2012 メディア芸術プラザ 閉鎖


先日、文化庁の運営する「MAP」※1 が終了するという話がありました。

正式には「メディア芸術プラザ」というウェブサイトで、
メディア芸術祭のアーカイブはもとより、
ウェブ、アニメーション、写真、映像、
ジャンルを問わずコンテンツの揃ったサイトで
良質なインタビュー記事もあります。

閉鎖にあたっての文化庁のプレスリリースには
以下のようにありました。

“サイトは閉鎖いたしますが、過去の文化庁メディア芸術祭に関する情報(受賞作品、推薦作品、地方展、海外展など)につきましては 、文化庁ホームページへの移行を予定しております。引き続きご利用、ご協力をお願い申し上げます”


となると、気になるのは、
“文化庁メディア芸術祭に関する情報” 以外のコンテンツの行方です。
間違っても消してしまうことはないと思いますが、
どこかのサーバに保存されていくであろうそれらのデータに、
僕たちがアクセスできる状態が続くかは分りません。
きっと中の方たちも今後について検討していく作業は
大変なものなのだと思います。
こういった状況でのコンテンツの保存や継続の方法として、
なんか、ないのかなぁ。とモヤモヤしています。


そんな感じなので、SiteSuckerというアプリをつかって、
ひとまずサイトまるごとローカルに保存しました。


2009 ジオシティーズ 閉鎖

今から、さかのぼること3年。

2009年のネットシーンに一つの事件が起きました。
それは日本でもお馴染みの「ジオシティーズ」のyahoo.com版の閉鎖※2というものです。
言いすぎかもしれないですが、
この事件が以前ブログ ※3 で取りあげた書籍 Digital Folklore の著者である
オリア・リアリナやドラガン・エスペンシードをはじめとする、
インターネット系の作家たちが、デフォルト的な視点を
作品に持ち込みはじめるきっかけになっているのではと僕は感じています。

ちなみに、ジオシティーズとはご存知の方も多いとは思いますが、
誰でも借りることのできる無料のウェブレンタルホストで、
そこでは先に述べた、.gifや.midiなど、
さまざまな素人の素人による素人のためのデータが生産され、
公開されていました。

その母体が丸ごと閉鎖されるにあたり、
彼らはジオシティーズ全体の保存運動を始めました。
データベース化、ミラーサイト、その他さまざまな方法で
保存する試みが発生し、今も続いていますが、
その成果は Archive Team ※4 という
ネット上のコンテンツの保存をおこなうコミュニティにまとめられています。


その中の一つとして、興味深かったのは
ジオシティーズに残こされ、消滅する運命にあるデータ群を
かたっぱしからダウンロードし、zipに固めて保存、
それらをp2p ( torrent )上で、世界中のユーザと共有し、
クラウド的に保管していこうとしたことです。 ※5

“Webサイトやホスティングサービスは、一時的な流行で終わってよいものではない。それは、都市や森が一時的な流行ではないのと同じである。それらは、数え切れないほど長時間の、執筆や編集、思考、そして創造を表している。それらはその時代を表現し、今ではずっと年老いている人たちや、すでに逝ってしまった方々の思想と夢を表している。歴史が、そこにある。そこには、本物の、嘘偽りのない、真の歴史がある” – Archive Team(TechCrunchより)

しかも、こんな熱い思いで、、、僕はもう泣けてきます。

あたりまえのことですが、
一般的なウェブサイトではサーバにデータが保存され、
各ブラウザがクライアントとして、そのデータを読み込んで、
表示する形式が取られます。

しかしアーカイバーたちは、
ジオシティーズの大量の住人たちが作った膨大で
陳腐な作品たちをp2pで共有し不特定多数の力で
保存・共有しようとしたわけです。


そして、 Archive Teamの保存したデータを
ビジュアライズする作品なども生まれています。かっこいい。

東京・駒場にある日本民藝館に限らず、
民藝品をあつかう美術館・博物館はいろいろなところにあります。
それは民藝品の種類が土地によって違ってさまざまだからかもしれません。
博物館ではないけど、民藝品を取りあつかうお土産もの屋さんも
ギャラリー(保存場所)の一つのとしても機能しているように感じます。

先に触れたP2Pのようなシェア方法は、
イチ組織や個人が情報を提供するサーバ〜クライアントのような仕組みよりも、
もうすこし柔軟なものなのかもしれないですね。

もちろんダウンロードした MAP のデータを
無断でシードしてしまってはまずいんだろうなぁと思ってます。
ただ、こういった状況でのコンテンツの保存や継続の方法として、
各地で展示・販売されている民藝品のように、
置き場をたくさん設けでシェアする仕組みが
何かヒントにならないかと考えてしまいました。

P2Pはインターネットの仕組みのひとつとして、
魅力的だし、新しいネットギャラリー ( 閲覧と保存 ) の形のアイデアを、
オリア、ドラガンそれから Archive Team が教えてくれているように感じています。

実はノリでやってるだけなのかもしれないけど。


作詞/作曲 ドラガン・エスペンシード 「P2P」



以下 参考です。


※1 メディア芸術プラザ
※2 米 geocities閉鎖
※3 インターネット時代の民藝品1 — オリアリアリナについての記事
※4 Archive Team
※5 TechCrunch Geocitiesの全Webサイトを収めた900ギガバイトのトレントができる


MAPとジオシティーズは
まったく別のタイプのウェブサイトですが、
有益な情報源が閉鎖されるという点で、
今回は繋がるところがあるのかな、と。

全体的に状況を追いきれてないので、
間違いなどあるかもしれません。
お気付きの点などありましたら
@hgw までおねがいします。