アイデアを練るときにブロックメモをつかって考える人を見ると、まるで彫刻のようだと思う。

点のアイデアをメモに書く、メモをはがしてバラバラにして整理してクリップで挟んだりボードに張って整理して、練ったものをもう一度クリップでひとまとめにする。するとアイデアのアウトラインがぼんやりと見えてくるというもの。こういう考え方のプロセスを見ると、つい情報がかかれたメモのほうに注目してしまうけれども、ひたすらメモをかいていって減っていくブロックメモの束のほうに注目していると、思考の量を表現する彫刻としての、すり減ったブロックメモが立ち上がってくる。すり減った靴のすりへっている部分こそがその靴が歩いた距離を表現しているというような考え方。LとOとVとEだけが使われているレタリングシートには、「積み上げる」のではなく「欠けさせる」ことによってそこに物語を折り畳ませることができる、みたいな考え方。彫刻家は大きな木片や石の固まりから本来あるべき姿を掘り起こす作業だと誰かが言っていたけど、むしろ思考が結晶化されているのはアイデアを書き出したメモそのものではなく、アイデアを書き出したことによってすり減って形が変わったブロックメモのほうかもしれない。



Paper Sculpture by Li Hongbo