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台湾と日本を繋ぐデザインフェスティバルが開催
「Ensouler Design Festival」の10日間

September 24, 2015(Thu)|

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文/庄野祐輔
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台湾と日本の関係が歴史的に深いものだということを知っている人は多いだろう。東日本大震災の時、台湾の人々が手厚い援助を行ってくれたことも記憶に新しい。しかし彼らの人々の日本に対する気持ちには、親日と一言で表現しきれないものがある。それが一体なんなのか、10日間ほどの滞在で少しだけ垣間見ることができた。

台湾へ渡航するきっかけはリンさんという人物との出会だった。友人の紹介で自己紹介のつもりで会いに行った上野のカフェで、彼は常に笑いを絶やさない。彼はこの夏、台湾でデザインフェスティバルを行うのだという。それも参加するのは若い人たちばかりで、映画祭などを手がけてきたプロデューサーの彼にとってもはじめての試みであった。

彼の「それでは台湾に来てくれますか」という言葉に、誘われるがままに台湾へと向かうことになった。そこらじゅうに甘い食べ物の匂いが漂い、片言の日本語を話す人々がたくさんいる国。異国でありながらも、どこか懐かしさを感じるのはアジアという共通項があるからだろうか。それでいて、彼らは自分たちの歴史や文化の核を、しっかり手離さないでいるように見えた。

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フェスティバルの会場は金融街の中心に位置する誠品書店信義店。誠品書店は24時間経営の書店として始まり、現在では100万以上とも言われる書籍のラインナップだけでなく、雑貨、食品、家具など選りすぐられたさまざまな洗練された商品が並ぶ巨大なストア。台湾で最も知的なスポットして、世界のプロフェッショナルからの視察が絶えない。日本の蔦屋書店に影響を与えたことでも知られる、カルチャーの発信地である。

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その最上階にあるのが、145坪の展示用のスペースと、フォーラムが開催できる客席の設置されたスペースだ。そのスペースを最大限に用いて行われたのがデザインフェスティバル「Ensouler Design Festival」だった。その「Ensouler」とは「魂を吹き込む人」という造語で、優秀なデザイナーは、魅力的な作品を生み出すだけではなく、個性や魂を込めることによりブランドと社会の架け橋になるものだという思いが込められている。展示は「平面作品」「ブランドアイデンティティ」から構成され、作品を鑑賞するだけではなくデザイナーの思考や制作過程を観客たちに示すことが意図されていた。開催初日のオープニングセレモニーで、CMYKの4色のインキをフェスティバルの看板に注ぎ込むパフォーマンスの様子が新聞の一面に取り上げられるなど、台湾中の多くのメディアから注目を集めた。

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オープニングセレモニーでの、CMYK4色のインキをフェスティバルの看板に注ぎ込むパフォーマンス

10日間の開催の間には、さまざまなテーマでフォーラムが連日のように開催され、ものづくりの世界に貪欲な若者たちが多く集った。また夜にはクリエイターやVIPを招いたパーティが会場を移して行われた。クリエイターが自分の活動を報告するスピーチを行い、熱心に意見交換や交流が行われていた。台北中の看板や並木をなぎ倒して去っていった台風のために、後半の日程は中止になってしまったのだが。台湾の人々はとにかく写真撮るのが好きなようで、フェスティバルのために作られたパネルを背景に、主催者や登壇者たちと次々と記念撮影を行っていたのが印象的だった。

今回の展示には多くの日本の作家も招かれている。Behance Japan Tokyo Communityから参加していたのは、広島をベースに活動するIC4 Design、羊毛を用いた彫刻作品を制作する澁木智宏や、イラストレーターの牧かほりなど。企業とのさまざまなコラボレーションプロジェクトを手がけるSpeakerの西山眞司も参加した。

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日本の作家が集められたセクションの展示風景

台湾のクリエイターの作品で目に留まったのは、デザイン事務所のFive Metal Shop。地元の漁業メーカーをリ・ブランディングした実例を展示しており、CIだけでなく写真やイラストなどを洗練されたイメージで統合したウェブサイトや冊子などを制作。ローカリティを残しながらも、そのブランドにグローバルなクオリティを付加することに成功していた。

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Five Metal Shop 展示風景

また、フェスティバルのCMも製作したK4s Motion Studioの映像は、短い尺を繰り返すGIFアニメの特性を利用したシュールさの中にも笑いが込められている作品。普段の映像仕事をまとめたショーリールも非常にクオリティが高く、台湾モーショングラフィック界の国境を越えたパワーとエネルギーを感じさせてくれた。

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K4s Motion Studioが展示していたGIFアニメの作品


K4s Motion Studioが製作したフェスティバルのCM

他にも書籍のデザインやイラストレーション、プロダクツからCIの事例までさまざまなクリエイションが並ぶ。とりとめがないようにも見えるが、台湾を彩る異なる方向性を生のまま展示空間に閉じ込めた見本市のようなものと考えれば、その雑多さも合点が行く。夜のパーティでの、台湾のクリエイターたちのとてもまっすぐな、また誇らしげなプレゼンテーションを聞いて、語ることを避けがちな日本人との落差を感じながらも、伝えようとする意思を持つことの大事さも改めて思い知らされた。

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海外、それも初めての国となればなんらかのカルチャーショックを受けることは多いが、滞在10日間の中でとりわけ印象に残ったのは台湾の人々の私たちに接してくれる姿勢の優しさだった。
台湾には日本人が統治時代に作ったという建物がたくさん残っていて、またその時代の影響により上の世代には日本語が話せる人々が多い。そうした事実は有名だが、さまざまな場所やタイミングで、そうした日本と台湾との繋がりの歴史についての逸話を聞かせてもらう機会があった。自分よりも年下であろう台湾の若者たちから、そうした話を聞かされるたびに、彼らの文化の中に多くの日本が痕跡を残しているということを知った。その歴史にはきっと良い面も悪い面もあっただろう。しかしすくなくとも、それが台湾と私たちを繋いでいるひとつの縁なのだと思った。その縁を彼らは大切にしてくれていて、僕はそのことについて無知であったことを少し申し訳なく思った。しかしその縁が、知らないうちに日本と台湾の間をさまざまな形でつなぎ合わせ、人と人を出会わせている。そのことについて私たちよりも深く理解しているのが台湾の人々なのだということが、この旅で分かったことである。


Information

Ensouler Design Festival
http://www.edf.com.tw
期間:2015年7月31日~8月9日
会場:台北誠品信義店六樓展演廳 

Profile

庄野祐輔
1976 年、兵庫県生まれ。
デザイナー/編集者。 在学中に音楽雑誌「COLLIDER」を創刊・発行。 卒業後はフリーランスの立場でデザインと編集の二軸を中心に活動。 デザインでは、ファッションのクライアントをメインに、 編集では、クリエイティブ全般に関する書籍の企画制作を行っている。 世界のインターネット文化の情報を伝えるインディペンデントマガジン「MASSAGE」を不定期で発行する。
http://www.yusukeshono.com
http://www.themassage.jp


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