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「映像とは何か?」第4回恵比寿映像祭

February 16, 2012(Thu)|



東京・恵比寿の東京都写真美術館にて、恒例となった映像祭「恵比寿映像祭」が開幕。第四回目となる今回は、2012年2月10日(金)から、2月26日(日)までの15日間の開催。今年のテーマは「映像のフィジカル」。そのテーマの通り、映像の豊かさと奥行きを「物質性」と「身体性」の両面から捉え、作品が目白押し。ぜひ実際に訪れ、体験してほしいフェスティバルになっている。

写真美術館で映像祭をする理由


そもそも東京都写真美術館は、写真と映像の総合的な美術館。彼らが”映像祭”を行う理由は、映像のあり方や需要が多面的になっている現在、映像という言葉をより広く解釈して紹介し、新しい未来を拓きたいという思いがある。

今年「物質性」と「身体性」というテーマを据えたのには東日本大震災の経験が反映されている(パンフレット序文のジョナス・メカスからのメッセージは目頭が熱くなるものがある)。さらに「建築」、「映像アーカイブ」というサブテーマも掲げ、裏方であるハードウェアにも脚光を当てるなど、複合的なキュレーションで多くの人に楽しんでもらえる催しになっている。参加アーティスト111名という大規模フェスティバルの見どころを紹介しよう。

第4回恵比寿映像祭の見所


恵比寿映像祭は、本会場となる東京都写真美術館全体を使った大規模なフェスティバルだ。3階、2階、地下1階の展示室と恵比寿ガーデンプレイスの広場においてインスタレーション作品を展示している。

エキソニモ「The EyeWalker(ジ・アイウォーカー)」




The EyeWriterのシステムもバージョンアップ
している
エキソニモのインスタレーション「The EyeWalker」は映像と身体性をテーマにした、大規模でラディカルな作品。YCAMで2011年10月から展示された「The EyeWalker」をさらに拡張している(YCAMバージョンについてはこちらの記事を参照)。

恵比寿ガーデンプレイスの広場に描かれた大きな目の中に、真っ白な箱がいくつか設置されている。箱にはビデオカメラとモニターが入っており、カメラの映像が写されている。体験者用のブースには大きなモニタがあり、会場の映像が映されている。体験者はモニタを”見る”ことで会場にあるモニターの映像をサーフィンしていく。視線のみで操作するのは今までにない新しい体験だ。


恵比寿ガーデンプレイスの各所にカメラと
モニタが設置されており、美術館の中にも
こうしたブースがある。
「人はモニタを見る時、それを向こう側の景色だと知覚しているけど、実際に見ているのはモニタという物質です。それが映像の面白いところでもあるし、危ないところでもある。映像の持っている魔力を極端に増幅することで気づいてほしい。いまの時代はどこにでもカメラがある。映像に見たり見られたりするのが当たり前になっている。見る、見られる映像の関係が公共空間で体験することで明確になっている」(千房)

「映像は見るものだが、この作品では視線は同時にインターフェイスになっている。見たいものを見ると、選択してしまい違う場所の映像へ移ってしまう。そこに感じる気持ち悪さがあり、『見る』ということを改めて考えることができると思う」(赤岩)

大規模なインスタレーションになっており、なかなか見ることが出来ない作品、ぜひこの機会に体験してほしい。

カロリン・ツニッス&ブラム・スナイダ―ス Sitd「RE:」



変身・リフレクションという意味を持つ「RE:」というタイトル。最近のトレンドにもなっている「プロジェクションマッピング」を用いている。この作品は昨年ポーランドで開催されたWROでも展示されていた。(WROでの展示風景はこちら
3枚のミラーから跳ね返った光で、プロジェクターそのものにプロジェクターの映像を投影し、バーチャルとフィジカルが重なり合う特異な世界観を生み出し、またアイロニカルな作品でもある。

「映像そのものの中の役割を考えたときに、普段は人の目に触れないように隠されているプロジェクターを中心に添え、プロジェクター自体を作品にした。またこれは私達の生きる現代社会を表している部分もあって、メディアそのものがぎりぎりまで忍び寄っている」(カロリン・ツニッス)

以下は今回の展示の映像ドキュメンテーション。



マライケ・ファン・ヴァルメルダム「イン・ザ・ディスタンス」



アムステルダムを拠点に活躍する作家、マライケ・ファンヴァルメルダム。湖畔に佇む老夫婦を両面スクリーンで映しだす。片面は近距離、裏面は遠距離からのアングルから撮ることで、時間の深みなどを感じさせる美しい作品だ。また2012年2月25日(土)より、タカ・イシイギャラリー(東京・清澄)にて初ギャラリー個展を行う。

ユリウス・フォン・ビスマルク「ザ・スペース・ビヨンド・ミー」



非常に暗い一室、壁面は畜光素材で覆われており、中心には16ミリフィルムの映写機が動きながら壁面へ投射する。それにより、壁面にランドスケープが残っていく。通常の映画ではスクリーンが動かないが、この作品では逆転しており、映写機自体が撮影されたときの角度を再現していく。フィジカルコンピューティングと古い映写機を用いることにより新しい映像のランドスケープを生み出していく。

伊藤隆介「オデッサの階段」



映画「戦艦ポチョムキン」の代表的なシーン「オデッサの階段」を模型で再現し、落ち続ける乳母車を小型CCDカメラでリアルタイムに撮影・投影するインスタレーション。通常映像というものは「過去」のものを映し出すが、この作品は目の前で起こっている事象を映写しており、普段気にすることのない映像の特性を浮き彫りにしている。


ユェン・グァン ミン「消えゆく風景 – 通過 II」


ユェン・グァンミン《消えゆく風景 – 通過 II》2011
3チャンネル・ヴィデオ・インスタレーション(HD、カラー、サウンド)
協力:ティナ・ケン・ギャラリー、台北・北京

台湾の美術家、ユェン・グァン ミン。1984年からビデオやほかのメディアの持つ可能性に引きつけられ、作品を作っている。自らの住居を舞台に、カメラをスキャナーとして利用し、ダイナミックな映像で日々の生活を記録する「消えゆく風景 – 通過 II」の3チャンネル・ヴィデオ・インスタレーションを展示。
ちょっとした驚きが隠されている「微笑む木馬」も愛らしい。

鈴木了二「DUBHOUSE」



建築家・鈴木了二の映像論を体現する大型展示「DUBHOUSE」。物質試行というコンセプトから映像、写真、美術などを手掛ける鈴木氏は、「建築を物質的に見ていくと映像になる」という。この施設には美術館、映画館、メモリアルの3つの機能が詰め込まれている。また映像プログラムでは鈴木氏をプログラマーに、広い意味での建築映像特集を組んでいる。

映像作品


映像プログラムも充実している。実験映画界の巨匠ジョナス・メカスによる新作「スリープレス・ナイツ・ストーリーズ 眠れぬ夜の物語」や、南アフリカのウィリアム・ケントリッジの新作「<アザー・フェイシズ>のための素描」などは見逃せない。ケントリッジは自ら描いたドローイングをコマ撮りしてアニメを制作する作家。ドローイング・アニメーションは作者の身体的な痕跡を残しつつ、機械的でもあるという映像祭のテーマにもぴったりだ。また、ニューヨーク・タイムズに迫ったドキュメンタリー 「ページ・ワン:ニューヨーク・タイムズの内側」 などもアジア初上映される。

サラ・モリス「線上の各点」
サラ・モリス《線上の各点》2010
シングルチャンネル・ヴィデオ(HD、カラー、サウンド)
協力:フリードリッヒ・ペッツェル・ギャラリー、ニューヨーク


建築というテーマの一つとして、サラ・モリスがモダニズム建築の粋であるミース・ファン・デル・ローエ「ファンズワース邸」とフィリップ・ジョンソン設計の「ガラスの家」を取材した映像作品。ただ単に建物を映像に収めるのではなく、近代建築の放つ権威や背後にある政治性などを含めて、建築の「保存」について意識している作品。高解像度でシーン一つ一つが絵画のように見える作品となっており、これは解像度を選ぶこともフィジカリティを決定する重要なファクターであることを気付かさせてくれる。

「The Art Of Flight」

カリスマ・スノーボーダーが世界中の雪山にヘリで赴き、断崖絶壁から滑り落ちる様子を、軍用に開発されたカメラで余す所なく空撮した作品。撮影した監督も元スノーボーダーのため、スノーボードの喜びが溢れている。軍用に開発された機材の映像でスノーボーダーの動きを映像にすることにより、見る人に身体感を与えることができる、映像によって届けられるフィジカリティを体現している作品である。

カート・モーガン《The Art of FLIGHT》 Curt MORGAN, The Art of FLIGHT/2011/80分/英語※日本語字幕なし(Dialogues in English)
協力:レッドブル・ジャパン株式会社、ビジュアライズイメージ株式会社
ⓒScott Serfas/Red Bull Content Pool

「東京シネマ」

日本の復興期の社会背景に関連づけた、科学映画の会社「東京シネマ」の作品を上映する。科学映画の中でも芸術的と言われる作品を残してきた彼ら。岡田一男(東京シネマ新社代表)は戦前から前衛芸術と交流が深く、作品の音楽を現代音楽家の一柳慧が手がけていたりする。
東京シネマ《電子の技術―テレビジョン―》1961
35ミリフィルム(SDに変換)、サウンド、カラー
協力:東京シネマ新社/NPO法人科学映像館

ライブイベントやアーティストトークなどの多彩なプログラム


和田永《Braun Tube Jazz Band》
ザ・ガーデンルームにて2/18に行われるライブイベント「See this Sound(シー・ディス・サウンド)」も注目だ。視覚と聴覚を同時に刺激する多彩なアーティストにより「見る音」というテーマで開催される。evalaによる闇の中で見る映画をコンセプトにしたパフォーマンスや、ドラマーを引退したドラびでおによる新開発のデバイスDORAnomeを用いた初ライブ、NECのFull HDプロジェクターを使用した平川紀道のユニットTypingmonkeysの映像表現、和田永のブラウン管を楽器に変える「Braun Tube Jazz Band」、exonemo、DJピロピロa.k.a.大木裕之など、どのような音響体験が得られるのだろうか。

また最終日にはジム・オルークとスウェーデン映画の黎明期の名匠シェーストレムによる無声映画とのスペシャル・ライヴ付き上映イヴェントも開催される。
そのほか多彩な上映、シンポジウムやトークはもちろん、恵比寿近辺にある地域の文化施設及びネットワークと連携して実現するプログラムも開催されている。プログラムは公式サイトにあるので、見逃さないようにチェックしてほしい。


今回の恵比寿映像祭は「映像のフィジカル」というテーマのもと様々な角度からの映像表現を体験することができる。一連の作品を見ていく中で、「映像のフィジカル」というテーマについて考えさせられる素晴らしい展示となっている。
会期は2月26日まで、ぜひこの機会に見てほしい展覧会だ。


Posted by Akiko Saito ( A4A )
Photo not credited are by CBCNET.

Information

第4回 恵比寿映像祭
映像のフィジカル

http://www.yebizo.com/

会期 : 2012年2月10日(金)~ 2月26日(日)[15日間]
*うち、2月13日、2月20日の月曜のみ休館

開催時間:10:00~20:00
*ただし最終日平成24(2012)年2月26日(日)のみ18:00まで

会場:東京都写真美術館全フロア及び恵比寿ガーデンプレイス センター広場、ザ・ガーデンルーム、恵比寿周辺文化施設及びギャラリーほか
料金:入場無料 *ただし定員制の上映プログラム、イヴェント等については有料です。
スケジュールなどは公式ウェブサイトやチラシ等でご確認ください。

主催:東京都/東京都写真美術館・東京文化発信プロジェクト室 (公益財団法人東京都歴史文化財団)/日本経済新聞社
共催:サッポロ不動産開発株式会社


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