ものを作ったりするようなことを続けていると、
世に出ている作品と接した時、
自分のものさしとはいえ「これはいい」「これはよくない」ということが
見えるようになってくる。

そうなると出くわすのが
「え、これ全然よくないのに、なんでこんなにウケてるの!?」
とか
「こっちのが断然いいのに、なぜ無視されてるの?」
という状況だ。

いろんな作品とかをたくさん見てきているキュレーターやライターさんなんかでも
「あれ?わかってない?」
と感じることもあったりして、なかなか根深い問題です。

アートとかそういうジャンルに関しては
確かに明確な基準がないし、ゲームのようにハッキリと結果が出るわけでもないので
判断はそれぞれだし、むしろその判断基準自体の新しい切り口を見つけるみたいな
部分が重要だったりなので、簡単な問題じゃないけれど、

作り手の人の中には、そういうもどかしい感じを持っている人は
少なからずいると思います。

そしていつまで経っても状況は変わらないので、イラつくことも多いんですよね。


ところで、
僕はアルコール飲料だと、ビールが一番好きで、二番目はワインなんですよね。

ビールも相当深い世界があるけど、ワインはその最たるもので、
テレビ等でも良し悪しがクイズ的に取り上げられるくらい、
マニアック界のド・メジャー選手です。

僕は自分の好きなタイプのワインがあるし、
だいたいどれを飲んでも「これは好き」とか「これは好きじゃない」と
即答できます。
美味しいワインをたくさん飲んだら嬉しいし、満足です。
ただ、それがどこ地方のワインとか、なんて銘柄とか、そういうのは全然知らないんですね。

だからワインのマニアックな世界の人から見たら
「あんなしょーもないワインより、絶対こっちのほうがウマイよ」
とか
「なんでもっとちゃんと調べて、ここワインまでたどり着かないの?」
とか、言われちゃうんだと思う。

でも僕自身は、たまにそこそこウマいワインが飲めればそれで満足だし、
究極のワインを求めているわけでもないんですよね。

そこで前半の話とつながるんですが、

作っている人間ほど、
観ている人間は、本質的な価値を求めてないんじゃないかと思うわけです。

作ってる側からしたら「そこそこ良い作品と時々出会えれば満足」みたいな態度はぬるいなーと思うけど、自分のワインに対する態度から考えたら、そんなもんなんじゃないのか。

僕だって聞かれたら
「ワイン?好きですね」
と言えるけど、その道の人からしたらミーハーなパンピーレベル。

でも、それ以上を一般の観客に期待するのは酷だよね。
そう思えてきました。

だから、ずっとこの溝は埋まらないんだと思います。
ムカつくのはデフォだと思って、そのエネルギーを創作につぎ込むしかないんです。

しかし、ワインを作っている人間は、やっぱりその世界を探求するべきだし、
素人にはわからないようなマニアックな世界は文化の深みとしては絶対に必要だと思います。
やっぱり、そういう世界には本当の面白さがあるし、そこに入っていくことで出会える価値があるということが大切なんだと思う。

そして、その業界に携わる人は、
ちゃんとそういう世界を知った上で、素人が入りやすいものを提示しつつも、
人口の数パーはいるかもしれない、マニアックな素養を持った人をもっと深い世界にいざなうような努力はしないとダメだと思いますねー

素人と同じ目線で口当たりのいいものを追ってるだけの業界人は滅びろと思いますね。