸素のないはずの宇宙空間で焚き火をするシーンなど、現実感と違和感のバランスが絶妙な世界観に思わず見入ってしまった。

「3Dデータは複数のまなざしの集合体である」という詩の内容もあって、この後の演者の映像に対しての向き合い方を考えさせられる演目であった。また、Akihiko Taniguchiも、Keijiro Takahashiのtweetの影響を受け、制作過程で簡易リグでテストを行ったという。下記の動画が同じ演目だが、当日はVR用に手が加えられていた。




DAIMAOU x wk[es]


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坂本渉太と吉田恭之による映像ユニット、DAIMAOU。ファニーなキャラクターたち(犬、きつね、たぬき、スーパーヒーロー、大仏など)が、音に合わせて小刻みに投影される。「汁」「大魔王」の文字が大写しされたり、マンガの効果音のタイポグラフィが突如現れたりで、ナンセンスの集合体といえる映像が笑いへと誘導させる。wk[es]による、クールでソリッドなエレクトロニック・ミュージックとの組み合わせがアンビバレント。

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ステージ上の照明も点灯して高揚感を煽りはじめ、中盤から宙に浮いた3Dのアニメの少女が主役となって、空中で引き伸ばされたり、放り投げられたり、分裂したり。CGだから可能な、人を人として扱わない扱いの面白みが楽しめた。ただ、音と映像がどういったコンセプトで合わさっているのか終始考えさせられたが、そこにはなにもなく、なにもなさを楽しむように思えた。


Daihei Shibata x FEMM


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エンターテイメントに振りきれていたのは、このアクト。転換中、ゴシックロリータの衣装を纏った人形二体が、ステージに運ばれる。楽曲と映像が流れ始めると、直立した人形が実は人間で突如踊り出した。まさに手の込んだ演出。この二人組のFEMM、意思を持つマネキン「RiRi(リリ)」と「LuLa (ルラ)」からなるダンス・デュオ。

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映像作家のDaihei SHIBATAによる映像は作りこまれた世界観で、曲ごとにテーマが変わり、音楽シミュレーションゲームを模した映像や、演者の前に投影された歌詞の文字が宙を舞う映像など。EDM、エレクトロハウスなどのダンスミュージックに合わせて、ふたりの洋楽のようなヴォーカルが乗り、アップリフティングなステージとなった。当日リハーサルでは立ち位置を調整するなど、演者と映像との同期を綿密に行われ、寸分狂いのないショーケースといえる内容で、完成度の高さに息を呑んだ。


HEXPIXELS x KEIZOmachine!


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KezzardrixとSatoru Higaによる映像ユニットHEX PIXELSと、HIFANAのメンバーでもあるKEIZOmachine!の共演。ステージ上に立ったKEIZOmachine!が、ミドルスクールヒップホップマナーに基づいたビートに、スクラッチを交えながらカオシレーターでエフェクトを掛ける。その即興性を重視したライヴパフォーマンスに合わせて、アブストラクトなCGがリアルタイムで同期。途中から3D迷路を徘徊するアバターが混ざったり、設置されたカメラも連動し始める。360度カメラRICOH THETAでステージ全景、GoProでKEIZOmachine!の手元、モニターブースに立てられたPanasonic DMG-CH4で遠影の映像が、リアルタイムで盛り込まれて虚実入り乱れる。

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中盤、一転して高周波のベースラインがけたたましく唸るUSのダブステップが流れ、モノクロのサイケデリックな映像が絡み、ステージ上のKEIZOmachine!に覆いかぶさる映像の隙間から、本人が見えたり見えなかったり。最後、ファミコンのゲーム「スーパーマリオブラザーズ」をサンプリングした音と映像がテーマとなり、コントローラーのボタンを押すたびに音と映像がループ。ゲームのコントローラーをサンプラーのパッドのように扱い、ビートを変えてステージ前に現れ、客を煽って拍手とともに終演となった。

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情報過多の映像によってブレインダンス

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イベント全体を通して各出演者に共通することは、情報量の多さや多様な手法によって、何が行われているのかが瞬時に認識しきれない内容が多数だったこと。投影された映像の構造を知ろうとする知的な快楽と音響的な快楽が同期して、脳内の思考をヒートアップさせて興奮せざろうえない瞬間を堪能。映像の真偽を疑いながら、ブレインダンスをさせられる快楽に浸れた。「もう少し見たい」「次も観たいな」といった余韻のある、各者20分ずつのタイトな出演時間も功を奏したように思える。今回、高水準のVRを肉眼で目撃できた人々によって、今後はより洗練された作品が生まれるはずだ。


Infromation


vrdg_flyerVRDG+H
http://brdg.tokyo/

日時:3/26 (土) Open:17:00 / Start:18:00
会場:DMM VR Theater
http://www.dmm.com/theater/index.html
主催:HIP LAND MUSIC CORPORATION
企画・制作:HIP LAND MUSIC CORPORATION / BRDG
協力:DMM.futureworks

<出演者>
HEXPIXELS X KEIZOmachine!
Keijiro Takahashi X DUB-Russell
Daihei Shibata X FEMM
Akihiko Taniguchi
DAIMAOU X wk[es]


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