5月に訪れたポーランドのメディアアートビエンナーレ「WRO 2011」。
以前のレポートはこちら
WROレポート2: http://www.cbc-net.com/log/?p=2208
WROレポート1 : http://www.cbc-net.com/log/?p=2172

今回は、同じくポーランドを訪れていたキュレーターの四方幸子さんにWROについてのコメントをいただきました。数多くの海外のフェスティバルに行かれてるので、全体の印象についてはとても興味深く読ませていただきました。ご協力ありがとうございました。





WROの全体の印象はいかがでしたか?また他のヨーロッパや世界のメディアフェスティバルとの違いなどは感じましたか?


大規模ではないのですが、WROセンターそしてビエンナーレとも、このヴロツワフという美しい古都で着実に育ち、愛されていることをまず強く感じました。これもセンターのディレクター、ヴィオレッタ、ビエンナーレのアーティスティク・ディレクターのピヨートルが長年熱心に関わってきたこと、またWROのスタッフ一人一人も含めグローバルネットワークとローカルなアウトリーチを合体させてきたことにあると思います。

ビエンナーレの今回のテーマ「Alternative Now!」は、確立されたアート組織やシステムから距離をとるインディヴィジュアルなスタンスや戦略の可能性について、2010年代においてあらためて検証・紹介するもので、とりわけステラークやヴォルフ・カーレン、イシュトヴァン・カントールなど、60年代以降活躍している一種伝説的な(しかも現役!の)アーティストや実験的グループVideofreexがフィーチャーされていたこと、またデジタルネットワーク時代の「キュレーション」の可能性について検討するプレゼンテーションが(自分のものも含め)目立った感がありました。

大きな特徴は、世界のどのフェスにも見られない、映像における間口の広さです。実験映像、ヴィデオアート、現代美術、メディアアート、工学系ヴィジュアリゼーションなど、通常同じフェスや展示で出会わない異なる傾向の作品やアーティストを招聘することで、見る側そして出展する側も含めたさまざまなコミュニケーションの場が形成されています。日本からは、畝見達夫さんや田村友一郎さん、山口典子さんなどとお会いすることができました。

ビエンナーレは、コンペティションを行った上で組み立てられた複数の展覧会(今回は初めてWROのスタッフのみでの審査。主会場をはじめ街中で開催)、連日のプレゼンテーションや上映、パフォーマンスなどで構成。イベントが重なりすぎないため全体をフォローしやすく、その中で参加者や来場者が頻繁に会いリラックスして話せる機会が多くあったことが印象的でした。

産業や科学的な業界色が強く大規模なアルス・エレクトロニカと比較すると、こじんまりして手作り感が強い、しかも仕事はプロフェッショナルでひじょうに厳密になされている印象。ロッテルダムのメディア組織V2に代表されるような実験性に特化しないことで、確実かつ実質的にメディア文化の新たな側面の紹介と振興を牽引している。それはヴラツワフ、そしてポーランドという土壌に根ざした上でグローバルにつながっているWROというセンターとフェスならではの個性だと思います。

・今回はご自身もプレゼンテーションをされましたが、参加者からどういった感想がありましたか?


自分のプレゼンは、”After 3.11 – Alternatives in the Age of Info-Ecosystem”というもので、とりわけソーシャルメディアの普及以降の情報の組織化とそこから派生する新たなコミュニケーションや広義の「キュレーション」の可能性を示唆するものでしたが、そのような状況が、とりわけ3.11の東日本大震災を契機により自覚・加速され、アートが社会と関わりはじめた新たな動きについても言及しました。社会的にも個人的にも、今回の大震災は、大きな転換点、Alternativeな裂け目だと思っています‥通常のプレゼンテーションとは少し異なり、絶望と希望の淵に直面しつつ今思うことを伝えていく、というものになりました。日本で起こったことがグローバルに共有されている手応えを感じたし、プレゼンテーションに対する共感的な意見と応援を数多くいただくことができました。

・WROに参加していたアーティストや気になった作品などがあれば、教えてください。


1)ポーランドのイゴール・クレンツ「Mathematical Morphology in Teledetection」。個展形式で展示されたこの作品は、デジタル画像のプロセシッングと解析を記述した同名の科学書の図像等を転用したコンセプチュアルな作品。映像とインスタレーションで構成。

2)米国のミーガン・ダールダー。カール・シムズの「Artificial Life」のシミュレーションを、あえて自らの身体で行うパフォーマンス《Tribute to Karl Sims》、また2人が顔を向かい合わせに箱をかぶることで顔がオーバーラップし変容する《Mirrorbox》(デジタル処理でなく)で受賞。彼女はUCLAの学生で、情報や身体に関する新たな感性と表現力を強く感じました。本人もとても魅力的。
(※ミーガン・ダールダーの作品についてはレポート2にも)

3)米国のデヴィッド・ボウエン《tele-present water》。実際の海面の変動データをリアルタイムで遠隔的に受けてそのとおりにフレームで構成された構造体が動く作品。



*ボウエンとダールダーは、はからずもWROビエンナーレの賞を受賞した3名のうちの2名。クレンツは、今回初めて設立された「美術雑誌 編集・批評家賞」を受賞。そういえば例年になく、映像作品が今回一つも受賞しなかったとのこと。

4)Videofreexの特集上映 “Tuned in, Turned on!”
69年に結成された米国の伝説的な実験ヴィデオグループVideofreexの回顧上映。
シカゴのVideo Data Bank により近年修復され、12作品を上映。政治的なもの(ブラックパンサー党メンバーのインタビューなど)、社会的なもの(ヘルスエンジェルスなど)や実験的なアートまで、革新的な時代性が生々しく記録された貴重な映像。米国でも見る機会がなかったもの(実際、Videofreexメンバーにとっても!)がほとんど。当時の代表メンバー、スキップ・ブルームバーグにも会うことができた。
(参考リンク:Videofreex YouTube channel http://www.youtube.com/videofreex




四方幸子
キュレーティングおよび批評。東京造形大学特任教授、多摩美術大学客員教授、国際情報科学芸術大学院大学(IAMAS)非常勤講師。情報環境とアートの関係を横断的に研究、並行して数々の先験的な展覧会やプロジェクトを実現。近年の活動に「ミッションG:地球を知覚せよ!」展(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、2009)、「IST2010」フェスティバル(VACANT、2010)「polarm」展(山口情報芸術センター、2010)など。国内外の審査員を歴任。





ご協力ありがとうございました!

WROの他のレポートはこちら
WROレポート2: http://www.cbc-net.com/log/?p=2208
WROレポート1 : http://www.cbc-net.com/log/?p=2172

コメントにも出てくるアルス・エレクトロニカの昨年のレポートはこちら
http://www.cbc-net.com/log/?p=1789