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月曜日、いよいよこのフェスティバルのメインコンテンツともいえるカンファレンスがスタート。次の日の火曜と合わせて2日間、朝10時から夕方6時まで一日かけて多くのスピーカーが登壇し、プレゼンテーションを行った。

会場になったのはManchester Town Hall(マンチェスター市庁舎)。1877年に建てられた街のど真ん中にあるとても立派な建物。ここのメインホールを含め計5つの部屋でトークが繰り広げられ、同時進行だったのでとても全部は見れなかったけど、特に印象に残ったトークを少しだけ紹介。


How to Create a Tool

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メインホールでは基本的に一つのテーマに対して、2~4人のスピーカーがそれぞれそ15~20分、テーマに沿った自分の活動、プロジェクトを紹介していくという形式で進行し、登壇者間でのディスカッションや客席からの質問は基本的になし。

メインホールにて、月曜日2つ目のプログラムとなる「How to Create a Tool」というテーマのトークでは、バルセロナの先端建築大学院大学iaacの専任講師を務め、Smart CitizenのファウンダーであるTomas Diez、Intelリサーチラボに所属するリサーチャーのAlexander Gluhak、カードサイズのLinuxコンピューターRaspberry Pi の創設者であるRachel Raynsの三人が登壇。

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Smart Citizenについては2日目の展示の記事で少しふれたが、もともとはウスマンハックによる地球をセンシングしようとした壮大なプロジェクト「Puchube」から着想を得ているといっていいだろう。実際にバルセロナでメインの開発者であるAlex Posadaに質問したところそのように答えが返ってきた。Smart Citizenではこのプロジェクト用に開発されたセンシングデバイスを供給し、専用のプラットフォームでデータを共有することで、より必要なデータを確実に正確に取得し、それをシェアして未来のより良い街をづくりを志向しようといったプロジェクト。果たしてこれらの環境データはどのように有効利用されていくのか、プロジェクトがはじまったばかりの現在ではまだわからないが、今後の動きに注目したい。

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興味深かったのはRaspberry Piプロジェクトのファウンダー、Rachel Raynsのプレゼン。Raspberry Piはコンパクトなコンピューターではあるが、ArduinoとPCの中間ぐらいに位置する存在で、とても小さく、電池で動作するのでスタンドアローンなディバイス作品に組み込めたりするのが魅力。おまけにコンピューターなのに安い。現在Arduinoに次いで人気のあるプログラマブルデバイスといえるだろう。
開発者のRachel Raynsは1988年生まれでしかも女性というところでまず驚いた。彼女は大学でLens Based Mediaを専攻しており卒業後、イギリスの東部に位置するノリッチという街でSoup Labというギャラリー兼ラボ、そしてアーティストインレジデンスを兼ねたスペースを設立し、研究を継続。そんな中で、低コストで実装できるアート作品のためのツールを考えていて生まれたのがRaspberry Piだそうだ。


Critical Making

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この回のトークでまずマイクの前に立ったのはアーティストであり理論家であるGarnet Hertz。おそらくこのトークのタイトルは彼のためにあったのではないかというぐらい、タイトルにフィットした内容のトークだった。



例えば過去にこんな作品をつくっているGarnet。現実の世界を昔のビデオゲームのように再現し、運転可能な車にしたARビデオゲーム「OutRun」。

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今回のトークでは「Critical Theory + DIY “Maker” Culture」という見地から、Makerムーブメントとハッカー文化を対比したりしてMakerムーブメントとはなんなのか、批判的であるが、分り易く、そして皮肉たっぷりに解説してくれた。彼の言い方が100%ネガティブというわけではないけれど、これまでMakerムーブメントは常に肯定的でハッピーなイメージでとらえられ、ポジティブな面ばかり紹介されてきた節があると感じていたので、彼のクリティカルな目線からの解釈は刺激的で痛快だった。

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「Critical Making」とは彼のハンドメイドのブックレットをつくるプロジェクト名でもある。デザイン、現代アート、DIY、テクノロジーといった分野に関して、「Critical Making」というテーマの下、70名の寄稿者によって書かれた352ページ分のテキストを、10冊のポケットZINEサイズにまとめ限定300部パブリッシュしたプロジェクトだ。
このプロジェクトについて詳しくは以下

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次に登壇したのは3Dプリントワークショップでも講師を務めたGolan Levin。「The Free Universal Construction Kit」、「Graffiti-Infoviz Tools」、「NeoLucida」の大きく3つのプロジェクトを紹介し、”Critical Making”とは何なのか、彼の目線から語られていた。

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NeoLucidaを中国の工場に発注し大量生産した際に、実際に中国の工場まで足を運び、自ら生産ラインに着席し作業を行ったというエピソードが印象的で、Makerムーブメントとは何なのかを考えさせられる瞬間だった。


2日目、火曜のプレゼンは総じてBig dataに関するものと、都市や公共空間について考えるテーマのプレゼンが多かった。
といった感じで紹介したのは本当にごく一部のプレゼンだけになってしまったが、全体を通して、登壇するスピーカーは個人で名が知られているアーティストやデザイナーなどはほとんどいなくて、研究機関に所属してるリサーチャーや大学教授、プロジェクトのファウンダー系の人が多く、現代アートシーンや広告業界など、商業やビジネスに属するような話は一切なく、ノンプロフィットな体で学会に近いイメージだった。


まとめ

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フェスティバルの名の通り、Future Everythingとは都市や人々の生活など、本当にちょっと先の未来全般について志向し、現在をちょっと先の未来に推し進めるためのプロジェクトであり、年に一度開催されるこのフェスティバルはそのちょっと先の未来の状況はどんなものかを皆でシェアするために開かれるイベントであると感じた。
来年でFuture Everythingフェスティバルは20周年を迎える。一年後に我々が志向する少し先に進んだ未来はどんなものか、その未来を再びいろいろな形で提示してくれることだろう。