おとなもこどもも、遊びながら学ぶイベント、というキャッチがついた『教室』というイベント。
第三回目の開催が11月17日に控えているが、今回はタイトルや告知文からでは想像できない、そのイベントの内容を伝えるため、オーガナイザーからのレポートをお届け!






「教室」というイベントは、デジタルアートに携わる学生を主体とし、学校や会社という枠にとらわれることのない、世代を超えた交流を目的としている。
テジタルツールを用いた表現においては、技術とコンセプトのどちらかが欠けてしまっても、満足の行く表現には至らない。そんな中、ツールや表現だけでなくコンセプトまで理解し、自身の表現の幅を広げる機会を作りたい、と、互いに刺激を受け合う場を目的として始まった。

現在様々なフィールドで活躍しているアーティストやクリエイターを先生として迎え、サウンドパフォーマンスやヴィジュアルパフォーマンス、プレゼンテーションを行う。
加えて現役の大学生や若手作家、TokyoMaxUsersGroup(TMUG)やOpenFlameworksTokyo(OFT)などの関連のワークショップで学び、これから表現を極めていくだろう作家も出演する。
終了後には質問交流タイムを設け、アットホームな環境で密に交流をとることができる。

第1回目、続く2回目のイベントの様子を、アーティストの紹介を含め、振り返っていく。


『教室#1』の模様


第1回目では、コラボレーションをテーマに、サウンド・ヴィジュアルの表現にこだわる4組が出演した。

1組目はlove and islandの演奏、ogaooooのVJだ。

love and island × ogaoooo

ポストポップバンドlove and islandは、湘南を拠点として活動している、現役学生を含むバンドだ。ギターとボーカル、シーケンサーが生み出すアンビエントサウンドは、背景に生楽器があるからこその拘りぬかれたサウンドが響き渡る。
VJは、プロダクトデザインをベースとした3DCG作品を制作しているogaoooo。

Quartz composerと3DCGを組み合わせ、様々な模様を幻想的に描きだしていく。後半になるにつれ色彩感を増していく様子は、艶やかな水彩画を想起させ、空間に溶け込んでいた。初のコラボレーションとなったlove and islandとogaooooは、相互に“アコースティックなエレクトロ”といったイメージで、会場を柔らかな空気で包み込んでいた。

続く2組目は、ixcourse 。



ixcourseは、音楽、文芸、彫刻、演劇などを専攻する日本大学芸術学部の学生によって構成されている。
劇とも音楽とも捉えがたいそのパフォーマンスからは、あらゆる表現の要素を突き詰めている様子が伺える。張り巡らされた光ファイバーをパフォーマーが操り、暗い会場内には光の線が浮かび上がる。激しく何かに執着するように光を操るパフォーマー、最後には全ての動きが止まり、思わず息を飲む。轟く音と迸る映像が交差し、世俗を離れたかのような印象をうけた。

3組目は、telescope。



プログラミングと電子工作を行う、未来系テクノポップユニットtelescope。Republicにも参加し、目覚しい活躍がみられる注目すべきユニットだ。
可愛らしくノリの良いポップなサウンドに、同期された光の装飾や衣装と機材など、コンセプトからヴィジュアルまで抜けのない拘りを見せる。一見ポップだが、「LEDisco」や「I,OSの歌」と、耳を澄ませばギークな内容をテーマとしている。その意外性からは思わず笑顔が溢れ、一度見たら忘れられないだろう。気づいたときには、その曲を口ずさんでしまう程だ。

ラストは第1回目ゲスト、Masato TSUTSUI氏によるVJ、そしてNyolfen氏によるLiveだ。


HDVJとして数多くのシーンで活躍する筒井真佐人氏。Max/MSP/Jitterによって生成された映像は、音量や音域に合わせてリアルタイムで描写される。美しく映し出されるカラフルな映像は、デジタルともアナログとも捉えることの出来ない臨場感を会場に与える。

分解系recordsに所属するNyolfen氏のサウンドは、耳に残るメロディーと独特のコード進行、そして鋭くも安定感のある重低音を奏でる。非日常的なサウンドスケープが身体の芯に響き渡り、気分を高揚させる。確立された安定感のあるスタイルからは、それぞれの表現がぶつかり合うこともなく見事に調和し、高い完成度に圧倒させられた。



『教室#2』の模様


9月8日に開催された第2回目では、ジャンルを交差し、様々な表現を形にするアーティスト達が出演した。



1組目はjohn smith


多摩美術大学在学中のjohn smithは、身体からノイズ音を生成し、交流電流のパルスからノイズ音を生成するパフォーマンスを行なっている。

マイクスタンドに括りつけられた無数の電球、手元に置かれたランプ。John smithの行為に合わせ、音が光を、そして光が音を生み出す。光と音といった時間軸のある媒体を用いることで、デジタルを用いた表現の可能性を改めて考えさせられた。

2組目はVJ YMTとLASTorderのコラボレーションだ。



19歳にしてshing02などのRemixを手がけるトラックメーカーのLASTorderは、インターネットを中心に楽曲を投稿しつづけ名を馳せていったアーティストだ。現在インターネットというフィールドを利用して、ネットレーベルなど新たなる音楽配信文化が築き上げられている。インターネットを通じて出演の決まったLASTorderのライブは、配信されている音源を超越し、生演奏ならではのあたたかなライブを披露した。

OpenFrameworksを用いた、オーディオリアクティヴな映像表現を主軸として活動しているVJ YMTは、shouhei hasegwa、tetsutaro yano、yasuhiro hoshinoの3人によるVJプロジェクトチーム。Republicなどの出演を筆頭に、個人もチームも目覚しい活躍を見せる。波形によってヴィジュアライズされたシャープな文様が、LASTorderのビートと共に刻まれ、ライブペインティングのような臨場感を与える。最後の曲ではボーカルのcokiyuが登場するといった演出もあり、一層印象深いパフォーマンスとなった。


一人目の先生は、作曲家の安野太郎氏だ。


音楽映画、方法マシン「サーチエンジン」などの作品で知られる安野氏。時間軸上でのパフォーマンスに拘り、あらゆる既存の概念を覆す独創的な世界観に、誰しも思わず引きこまれてしまうのではないだろうか。

今回のイベントでは、新作「ゾンビ音楽」を披露してくれた。Arduinoを用いて安野氏によって作り上げられたリコーダーロボットだが、その楽器が思い通りに演奏してくれることはない。孤立した魂として、彼の手を離れ演奏し続けるそれは、まさに「ゾンビ」そのものであると、フランケンシュタインを例に安野氏は語る。8つの穴を塞ぐ256通りの指使いを駆使し、ゾンビリコーダーは『ゾンビ音楽第一番』を演奏してくれた。人間と機械、いったいどちらが、どちらに操作されているのか。ゾンビリコーダーは、私達に多くの問題を投げかけてくれる作品であった。


ラストは二人目の先生、比嘉了氏によるライブパフォーマンス。


プログラムによって映像を作り出すシステムや編集するための仕組みからアプローチしたリアルタイムな舞台演出やインスタレーション、ライブパフォーマンスなどを行う比嘉氏は、そのプログラミングセンスで、瞬時に思い通りの表現を作品へと落とし込む。

今回はOpenFrameworksによって生成し描写された3D映像と、波形によって生成されたサウンドによるパフォーマンスが3作だ。1作目は生き物のように浮かんでは消える円運動を描き、2作目はヴィジュアライズされた3D波形、3作目は放射状に曲線を描き出す作品。洗脳されたサウンドとヴィジュアルは鳥肌ものとしか言いようがない。デジタル表現を駆使して無駄な要素を取り除き、シンプル且つ確実に心に響くパフォーマンスを見ることができた。

こちらは、教室#2のアーカイブ映像

教室#2 from KYOSHITSU on Vimeo.



11月17日(土)には、続く第3回目が開催される。



音のでるサイのカタチをしたRhinon(らいのん)など、光や音にまつわるかわいらしいおもちゃをつくるMATHRAX LLC.(久世祥三+坂本茉里子)を先生に迎えて開催される。
自作楽器『B.O.M.B.』でのライブを初披露するYoshihitoNAKANISHI。
OpenFrameworksを用いて、バレエに溶け込むサウンド・ヴィジュアルパフォーマンスを初披露するnoTempo + Pauline Fukuta。
実験音楽などにも親しみ、独自の世界観でライブパフォーマンスを行う
Seitarow Kokuboの4組が出演。
Maker Faire Tokyoに出展するデジタルデバイス作者によるパフォーマンスや、バレエとデジタル表現とのコラボレーションなどが見られる。

作者自身のアイディアによりつくられたデバイスとなる楽器やおもちゃ、そしてシステム。
ハード・ソフト問わず拘りぬいたパフォーマンスを、是非とも多くの方にご覧いただきたい。

CBCNET上のイベント情報はこちら!
http://www.cbc-net.com/event/2012/11/kyoushitsu-3/

Text by Miki Osawa

Information


『教室#3』
https://www.facebook.com/events/295715387206459/?fref=ts

11/17(SAT) 18:30 (OPEN 18:00)〜21:00
@西麻布Bullet’s(http://bul-lets.com/)
¥1000(1D込)

【Guest】
MATHRAX LLC.(久世祥三+坂本茉里子)
Yoshihito NAKANISHI
noTempo + Pauline Fukuta
Seitarow Kokubo


Presented by
siranon × MikiOSAWA

Special Supported by
TMUG