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東京都写真美術館 映像をめぐる冒険vol.4
「見えない世界のみつめ方 BEYOND THE NAKED EYE」展 関連企画

市川創太×小阪淳×鳴川肇 メール鼎談
『新しい世界像にむけて』

第7回:『「本性」(=野生)に従いたくない、という「本性」(=野生) 』市川創太

December 23, 2011(Fri)

■小阪さんからの質問を受けて

20年前のことは恥ずかしいとしかいいようがありません。上手くはありませんが、今でも楽器を弾くのは好きです。なによりバンドが好きなんですね。音楽もソロプロジェクトよりもバンドのサウンドが好きみたいです。個々の才能やスキルがフュージョンして音楽を作り上げている、という創作形態に魅力を感じるんです。こんな言い方すると怒られるかもしれませんが、建築家でもArchigramやSuper Studio、Archizoom、ちょっと時期が飛んでCoop Himmelb(l)auもバンドっぽいと思っていました。OMAやH&dMも。これは意外と自分の創作姿勢に影響しているかもしれません。一緒に仕事をする人も、そういうバンドっぽい経験や感覚を持った人とは不思議と上手くいってきたような気がします。

「野生」について、小阪さんの文脈から、社会性から養われる「理性」に対して、生物として本来持っている「本性」、生きるための「野生」、あるいはもっと意訳して、「科学的」と「直感的」とでもいいましょうか、「論理的」と「感性的」というようにも捉えました。
まず自分に関しては、風貌はともかく多分に「感性的」(=野生的)なところはあります。これは、楽器を弾くということにも関係しているように思われますが、まず「直感的」(=野生的)に経験して、後から仕組みや構造の理解がついてくるというプロセスはよく経験します。やはり基礎の積み上げが無いと発展性に欠けるので、ある程度経験してからまた基礎に立ち戻る。かなり経験してから「いまさらそんなことも知らないの?」と、肝心な基礎を飛ばしていたことを笑われることもあります。直感を裏付ける理論や科学を知ると楽しいものですよね。これは学生に技術的なことを教える立場に立ったときにも感じました。最初から基礎をじっくり積み重ねていく学び方と、「直感的」(=野生的)な経験を積んで、後に理論を補っていくという学び方と。一概には言えませんが、美大系では多分に後者でしたね。

一方で、ただ単に「直感」、「感性」(=野生)に従いたくない、という意思が常働いています。自分の「感性」(=野生)だけでは限界があり、自分が感知し得ない「感性」(=野生)の外側をどうやって獲得するか、ということを意識してしまうのです。小阪さんの指摘のように、理論積み重ねの向こうに「野生」を見る、というとカッコイイと思いますが、実際は逆なんですね。先に「感性」(=野生)があります。でもそれにただ素直に従うだけではない、と。

人間の「野生」についても同様に、人間は、単に生き物としての「本性」(=野生)に従いたくない、という「本性」(=野生)を持っているのだと思います。それこそが人間の可能性といえそうです。
結局のところ「理性」と「野生」は2項対立するものでは無いと思います。両者は経験を積めば積むほど、混ざり、溶け合わさってくるものだと思います。生き物がもっている「本性」(=野生)が担う「生きること」ですら、「科学的」(=理性的)に行おうとしますし、直感も経験や科学によって変化してくる。思考して「科学的」(=理性的)に振舞っているうちは、直感とは言いがたいですが、「科学的」(=理性的)な知識や経験が直感に影響を与えることはあると思います。常に直感を科学によって進化させているんじゃないかと。
また科学哲学の件で、科学そのものを疑う、全ての思考基盤が崩壊する可能性を考える、というのも人間の「本性」(=野生)なのでしょう。

これは展覧会オープン後の鼎談への投稿になります。
展示会場を見渡すと、既出の作品タイトルが並んでいますが、小阪さん、鳴川さん、dNAほぼ全て新作が展示されています。dNAの今回の出品も初めて展示するものばかりです。トピックやクレジットがすこしでも気になった方は、東京都写真美術館に是非足を運んでください。


市川 創太(いちかわ そうた、1972年生まれ)
doubleNegatives Architecture(ダブルネガティヴス・アーキテクチャー)主宰 
建築設計の手法・プロセス自体を開発実践しつつ、アーティストとのコラボレーションを積極的に展開。97年ドイツのメディアアーティストグループKnowbotic Researchの「10_DENCIES」に参加。04 年三上晴子と「gravicells」を発表。98 年に建築設計、インスタレーションなど横断的活動を展開する建築グループdoubleNegatives Architecture [dNA] を開設。08 年より中谷芙二子とdNAのコラボレーションプロジェクト「MU: Mercurial Unfolding」を展開。

doubleNegatives Architecture (ダブルネガティヴス・アーキテクチャー)
1998年に建築家市川創太を中心に結成された建築ユニット。プロジェクトごとに異なる分野の専門家でメンバーを編成し、多様なメディア、プラットフォームを横断しながら建築のビジョンを提案している。2005年から展開中の《Corpora》プロジェクトは、2007年に山口情報芸術センターにて《Corpora in Si(gh)te》として拡張し、新作発表された。このインスタレーションは2008年ベネチア・ビエンナーレ国際建築展でハンガリー国代表として出展されるなど、世界6都市で公開されている。
http://doubleNegatives.jp

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