世田谷のギャラリーSNOW Contemporary にて、4月1日まで竹内公太個展「公然の秘密」が開催されている。

竹内はこれまで、公共性と集団意識に対する無意識の依存と疑念をテーマとし、都市風景やパブリック・アートなど人工的に規定された風景やルールに対する身体的アプローチをもとに制作活動を続けてきた。

最近では、福島第一原子力発電所の事故以降、同発電所にて作業員として勤務し、その後は東京電力本店の記者会見に出席しながら発電所内の作業環境についての報告を日々ブログに綴っている。
また、8月28日に福島第一原子力発電所にて「ふくいちライブカメラ」の前に現れ携帯電話を手にカメラに向かって指差しを行った通称「指差し作業員」との関連性が話題を集めている。このパフォーマンスは後に、インターネット上にて指差し作業員本人からヴィト・アコンチ『centers』(1971) へのオマージュ作品であるという声明がなされた。

次々に配信される震災のニュースが日常化しつつある中で、この映像ほど鋭く「見る/見られる」関係性を鮮やかにしめしながら疑念を投げかけた行為はないだろう。

この「指差し」パフォーマンスが世界中に配信される「ふくいちライブカメラ」という公共のメディアを経由して発表された事は、現代美術界のみならず世間にとっても「事件」となったが、本作品には 3.11 以降に発表されてきた、現状に対する怒りや悔しさ、政治的な思想がこめられた他の多くの作品とは異なる視点がある。それは、この作業員が自らの主義思想を表すことなく、危機的状況だからこそあらわになった目に見えない「公共性と集団意識に対する無意識の依存と疑念」の存在をネットというメディアを利用して鮮やかに切り出し、我々鑑賞者につきつけてきた点にある。

美術やそのルールというフィールド内だけでは収まらない様々な切り口を内包しながら端的に時代の空気をしめしたからこそ、一連の活動に対し様々なメディアが反応し、広く人々に思考させる機会をもたらした。

今回の個展では、竹内公太本人による”来場される方一人一人と「対話」をする”パフォーマンスが毎日行われている。竹内は 3.11 以降、様々なメディアでやりとりされる情報を受け、人の発信する“ことば”を信じては疑うなか、「対話」の可能性についてますます考えを深めるようになったと言う。竹内は自身が曖昧な他者となって来場者との対話を試みることで、当事者とは誰か、証言はいかにして可能かといった問いを我々に投げかけてくる。

また、竹内によるパフォーマンスとともに、3.11 以降から今にいたる竹内の活動のドキュメンテーションや新作のインスタレーションもあわせて発表されている。

本展にて、指差し作業員の存在や、東京電力の記者会見に出席し続けてきた竹内自身の意図が明らかになる。

会期は4月1日まで。ぜひ、お見逃しなく。

Information

竹内公太 「公然の秘密」 by SNOW Contemporary
http://xyzcollective.org/archives/795

会期:2012年3月17日(土) – 4月1日(日) 12:00 – 20:00 /月曜休廊
会場:XYZ collective (SNOW Contemporary)
住所:東京都世田谷区弦巻2-30-20 1F
HP:http://xyzcollective.org/access
本人によるパフォーマンスを毎日上演します。