メディア芸術やデザイン・アート関連のイベントが目白押しの2月。
2月8日から恵比寿映像祭もスタート。
一足早くその模様を、個人的な視点からいくつか作品をピックアップして見所を紹介。展示を見るのが慣れてる人は、足を運んでから読んでもらうのも良いかもしれません。

昨年の恵比寿映像祭のレポートはCBCNETに上がってるのでぜひ。
http://www.cbc-net.com/topic/2012/02/yebizo-2012/

展示作品に加え、多くの上映作品もあるので、ここではあくまで一部だけとなります。
会期は2月24日までなので、ぜひ足を運んでいただきたい。

昨年は「映像とフィジカル」というテーマで、エキソニモによる「EyeWalker」、カロリンとブラムによる自らをプロジェクションマッピングするプロジェクター作品「RE:」、ユリウスによる蓄光素材と改造映写機をつかった「ザ・スペース・ビヨンド・ミー」などなど、ダイナミックかつ「フィジカル」な作品がたくさんあり、「映像祭」という言葉では収まらない幅広い作品ラインアップとクオリティがあるフェスティバルで、今年も楽しみにしていました。


第5回となる今回のテーマは「パブリック⇄ダイアリー」
以下は、公式のリリース内にあるテーマについて恵比寿映像祭ディレクターの岡村さんによる文章の冒頭部分。

第5回の総合テーマは「パブリック⇄ダイアリー」。「日記」をキーワードに、映像の力について考えます。 映像には、時制を最短距離で乗り越え、異なる時空をつなぎ合わせる道標としての力があります。人がその生を通じて遺す痕跡や記憶、想いを、時間は無情にも消去していきます。しかし、映像があるから思い出せる、映像に残すことで忘れておける、あるいは、映像を契機に視覚化されていないことを察することができる、というように、映像の力を借りることで私たちは、時間を再生し、俯瞰し、超克することができるのではないでしょうか。
http://www.yebizo.com/#contents



「パブリック⇄ダイアリー」という言葉を聞いて個人的にパッと頭に浮かんだのはインターネット上における「ブログ」。
ブログがパッと出てくるあたり、本来プライベートである「ダイアリー」と「パブリック」という言葉の関係は変わってきてるのだなあと認識できた。インターネット民なのもあるかもですが、、

クリストファー・ベイカー《ハロー・ワールド!または、私は如何にして聞くことを止めてノイズを愛するようになったか》2008

そんなテーマがすんなりわかる作品がクリストファー・ベイカーによる”HELLO WORLD! OR: HOW I LEARNED TO STOP LISTENING AND LOVE THE NOISE”。
Youtubeに代表される映像関連のSNSに上がっているとてもプライベートな空間の映像を全世界に公開している一般ユーザーの映像を大量に同時再生してる作品。
自分がYoutubeにハマっていた時期もあり、シンプルであるが大量にあることでノイズ化してしまうところが表現されている。よく見ていたRenettoZipsterなどのYoutuberも見つけられたので、個人的に親近感も湧いてしまったりした(笑)


“野口 靖《レシート・プロジェクト》2006~2013年 インタラクティヴ・インスタレーション

野口靖さんによる「レシート・プロジェクト」は来場者からレシートを集め、時間と空間を同時に示す地図上にマッピングするというもの。
消費活動はプライベートなものなので、消費行動の集積から自分らを取り囲む社会を解析するというが興味深い作品。
こうしたデータから地図を作るという切り口では人間行動のGPS情報から地図をつくるLondon GPS tracking mapなどを思い出した。



そういった個人的な行動という流れで、河原温の「日付絵画」も展示されている。
初めて実物見ました。この作品はおそらくいろんな言語化がされてるので、表現が難しいですね。

ザ・プロペラ・グループ《The Dream》2012

ホーチミン(ヴェトナム)/ロサンゼルス(アメリカ)から成るザ・プロペラ・グループによる作品。”Dream”は1985年にベトナムに輸入されてから交通手段のアイコンにもなったバイク。それは経済発展の象徴でもあり、信頼と耐久性のシンボル的な存在だった。そんなDreamをある一晩、路地裏に放置してみた。パーツの転売対象ともなっていたDreamは一晩でほぼスケルトン状態になっていく。

今回は、定点で捉えた映像とともに実物のバイクも展示されている。これは後の姿。
コミカルにも見えてしまう映像と”The Dream”と題された作品とバイク、そして撮らてる人たちの日常、というのがグルグルする。


作家:野口久美子+平川紀道+森浩一郎

こちらは平川くん、野口さん、森くんによる新作。
恵比寿映像祭のウェブサイトには2009年の「氷の計測」という作品が上がっていた。これはCBCNETのブログにも書いてあるが、郡山まで行って実際に見てきた作品でとても好きだった。
今回もなんとなくそういった方向性なのかな、と考えていたのだが、
いろいろバージョンアップされていた。
最初は頑張って解釈しようとしたのだが諦めてしまい、、説明を受けたらなんかしっくりきた。ただ自分で説明しようとするとなかなか難しい。
コンピュータによる計算から出される海面水位、水、ブラックボックス(最初プレステかと思った)、スキャンによるデジタル化。確かに「氷の計測」の時にチャレンジしていたことが根底にあるように感じられる作品だった。

関係ないが、勇吾さんによる”EVERY THING IN IT’S RIGHT PLACE.“を思い出したりもした。


さて、ここまできて何か疑問に思うようになっていた。
ダイアリー、とは日記と訳されるが、個人が自身の行動を記すものだ。個人的な感情や衝動、そして時間軸によって進行する。
だがいくつかを見ていると、作品の対象が人間や自然であっても、それ自体には個人的な介入をしない、むしろ「定点観測」に近いように思えてくるものがいくつかあった。

そこで冒頭に引用した岡村さんのテーマについての最後にはこう記されていた。

旧来、日記は私的な空間で主観的に記すもの、とされてきましたが、メディア技術や情報システムの変転によって、私的な空間がさまざまな形で浸食され、管理されてしまう現代にあって、「私」を問うことは、裏返しに見えてくる「公」をもまた、新たに問うことにほかなりません。映像の力を借りることによって、「私」が「歴史」になり、「公」が「日記」として読まれるような、揺らぎにも似た領域にこそ、光をあててみたいと思います。
http://www.yebizo.com/#contents


ここでやっとテーマの「パブリック⇄ダイアリー」を解釈し、作品を見る切り口ができてきた。
こうやって緩やかにつながっていくテーマ性が恵比寿映像祭の魅力なのかもしれない。そもそも、「映像とは何か?」というメインコンセプトがあり、かつ東京都写真美術館なわけで。

さてさて、
昨年のEyeWalkerに引き続き、オフサイトでの大規模展示もされている。
今回は鈴木康広さんによる《記憶をめくる人》。

鈴木康広 オフサイト展示に向けた新作のイメージ・スケッチ 2012



アイディアスケッチそのままにガーデンプレイスに設置されている。
ライフワーク的にアイディアをスケッチしてるという鈴木さんによる作品であり、実際に使っているスケッチブックもたくさん持ってきていた。
会期中には本人もいたり、昼と夜で表情が違うとのことなので、こちらも改めて見に行ってみたい。


クリスチャン・ヤンコフスキー《ドバイの瞳》2012年 ©Jörg Reichert

これはクリスチャン・ヤンコフスキーによる映像作品「ドバイの瞳」。
イギリスBBCの依頼による初めてのドバイ訪問記なのだが、ヤンコフスキーとそのクルーは、目隠しをしたままドキュメンタリーを撮る、という作品。パブリックなダイアリーでもある「ドキュメンタリー番組」を、自らの感覚へ制限して見えてくるもの。
作品を見ていたら、実際に自分がやってみたいなあ、と思ってしまう。度胸があるのか、スタッフが大勢いる安心感か、さすがBBCなのか、目隠ししてるとは思えないぐらい安心して見てられた。


川口隆夫《a perfect life 川口隆夫ダンス・パフォーマンス in Okinawa》2011年より[参考図版]photo: Koji Kakubari

こちらは川口隆夫さんによるパフォーマンス作品。地下一階にあるパフォーマンススペースはインスタレーションしても公開しているが、これは見てみたい。
メモ用に公演日程も記しておきます。

公演日Date:2/8(金)、2/9(土)、2/10(日)、2/13(水)、2/14(木)、2/16(土)、2/20(水)、2/21(木)、2/23日(土)
会場 Site:地下1階展示室内
時間 Time:開場Open 18:30/開演Start 19:00 (終演End 20:00[予定])
料金Ticket:当日2,000円 前売1,600円(日時指定・全席自由席制/入場整理番号付/各回定員入替/定員100名)
※チケット情報は こちら
公式ページ



ハーモニー・コリン、アレクセイ・フョードルチェンコ、ヤン・キヴェチンスキ《フォース・ディメンション》2012年 ©Danilo Parra

ほかにもたくさんの上映プログラムも組まれている。
そのなかで、ヘッドライナーとして組まれていた作品がこの「フォース・ディメンション」。
“四次元”をテーマに、アメリカ、ロシア、ポーランドの3カ国の気鋭の映像作家によるオムニバス作品。
個人的にはこれがなかなか不思議な作品で、見たあとジワジワというか、なんか思い出す。

ハーモニー・コリン版ではヴァル・キルマーが出てくるのですが、いろいろ笑える場面?的なものやどこまでがプロジェクトの意図なのか監督の意図なのかフワフワしてるように感じました。ヴァル・キルマー知らないとポカーンとなってしまいそう。ちなみにVICEによるプロダクションだったりしたのは面白かった。


ほかにもたくさん上映プログラムがあるので気になる方はぜひこちらをチェック
http://www.yebizo.com/#bySection
個人的には、日本新進映像作家たち日記とコミュニケーション ―大江崇允《適切な距離》、あたりを見てみたいなと。


個人的な感想も交えて書いてみましたが、改めてパフォーマンスやトークと合わせて足を運んでみたいと思います。
会期は2月24日までなので、ぜひこの機会に!

さて、書いてみてこのブログエントリ自体「パブリック⇄ダイアリー」として考えられるのだろうか。

栗田

Information


第5回 恵比寿映像祭 パブリック⇄ダイアリー
http://www.yebizo.com/

会期: 平成25(2013)年2月8日(金)~ 2月24日(日)
会場: 東京都写真美術館/恵比寿ガーデンプレイスセンター広場/ザ・ガーデンルームほか
休館: 2月12日(火)、18日(月)
時間: 10:00~20:00
*ただし最終日2月24日(日)のみ18:00まで
(2/8, 9, 10, 13, 14, 16, 20, 21, 23日 19:00~の川口隆夫パフォーマンスに伴い一部鑑賞出来なくなる作品がございます。予めご了承ください。)
料金: 入場無料
*ただし、定員のある上映、イヴェントなどは有料

主催: 東京都/東京都写真美術館・東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東 京都歴史文化財団)/日本経済新聞社
共催: サッポロ不動産開発株式会社
後援: J-WAVE 81.3FM
助成: 公益信託タカシマヤ文化基金/東京都写真美術館支援会員
協賛: イスラエル大使館/Artis/東京造形大学 CSLAB/NECディスプレイソリュー
協力: ションズ株式会社/東芝ライテック株式会社/東芝エルティーエンジニアリング株式会社/カラーキネティクス・ジャパン株式会社/Kyoto/ぴあ株式会社/ 株式会社アマナイメージズ/株式会社北山創造研究所/株式会社トリプルセ ブン・インタラクティブ/株式会社ロボット